トルコリラ円見通し リラ安収まらずドル円も続落、純外貨準備高は大幅なマイナスに(23/6/2)

トルコリラ円の6月1日は概ね6.74円から6.56円の取引レンジ、2日早朝の終値は6.67円で前日終値の6.70円からは0.03円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し リラ安収まらずドル円も続落、純外貨準備高は大幅なマイナスに(23/6/2)

トルコリラ円見通し リラ安収まらずドル円も続落、純外貨準備高は大幅なマイナスに

〇トルコリラ円、6/1朝に6.56まで下げた後、夕刻にかけて6.75手前へ戻す
〇6/2早朝には6.60台前半へ失速し、午前序盤には再び6.56を付け安値更新へ余裕が乏しい
〇対ドル、6/1は概ね20.85から20.51の取引レンジ、20.85をつけ取引時間中の最安値更新
〇6/2午前序盤には、20.92へさらに取引時間中の最安値更新を続ける
〇トルコ中銀の純外貨準備高、マイナス勘定が一段と悪化、2002年以降では過去最低を記録
〇6.77以下での推移中は一段安余地ありとし、6.53割れからは6.40前後への下落を想定する
〇6.73から6.77手前は、戻り売りされやすいとみる

【概況】

トルコリラ円の6月1日は概ね6.74円から6.56円の取引レンジ、2日早朝の終値は6.67円で前日終値の6.70円からは0.03円の円高リラ安だった。
トルコ大統領選挙でのエルドアン大統領再選による金融政策の先行き不安を背景としてドル/トルコリラでは連日のように史上最安値更新が続き暴落商状ともいえる下落となっているが、ドル円も141円手前からの下落が続いており、トルコリラ円はリラ安と円高の両面から圧迫されている。
ドル円は5月29日午前高値140.91円と30日午後高値140.92円で共に141円には届かずに下落に転じた。米FRB高官らによる6月利上げ見送り示唆発言が相次いでいることで先週までの6月ないし7月の追加利上げの可能性が後退したためにドル高一巡感が強まり、6月1日はユーロやポンドの反騰が目立ち、ドル円も午前に138.96円へ下げてから夜に139.94円まで戻したものの深夜に138.45円へ一段安している。

トルコリラ円は5月29日午前に7.06円へ上昇したところから下落に転じ、対ドルでのリラ急落により31日午前序盤は6.53円まで大幅下落し、6.80円台へいったん戻したところを売られ、6月1日朝には6.56円まで下げた。夕刻にかけて6.75円手前へ戻してから2日早朝には6.60円台前半へ失速し、2日午前序盤には再び6.56円を付けて安値更新へ余裕が乏しくなっている。

【対ドルでのリラ安続く】

ドル/トルコリラの6月1日は概ね20.85リラから20.51リラの取引レンジ、2日早朝の終値は20.80リラで前日終値と変わらずだった。
5月18日のトルコ大統領選挙1回目投票でエルドアン氏優勢となり、3位だったオアン候補がエルドアン支持を表明したことでエルドアン政権続投の可能性が高まりリラ売りが勢い付いてきたが、選挙期間中に再選後の利下げを表明したこともあり5月28日の決選投票でエルドアン氏が勝利するとさらにリラ売りの勢いが増した。
トルコ中銀の週次外貨準備高は先週に純外貨準備高がマイナスに転落したが6月1日に発表された5月26日時点の純外貨準備高はさらにマイナス勘定を拡大したことでリラ安に歯止めがかからなくなっている印象だ。

手元のデータでは取引時間中の史上最安値を5月30日に20.47リラへ更新し、31日に20.83リラ、1日も20.85リラへと最安値更新を続けている。終値ベースでは31日終値20.80リラへと連日の史上最安値更新が続いてきたが、1日は5月31日と変わらずで最安値水準となった。
6月2日午前序盤には20.92リラへさらに取引時間中の最安値更新を続けているが、ベンダーによっては21.16リラ台の安値提示も見られる。

【トルコ中銀の純外貨準備高は大幅なマイナス勘定に】

6月1日に発表されたトルコ中銀による週次の外貨準備高は、5月26日時点の総準備高(グロス)で565.2億ドルとなり5月19日時点の588.3億ドルから大幅に減少した。グロスとしては2022年12月からの減少継続が続き、2021年11月以降の最低水準となった。
中銀の短期負債を除く純外貨準備高(ネット)では5月19日時点でマイナス1.5億ドルとなり2002年21年ぶりのマイナス勘定となったが、5月26日時点ではマイナス40.05億ドルとなり、純外貨準備高の公式データのある2002年以降では過去最低を記録した。

リラ暴落が収まらない中で、トルコ中銀は外貨準備高を取り崩して非公式市場介入を繰り返してきたがそれも枯渇状態となり、現状は借入をしてでも市場介入を繰り返すことでマイナス勘定が一段と悪化したという状況に陥っているのだろうと推察される。
最近のリラ暴落商状と純外貨準備の枯渇を踏まえると、トルコリラはすでに新たな通貨危機的なレベルに状況が悪化しているのではないかと思われるが、通貨危機的な暴落では安値に対する高を括れず、内外投資家によるリラ売りが一巡して暴落商状が鎮まるまで安値試しを続けやすく、エルドアン政権が大胆な金融政策姿勢を転換するなどのきっかけを与えない限りは利上げ催促と財政健全化をリラ売りが催促してゆくことにもなりかねない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月26日昼過ぎ安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、乱高下が続く可能性もあるとして6.97円割れからは弱気サイクル入りとしていたが、6.90円へ急落したために30日午前時点では29日朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5月31日の日中から6月2日午後にかけての間への下落を想定した。
5月31日午前へ大幅続落してからいったん戻したものの1日午前へ失速し、2日午前序盤も安値更新へ余裕が乏しくなっているためまだ一段安余地ありとみる。また6月2日午後を超えて週明けへ続落する可能性もあると注意する。強気転換は6.77円超えからとし、その際は2日の日中から5日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では5月30日午前からの大幅下落により遅行スパンが悪化して先行スパンからも大きく転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転しても次に悪化するところからは下げ再開とみる。先行スパンを上抜くところからはいったん戻しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開とする。

60分足の相対力指数は1日午後に40ポイント台へ戻してから20ポイント台へ失速しているのでまだ下落余地ありとみる。40ポイント以下での推移中は10ポイント台前半への下落を警戒し、40ポイント超えからは反騰入りの可能性ありとみて50ポイント前後への上昇を想定するが、50ポイント前後からは反落しやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.53円を下値支持線、6.77円を上値抵抗線とする。
(2)6.77円以下での推移中は一段安余地ありとし、6.53円割れからは6.40円前後への下落を想定する。6.40円以下は反騰注意とするが、6.75円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.73円から6.77円手前は戻り売りされやすいとみる。6.77円超えからは6.80円試しとするが、その後の反落を警戒する。

【当面の主な予定】

6月5日
 16:00 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 2.39%、予想 -0.2%)
 16:00 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 43.68%、予想 39.2%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 3.2%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 45.5%)
 16:00 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 0.81%)
 16:00 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 52.11%)
6月7日
 23:30 5月 財務省現金残 (4月 -1590.6億リラ)
6月8日
 20:30 週次 外貨準備高 6/2時点 グロス (5/26時点 565.2億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/2時点 ネット (5/26時点 -40.05億ドル)



注:ポイント要約は編集部

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