トルコリラ円見通し 対ドルでリラが大幅下落、円高も重なり急落商状に(23/5/31)

トルコリラ円の5月30日は概ね6.99円から6.78円の取引レンジ、31日早朝の終値は6.83円で前日終値の6.98円から0.15円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し 対ドルでリラが大幅下落、円高も重なり急落商状に(23/5/31)

対ドルでリラが大幅下落、円高も重なり急落商状に

〇トルコ円、5/30は安値で6.80を割り込み5/31早朝に一時6.53へ急落
〇対ドル、5/30は概ね20.47から19.99の取引レンジ、5/31午前は20.72へとさらに最安値を更新
〇トルコの貿易赤字拡大、経常収支の悪化が懸念される
〇財政収支の悪化、中央政府債務の過去最大への膨張等、トルコリラのファンダメンタルズ悪化傾向が顕著
〇エルドアン政治継続の不安も重なってリラ売りに歯止めがかからず、通貨危機を招く可能性も心配される
〇6.50割れからは6.40前後への下落を想定
〇6.82超えからは6.90試しとするが、その後の反落を警戒

【概況】

トルコリラ円の5月30日は概ね6.99円から6.78円の取引レンジ、31日早朝の終値は6.83円で前日終値の6.98円から0.15円の円高リラ安となった。
5月28日のトルコ大統領選挙決選投票でエルドアン現大統領が再選したことで強権政治と高インフレ時に利下げを強行する非伝統的な金融政策が続くとの悲観的な見方が優勢となりリラは対ドル等で大幅下落しているが、5月30日はドル円が141円手前から失速したことも重なり、トルコリラ円はリラ安と円高の両面で売られて安値で6.80円を割り込んだ。31日早朝にはドル高リラ安が一段と進行したことで一時6.53円へ急落している。

ドル円は米連邦債務上限問題でバイデン大統領と共和党マッカーシー下院議長が基本合意に達したとの報道で5月29日午前に140.91円へ上昇、いったん140円を割り込んでから30日午後には140.92円を付けて年初来高値を更新したが、日銀・金融庁・財務省の三者会談開催報道をきっかけとして手仕舞い売り優勢となり30日夜には139.56円へ下落し、その後も139円台後半で横ばい推移程度となっている。米債務上限問題での共和党内反対派の動きもありデフォルト回避期日の6月5日までの可決されるのか懸念を抱えた状況にある。
トルコリラ円は大統領選挙直前の5月26日に繰り返し6.90円以下の安値を提示する乱調な展開を入れてからドル円の上昇を見て29日午前に7.06円へ上昇したものの、30日午後にドル円が年初来高値を更新した局面ではほとんど上昇できず、ドル高リラ安を見て下落を続けた。これまでのリラ安を気にしながらもドル円の騰落に合わせてきた流れが続かず、リラの大幅下落に引きずられる展開に陥っている印象だ。 

【対ドルでリラは大幅続落、史上最安値更新続く】

ドル/トルコリラの5月30日は概ね20.47リラから19.99リラの取引レンジ、31日早朝の終値は20.47リラで前日終値の20.09リラから0.38リラのドル高リラ安だった。
トルコ大統領選挙の5月18日投票でエルドアン氏が優勢となり、3位だったオアン候補がエルドアン支持を表明したことで28日の決選投票でのエルドアン再選見込みが強まったことでリラ売りが一段と勢い付き、5月29日には終値ベースで1ドル20リラ台に乗せたが、30日はさらに暴落的な商状に陥り取引時間中の史上最安値を20.47リラへ更新し、終値ベースでも20.47リラへと最安値を更新した。
5月31日午前は20.72リラへとさらに最安値を更新しており、1ドル21リラ台も迫ってきたが、暴落レベルは2021年末にかけて史上最安値を更新した時に近い下落角度に入っているようだ。 

【トルコの貿易赤字拡大】

5月30日にトルコ統計局が発表した4月の貿易収支は87.4億ドルの赤字で赤字額は3月の83.5億ドルから拡大した。今年1月に142.6億ドルの過去最大赤字を記録した後も80億ドル以上の赤字を続けており、貿易赤字の拡大による経常収支の悪化が懸念される。
4月の輸出は193.31億ドルで3月の235.9億ドルから減少して前年同月比は17.1%減となり、輸入は280.69億ドルで3月の319.37億ドルから減少して前年同月比は4.8%減となった。世界規模の景気鈍化傾向により輸出が頭打ちとなる中、世界規模のインフレ高止まりとリラ安により輸入規模が拡大してきたが、4月の輸入は2021年1月以来の前年比マイナスであり、リラ安が過度に進行する中でトルコ国内の経済成長が鈍化していることで購買力が落ちている可能性を示唆しているのではないかと思われる。

5月31日はトルコ1-3月期GDP成長率の発表があり、前年同期比に対する市場の事前予想は3.9%で10-12月期の3.5%からやや伸びるとみられているが、2022年1-3月期の7.6%、4-6月期の7.8%から7-9月期に4.0%へ鈍化してからは低成長の継続感が強まっており、2月6日に発生したトルコ・シリア大地震の影響も長引くことが懸念されている。
財政収支の悪化、中央政府債務の過去最大への膨張、純外貨準備高がマイナス勘定に転落したことなど、トルコリラのファンダメンタルズ悪化傾向が顕著となり、エルドアン政治の継続による不安も重なっていることでリラ売りに歯止めがかからず、通貨危機を招く可能性も心配されるところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月26日午前からの乱高下を通過して29日朝へ上昇したために29日午前時点では26日昼過ぎ安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、乱高下が続く可能性もあるとして6.97円割れからは弱気サイクル入りとしていたが、6.90円へ急落したために30日午前時点では29日朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5月31日の日中から6月2日午後にかけての間への下落を想定した。
5月31日午前に大幅続落しているためまだ波乱注意とみる。変動幅も大きいため強気転換には6.90円台回復が必要と思われる。 

60分足の一目均衡表では5月30日午前からの大幅下落により遅行スパンが悪化して先行スパンからも大きく転落している。変動幅が大きく一段安後の反発も大きいものの、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、遅行スパンが一時的に好転しても次に悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は20ポイント近辺まで急落してからも40ポイントに届かない程度のため、まだ暴落商状が落ち着かない可能性を警戒する。強気転換には50ポイントに到達する反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.50円を下値支持線、6.82円を上値抵抗線とする。
(2)6.82円以下での推移中は一段安余地ありとし、6.50円割れからは6.40円前後への下落を想定する。6.40円以下は反騰注意とするが、6.75円以下での推移なら6月1日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.82円手前は戻り売りされやすいとみる。6.82円超えからは6.90円試しとするが、その後の反落を警戒する。 

【当面の主な予定】

5月31日
 16:00 1-3月 GDP 前期比 (10-12月 0.9%)
 16:00 1-3月 GDP 前年同期比 (10-12月 3.5%、予想 3.9%)
6月1日
 16:00 5月 イスタンブール製造業PMI (4月 51.5)
 20:30 週次 外貨準備高 5/26時点 グロス (5/19時点 588.3億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 5/26時点 ネット (5/19時点 -1.513億ドル)
6月5日
 16:00 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 2.39%)
 16:00 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 43.68%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 3.2%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 45.5%)
 16:00 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 0.81%)
 16:00 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 52.11%)



注:ポイント要約は編集部

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