ドル円見通し 141円乗せに抵抗感あり140円割れへ失速、三者会談も警戒呼ぶ(23/5/31)

ドル円は、日銀と金融庁・財務省の三者会談が行われるとの報道をきっかけとして下落に転じて140円を割り込んだ。

ドル円見通し 141円乗せに抵抗感あり140円割れへ失速、三者会談も警戒呼ぶ(23/5/31)

141円乗せに抵抗感あり140円割れへ失速、三者会談も警戒呼ぶ

【概況】

〇ドル円、5/30午後に140.92をつけ年初来高値を更新するも、その後は下落に転じ米国時間に140円割れ
〇日銀と金融庁・財務省の三者会談報道とユーロ等の反発が押し下げ要因に
〇米債務上限問題、6/5までに採決できるのかどうかについて楽観と不安が入り交じる
〇米3月の住宅価格指数、5月消費者景気信頼感指数等、昨晩の米経済指標はまちまち
〇5/31 JOLTS求人件数、6/1 ADP民間雇用とISM製造業景況指数、6/2 米雇用統計と重要指標が続く
〇米10年債利回りは低下、NYダウは反落するもナスダックが大幅高
〇139.30割れからは138円台後半(138.95から138.65)への下落を想定
〇140.50超えからは上昇再開の可能性を優先して141円試しを想定

ドル円は5月30日午後高値で140.92円を付けて5月29日午前高値140.91円をわずかに超えたものの、日銀と金融庁・財務省の三者会談が行われるとの報道をきっかけとして下落に転じて140円を割り込んだ。
5月30日夕刻までは独長期債利回り低下が堅調となったことでユーロ安が進行してユーロドルは1.0673ドルを付けて4月26日高値1.1095ドル以降の安値を更新したが、1.070ドル割れに対する突っ込み警戒感と米長期債利回り低下によりその後は持ち直したため、夕刻以降はドル高一服感となりドル円の下落を助長した。

ドル円は米連邦債務上限問題でバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長が基本合意に達したとの報道を楽観して29日午前に140.91円へ上昇したものの共和党右派の反対表明もあり5月31日の下院採決への不透明感から30日午前には139.96円まで下げた後、140円割れに対する値頃買いとユーロ安ドル高を見て再上昇して年初来高値を更新した。その後は三者会談報道とユーロ等の反発が押し下げ要因になったようだ。
5月31日午前序盤も139円台後半でほぼ横ばい推移だが、141円手前でのダブルトップ形成感もあり目先は安値試しへ進みやすいところと思われる。

【日銀・金融庁・財務省の三者会談】

財務省と金融庁及び日銀は5月30日に国際金融資本市場に関する情報交換会合=3者会合を開いた。
会談終了後に神田財務官は「米国の債務上限問題がデフォルト回避へヤマ場を迎える中で、金融・為替市場などへの影響を十分に注視する必要があるとの認識で一致した」と述べており、米国のデフォルト発生リスクを踏まえて不測の事態に対処する認識の共有を図った模様だが、この時点で三者会合を開いたことは米国のデフォルトリスクが無視できずに混乱が発生する可能性があるとの危機感を持っていることを示したものである可能性と、ドル円が29日午前と30日午前に141円に迫ったことに対する為替水準への牽制を伴うものだった可能性も憶測される。

いずれにしても、リスク回避的な不安心理を市場にもたらしたことで、ドル円としてはひとまず141円乗せへのトライを止めてポジション調整的な下落へ反応したと言えそうだ。
米債務上限問題は31日に下院で採決が図られる見通しだが、下院多数派の共和党マッカーシー氏が下院議長に決定するまでには共和党内の反対派の動きもあって採決が十数回繰り返されたこともあり、デフォルト猶予期限とされる6月5日までに採決できるのかどうかについて楽観と不安が入り交じっている。

【米経済指標はまちまち】

米連邦住宅金融局が発表した3月の住宅価格指数は前月比0.6%上昇で2月の0.7%(速報の0.5%から下方修正)から鈍化したが市場予想の0.2%上昇を上回った。
3月のケースシラー住宅価格指数は前年同月比で1.2%低下となり、2月の0.4%上昇から悪化したが市場予想の1.6%低下を上回った。
米コンファレンスボードによる5月消費者景気信頼感指数は102.3となり、4月の103.7(速報の101.3から上方修正)から低下したが市場予想の99.0を上回り100台を維持した。内訳では現況指数が4月の151.8から148.6へ悪化、期待指数は71.7から71.5へ若干低下した。雇用については「求人が多い」としたものは43.5%で4月の47.5%から低下して求人の減少感が見られた。向こう半年間の景気見通しでは「改善する」が12.9%で4月の14.1%から低下、「悪化する」は20.6%で4月の21.4%から低下した。

