ドル円見通し 米6月利上げ見送りの可能性高まり139円を割り込む(23/6/2)

深夜には138.45円へ下落、2日早朝にかけても138円台後半での横ばい推移に留まっている。

ドル円見通し 米6月利上げ見送りの可能性高まり139円を割り込む(23/6/2)

ドル円見通し 米6月利上げ見送りの可能性高まり139円を割り込む

〇ドル円、デフォルト回避感強まり6/1午前安値138.96から夕刻高値139.94へ戻すも、140円には届かず
〇FRB高官の発言や経済指標の不冴え等により深夜138.45へ下落、6/2早朝にかけて138円台後半で横ばい
〇昨日発表の米経済指標は強弱まちまち、ADP民間雇用は予想を大幅に上回る、ISM製造業景況指数は悪化
〇FRB高官、6月FOMCでの政策金利据え置き見通しを示し、ドル安感が強まるきっかけに
〇米長期債利回りは総じて続落、上昇一巡の印象、米株価は反騰
〇139.30以下での推移中は一段安余地ありとし、138.45割れからは137円台後半への下落を想定する
〇139.30超えからは強気転換注意、139.70から139.94手前の水準では戻り売りにつかまりやすいとみる

【概況】

ドル円は5月29日午前高値140.91円と30日午後高値140.92円で共に141円に届かずダブルトップ型を形成し、5月11日夜の米PPI発表後に付けた安値133.74円からの上昇一巡感から下落に転じている。
6月1日は米債務上限引き上げ法案が下院を通過して米国のデフォルト回避感が強まったことで午前安値138.96円から夕刻高値139.94円へ戻したものの140円には届かず、21時過ぎの米ADP民間雇用者数が予想以降の大幅増加となったことで一時的に戻したものの早々に売られ、フィラデルフィア連銀総裁が前日に続いて6月利上げ見送りを主張したことやISM製造業景況指数が予想を若干下回って前月から悪化したこと等により深夜には138.45円へ下落、2日早朝にかけても138円台後半での横ばい推移に留まっている。
ユーロドルやポンド等の反騰も目立っており、6月FOMCに対して先週までの利上げ予想から見送りへとFRB高官らの発言姿勢が変わったことでドル高に一巡感が出ている印象だ。

【ADP民間雇用は予想以上の増加、ISM製造業景況指数は悪化】

6月1日の米経済指標は強弱まちまちだった。米民間雇用サービス会社ADPによる5月全米雇用報告における非農業部門民間就業者数は前月比27万8000人増となり、4月の29万1000人増(速報の29万6000人増からは若干の下方修正)を下回ったものの市場予想の17万人増を大幅に上回った。
米労働省による新規失業保険申請は5月27日までの週間で前週比2000件増の23万2000件となり、2週連続で悪化した。失業保険受給者総数は5月20日までの週間で179万5000人となり、前週から6000人増加した。
米サプライ管理協会(ISM)による5月米製造業景況指数は46.9となり、4月の47.1から悪化して市場予想の47.0を下回り、好不況の分岐点である50を7か月連続で割り込んだ。内訳では特に価格指数が4月の53.2から44.2へと大幅に低下したことがインフレ圧力の後退と受け止められて材料視された。

S&Pグローバルによる5月の米製造業PMI確報値は48.4となり、速報値の48.5から小幅下方修正されて4月確報値の50.2を割り込んだ。
米労働省による第1四半期の非農業部門労働生産性改定値は年率換算で前期比2.1%低下となり、速報値の2.7%低下から上方修正されて市場予想の2.5%低下を上回った。
ADP統計時には一時的なドル買いが見られたもののその他はFRBによる6月利上げ見送りを阻害しないものとしてドル安基調が継続した。

【6月FOMCでの利上げ見送り公算高まる】

フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は6月1日の講演で「これまでの利上げ効果が期待できる兆候がある」とし、6月FOMCでの政策金利据え置き見通しを示した。質疑応答では6月2日の米雇用統計次第では気が変わる可能性があるとしつつも「利上げを見送るべき」と述べた。信用不安問題については「与信の厳格化があるものの信用収縮とは見ていない」としたが「経済に影響はある」と懸念し、インフレ見通しについては「今年は3.5%付近に低下して2024年は2.5%、2025年には2.0%へ低下して横ばいに推移」と順調に低下してゆくと予想した。

5月31日にジェファーソンFRB理事が「6月のFOMCで利上げを見送り、どの程度の追加利上げが必要かを決定する前にさらに多くのデータを見極める必要がある」として利上げ見送りを支持する発言を行い、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁も同様の発言を行ったことで6月利上げ見送りの可能性が一挙に高まったが、ハーカー総裁が6月1日も同様の発言を繰り返したことでドル安感が強まったようだ。ジェファーソン理事もハーカー総裁も共に利上げ見送り後に追加利上げされる可能性を否定しなかったものの、市場は利上げサイクルの終了が近いとの受け止め方を優先している。

【米10年債利回りは続落、NYダウは上昇】

6月1日の米長期債利回りは総じて続落した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%低下の3.60%となり、5月30日の0.10%低下、31日の0.04%低下からの続落となった。債務上限問題が法案の下院通過によりデフォルト回避へ進展したこととFRB高官らの利上げ見送り発言が影響しており、5月に入ってからの上昇が一巡した印象だ。
30年債利回りは前日比0.04%低下の3.82%となり、30日の0.06%低下、31日の0.03%低下から続落した。利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.07%低下の4.34%となり、5月30日の0.12%低下、31日の0.04%低下からの続落となった。
一方でNYダウは前日比153.30ドル高と上昇し、30日から31日へ続落していたところから切り返し、ナスダック総合指数も31日の82.14ポイント安を解消する165.69ポイント高の上昇となった。いずれも米デフォルトリスクの後退と利上げ停止への楽観が押し上げ要因となった。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月29日午前と30日午後の上昇で141円手前から失速してダブルトップ型を形成して下落に転じているが、6月1日午前に139円を割り込んで140円手前へ戻してから一段安しているため、1日夜高値を起点として新たな下落期に入っている印象だ。1日午前安値を基準とすれば目先の安値形成期は8日午前にかけて想定されるので、2日夜の米雇用統計から急騰しない限りは週明けへ安値試しを続けやすいとみる。強気転換は1日夜反発時の高値139.94円超えからとする。

60分足の一目均衡表では5月30日午後からの下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、6月1日夜の反発時に遅行スパンが一時的に好転したもののその後の一段安で再び悪化し、先行スパンからの転落も続いているので、遅行スパン悪化中は安値試し優先とみる。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は6月1日深夜の下落時に30ポイントまで低下してからも30ポイント台に留まっているのでまだ下落余地ありとし、一段安へ進む場合は20ポイント以下を試す可能性もあると注意する。強気転換は次に50ポイントを超えるところからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月1日深夜安値138.45円を下値支持線、139.30円を上値抵抗線とする。
(2)139.30円以下での推移中は一段安余地ありとし、138.45円割れからは137円台後半(137.950円から137.50円)への下落を想定する。137.50円以下は反騰注意とするが、139円以下での推移が続く場合や直前安値から1円を超える反騰が見られないうちは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)139.30円超えからは強気転換注意とするが、139.70円から6月1日夜高値139.94円手前にかけての水準では戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

6/2(金)
休場 シンガポール、インドネシア
21:30 (米) 5月 非農業部門就業者数 前月比 (4月 25.3万人、予想 19.0万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.4%、予想 3.5%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 4.4%、予想 4.4%)

6/4(日)
OPECプラス閣僚級会合



注:ポイント要約は編集部

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