トルコリラ円見通し 2021年12月高値以降の最安値を更新(23/6/5)

トルコリラ円の6月2日は概ね6.70円から6.56円の取引レンジ、3日早朝の終値は6.68円で前日終値の6.67円からは0.01円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 2021年12月高値以降の最安値を更新(23/6/5)

2021年12月高値以降の最安値を更新

〇トルコ円、5/31に6.53へ下落し2021/12/23高値以降の最安値更新、6/5早朝は6.56
〇対ドル、エルドアン大統領再選で連日にわたる史上最安値更新を続け、週明けは1ドル21リラ台に到達
〇新財務相にシムシェク氏、金融市場からは正当派として高く評価され金融政策が正常化へ向かう期待も
〇ゴールドマンサックス、12か月後リラ安水準を従来予想1ドル22リラから1ドル28リラへ下方修正
〇6.67から6.70にかけては戻り売りにつかまりやすいが、6.70超えからは6.72前後への上昇を想定
〇6.55割れは6.50前後への下落想定、6.50以下は反発注意

【概況】

トルコリラ円の6月2日は概ね6.70円から6.56円の取引レンジ、3日早朝の終値は6.68円で前日終値の6.67円からは0.01円の円安リラ高だった。
対ドルでトルコリラの史上最安値更新が連日のように続く中、トルコリラ円は5月31日に6.53円へ下落して1月16日と3月24日に付けた6.74円によるダブル底ラインを割り込み2021年12月23日高値以降の最安値更新に入ったが、その後の反発も続かずに6月1日午前と2日午前に6.56円を付けて安値更新への余裕が乏しくなっている。6月2日夜の米雇用統計発表後にドル円が139円を挟んだ水準から140円到達へ戻したために3日未明には6.70円まで持ち直したが、6月5日早朝には再び6.56円へ下げている。

ドル円は5月29日と30日に141円へ迫ったところから下落に転じ、FRB高官らの6月利上げ見送り支持発言等で6月1日深夜に138.45円まで下げたが、米雇用統計で非農業部門就業者数が予想を大幅に上回ったことで米長期債利回りが上昇して為替市場はドル全面高となったために3日未明には140円に到達しており、141円手前からの調整安を抜け出して上昇再開を試している。
トルコリラ円は週間では5月23日終値から0.29円の円高リラ安であり、5月の月間は4月末終値7.01円から0.33円の円高リラ安となった。
6月3日にエルドアン大統領は新内閣の財務相に財務相と副首相の経験があり市場の強化が高かったシムシェク氏を起用したため、従来の金融政策を転換するのではないかとの見方も出ているが、週明けの6月5日午前序盤にはドル高リラ安が一段と進行しており先安感が払拭しきれない状況にとどまっている。

【対ドルでのリラ安続き、1ドル21リラ台へ】

ドル/トルコリラの6月2日は概ね20.96リラから20.81リラの取引レンジ、3日早朝の終値は20.96リラで前日終値の20.80リラからは0.16リラのドル高リラ安だった。
5月28日の大統領選挙決選投票においてエルドアン大統領が再選を果たしたことからリラは対ドルで暴落的な下落に見舞われて連日にわたる史上最安値更新を続けてきた。5月31日には20.83リラへ最安値を更新し、月間では4月末の19.45リラから1.38リラのドル高リラ安となり、6月1日には20.85リラへ最安値を更新、2日も20.96リラを付けて1ドル21リラに迫った。
終値ベースでも5月31日と6月1日に20.80リラを付けて最安値としていたが6月2日は20.96リラの安値引けで最安値更新となった。

エルドアン大統領は6月3日の就任式で新内閣を発表して下馬評に挙がっていた財務相及び副首相経験者で在任中の経済政策で市場の高評価を得ていたシムシェク氏が財務相に起用されたことでエルドアン大統領による「高インフレ進行中に利下げ強行」等の非伝統的手法が正常化へ向かうのではないかとの期待も出ているところだが、週明けのドル/トルコリラは1ドル21.04リラを付けて1ドル21リラ台に到達しているが、ベンダーによっては1ドル21.39リラの安値提示も見られるなど、リラ安への歯止めとなっていないようだ。