リッチモンド連銀のバーキン総裁は30日に、「FRBの政策金利は景気抑制的な領域にある」としが、今後の判断は「指標次第」とし、「インフレ期待は抑制されているもののそれに従う形でインフレは低下していない」「需要減速を通じてインフレを押し下げる必要がある」として追加利上げの可能性に含みを持たせた。
米経済指標及びバーキン総裁発言への市場反応は限定的だったが、31日はJOLTS求人件数、1日にADP民間雇用とISM製造業景況指数、2日に米雇用統計と重要指標が続く。

【米10年債利回りは低下、NYダウは反落するもナスダックが大幅高】

5月30日の米長期債利回りは総じて低下した。指標の10年債利回りは前週末比0.10%低下の3.69%、30年債利回りは0.06%低下の3.89%、利上げに敏感な2年債利回りは0.12%低下の4.45%となった。
5月後半の米FRB高官や地区連銀総裁らによる追加利上げ支持発言が相次いだことで米金利先物市場における6月FOMCでの利上げ確率は従来の据え置き予想優勢だったところから追加利上げありとの見方が優勢となり、6月に据え置かれても7月に利上げされる可能性も高まっている。
米債務上限問題が基本合意に達して採決待ちとなっていることについてはNYダウが悲観を拭えずにいるものの債券市場は債券買い・利回り低下の反応が見られる。
5月30日のNYダウは先週末比50.56ドル安と小幅下落して先週末の328.69ドル高から伸びきれなかった。一方でナスダック総合指数は41.74ポイント高と上昇して高値では昨年8月以来9カ月ぶりの水準を付けている。米半導体大手エヌビディアが時価総額1兆ドルを超えたとの報道で買われていることでナスダック全体がけん引されたようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月29日午前と30日午後の上昇で共に141円手前から失速したことでダブルトップ型を形成して下げている。5月4日早朝の米FOMCと5月10日の米CPI及び11日の米PPIを通過してドル安一巡となり、その後はFRB利上げ継続感で上昇基調を続けてきたが、141円には抵抗感があるところとなり、突破へ向けては今週末の米雇用統計にかけて続く米重要指標をきっかけにドル高が勢い付く必要がありそうだ。
目先はダブルトップ形成からの下落期とみて、6月2日夜にかけての下落を想定する。強気転換は30日高値超えからとし、その際は6月6日にかけての上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では5月30日午後からの下落で遅行スパンが再び悪化し、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とみる。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月30日夜に30ポイント台へ低下してからも40ポイントを挟んだ水準にとどまっているのでまだ一段安余地ありとし、下げ足が速まる場合は20ポイント前後を試す可能性もあるとみる。50ポイント台を回復するとこからは上昇再開の可能性ありとみて60ポイント前後への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.30円を下値支持線、140.50円を上値抵抗線とする。
(2)140円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、139.30円割れからは138円台後半(138.95円から138.65円)への下落を想定する。138.70円以下は反騰注意とするが、140円以下での推移が続く場合や直前安値から1円を超える反騰が見られないうちは6月1日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)140.25円超えを強気転換注意とし、140.50円超えからは上昇再開の可能性を優先して141円試しを想定する。141円手前は再び売られやすいと注意するが、140.50円を超えた後も140円台序盤までで確りするなら6月1日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/31(水)
10:30 (中) 5月 国家統計局製造業PMI (4月 49.2、予想 49.5)
10:30 (豪) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 6.3%、予想 6.4%)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 -3.2%、予想 -0.8%)
14:00 (日) 5月 消費者態度指数・一般世帯 (4月 35.4、予想 36.0)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 5.6%、予想 5.6%)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (4月 0.4%、予想 0.2%)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (4月 7.2%、予想 6.4%)
21:50 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、ボウマンFRB理事、イベント開会挨拶

22:15 (英) マン英中銀委員、講演
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 48.6、予想 47.3)
23:00 (米) 4月 雇用動態調査(JOLTS)求人件数 (3月 959.0万件、予想 940.0万件)
25:20 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、イベント閉会挨拶
25:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

6/1(木)
休場 インドネシア
08:50 (日) 1-3月期 ソフトウェア含む全産業設備投資額 前年同期比 (10-12月 7.7%)
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (10-12月 2.2%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 49.5)
15:00 (独) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -2.4%、予想 1.0%)
15:00 (独) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 -6.5%、予想 -5.8%)
16:55 (独) 5月 製造業PMI改定値 (速報 42.9、予想 42.9)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI改定値 (速報 44.6、予想 44.6)
17:30 (英) 5月 製造業PMI改定値 (速報 46.9、予想 46.9)
18:00 (欧) 5月 HICP(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (4月 7.0%、予想 6.3%)
18:00 (欧) 5月 HICPコア指数速報値 前年同月比 (4月 5.6%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 6.5%、予想 6.5%) 

20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
21:15 (米) 5月 ADP民間非農業部門就業者数 前月比 (4月 29.6万人、予想 16.5万人)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 -2.7%、予想 -2.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件、予想 23.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.4万人、予想 180.0万人)
22:45 (米) 5月 製造業PMI改定値 (4月 48.5、予想 48.5)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 47.1、予想 47.0)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演

注:ポイント要約は編集部

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