【トルコ5月貿易収支速報、126.6億ドルの赤字に】

6月2日にトルコ貿易省が発表した通関ベースの5月貿易統計速報では、貿易収支が126.6億ドルの赤字となり4月の88.5億ドルから大幅に悪化して速報ベースで過去最悪だった2月の貿易赤字144億ドルに迫った。輸出は217億ドルで4月の193.2億ドルから拡大したが、輸入が343億ドルとなり4月の281.6億ドルから大幅増で速報ベースで過去最大となったことで赤字も再び拡大したという状況だ。
世界的なインフレの高止まりによる輸入物資価格上昇と5月に入ってからリラ安が一段と加速したことにより輸入額が急増している。貿易収支の赤字拡大による経常収支の悪化、財政赤字の拡大、中央政府債務残高の過去最高更新、純外貨準備高のマイナス勘定への転落等、トルコリラを取り巻くファンダメンタルズの悪化が続いている。

【ゴールドマンはドル/トルコリラ見通しを下方修正】

トルコのエルドアン大統領は6月3日に就任式を行い新内閣を発表したが、下馬評に挙がっていたシムシェク元財務相を新財務相に任命した。シムシェク氏は56歳、2009年から2018年にかけて副首相と財務相を務め、金融市場からは正当派として高く評価されていた。今回の起用がエルドアン政権が繰り返してきた非伝統的な金融政策思想から転換するきっかけになるのではないかとの期待ももたれるところだ。

しかし、金融大手ゴールドマンサックスは6月4日、エルドアン大統領の組閣を踏まえて向う12か月以内のリラ安水準について従来の1ドル22リラから1ドル28リラへ下方修正した。シムシェク氏の採用については従来より正統的な経済政策に戻ることを示唆するものとし、利上げ等によってはリラの下げ幅が想定よりも小さくなる可能性があるとしたものの、「リラが大幅に下落するかどうかではなく、それがいつ起こるかが問題だ」として急落への懸念を示した。同社は従来予想の3か月後に1ドル19.00リラ、6カ月後に21リラ、12カ月後に22リラとしていたところから今回の修正では3か月後に23リラ、6か月後に25リラ、12か月後に28リラへ下落する可能性があるとした。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月29日朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5月31日の日中から6月2日午後にかけての間への下落を想定してきた。
5月31日午前、6月1日午前、6月2日午前と安値試しを続けているものの戻り高値が徐々に切り下がっているため、6月2日午前安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避のうちは6月5日の日中から6日にかけての間への上昇余地ありとするが、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして6月7日午前から9日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月3日未明への反発で遅行スパンが一時的に好転したもののその後の失速で実線と交錯しており、先行スパン突破には至らなかった。先行スパンを上抜き返す場合は反発継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返せないうちは下向きとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は6月3日未明への上昇で60ポイントまで戻したものの40ポイント前後へ再び低下している。50ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとするが、50ポイント以下での推移中は下向きとして20ポイント前後への低下余地があるとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.55円を下値支持線、6.70円を上値抵抗線とする。
(2)6.67円から6.70円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。6.70円超えからは6.72円前後への上昇を想定するが、その後の反落警戒とする。
(3)6.55円割れからは6.50円前後への下落を想定する。6.50円以下は反発注意とするが、6.60円以下での推移が続くうちは6月6日以降も6.40円台中盤(6.47円から6.43円)への下落余地があるとみる。

【当面の主な予定】

6月5日
 16:00 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 2.39%、予想 -0.2%)
 16:00 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 43.68%、予想 39.2%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 3.2%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 45.5%)
 16:00 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 0.81%)
 16:00 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 52.11%)
6月7日
 23:30 5月 財務省現金残 (4月 -1590.6億リラ)
6月8日
 20:30 週次 外貨準備高 6/2時点 グロス (5/26時点 565.2億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/2時点 ネット (5/26時点 -40.05億ドル)
6月09日
 16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 5.5%)
 16:00 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -0.1%)


注:ポイント要約は編集部

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