トルコリラ円見通し 円安で急伸、対ドルで最安値更新だがまだドル円を追いかける展開(23/5/1)

トルコリラ円の4月28日は概ね7.02円から6.86円の取引レンジ、29日早朝の終値は7.01円で前日終値の6.89円からは0.12円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 円安で急伸、対ドルで最安値更新だがまだドル円を追いかける展開(23/5/1)

円安で急伸、対ドルで最安値更新だがまだドル円を追いかける展開

〇トルコリラ円、ドル円を追いかけ6.86から深夜高値7.02へ急伸
〇1/16と3/24の両安値をダブル底とした下げ渋りから戻り高値切り上げを試す状況
〇対ドルでは17日と19日の安値19.46を超え取引時間中の史上最安値更新
〇国際金融協会発表レポート「1ドル=21.00リラよりも大幅に下げるとの見方大半」と指摘
〇トルコ3月貿易収支は83.4億ドルの赤字、依然として高水準を維持
〇1-3月期の観光収入は86.91億ドルとなり2022年1-3月期の49.03億ドルから倍近い増加に
〇7.01超えからは7.03前後への上昇を想定、7.03以上は反落警戒
〇6.97割れから6.94前後への下落を想定、6.94以下は反騰注意

【概況】

トルコリラ円の4月28日は概ね7.02円から6.86円の取引レンジ、29日早朝の終値は7.01円で前日終値の6.89円からは0.12円の円安リラ高だった。
4月28日の日銀金融政策決定会合がマイナス金利とYCC継続等の金融政策現状維持を決定したことと、これまで続けてきた金融緩和政策の点検について1年から1年半をかけて実施する姿勢を示したことで、当面は異次元金融緩和から出口へ向かう修正はないとみて円が独歩安となり、ドル円は日銀声明発表前の安値133.36円から28日深夜高値136.55円へ3円を超える急伸となった。
トルコリラ円はドル円を追いかけて6.86円から深夜高値7.02円へ急伸し、29日未明にかけての7.00円割れも買われて7円台を維持して週を終えた。
週間では4月21日終値6.90円から0.11円の円安リラ高、月間では3月31日終値6.92円から0.09円の円安リラ高となった。

【まだドル円を追いかける展開だが、大統領選挙まであと半月】

ドル円は昨年10月21日高値を天井として今年1月16日安値へ大幅下落したが、その背景は過剰な円安阻止のための大規模な市場介入、黒田前日銀総裁退任前の金融政策修正、米CPI鈍化による米国利上げサイクル終了への期待等であったが、日銀人事騒動が落ち着き米国のインフレ高止まりによる利上げ継続感から3月8日高値へと上昇した。その後の反落は米銀破綻による信用不安からのリスク回避的円高によるものだったが、信用不安がひとまず落ち着いたことと植田新総裁による日銀が金融政策修正を急がないとの見方が上昇再開を促してきた。

米ファーストリパブリック銀の経営危機問題もあり、新たな信用不安拡大の場合には円高がぶり返す可能性もあるもののドル円の当面は3月8日高値を試す動きであり、トルコリラ円も1月16日と3月24日の両安値をダブル底とした下げ渋りから戻り高値切り上げを試す状況と思われる。
ただし、5月14日のトルコ大統領選挙まで半月となり、大統領選挙後のリラ安への懸念が強まる中で対ドルでトルコリラの史上最安値更新が続く場合は、その勢い次第ではトルコリラ円がドル円に追従できなくなる可能性もあるところと注意したい。

【対ドルでは取引時間中及び終値ベースで最安値を更新】

ドル/トルコリラの4月28日は概ね19.47リラから19.41リラの取引レンジ、29日早朝の終値は19.45リラで前日終値の19.43リラからは0.02リラのドル高リラ安だった。
週間では4月21日終値19.34リラから0.11リラのドル高リラ安、月間では3月31日終値19.16リラから0.29リラのドル高リラ安で、3月以降は8週連続のドル高リラ安となった。
手元のデータでは4月17日と19日の安値19.46リラを超えて取引時間中の史上最安値を更新し、日足の終値ベースでは27日からの続落により連日の最安値更新となった。

4月27日のトルコ中銀による政策金利現状維持に対する反応は限定的だったが、週次の外貨準備高は4月21日時点のネットで82.9億ドルとなり4月14日時点の120.5億ドルから大幅に減少してリラ防衛力が大きく落ち込んでいることを示し、4月28日の3月貿易収支は2月に続いて1月の過去最大赤字からは縮小したものの高水準を続けており、観光客数及び観光収入が伸びているものの経常収支の改善期待には程遠い状況にある。
5月14日の大統領選挙についてはエルドアン大統領が再選すればこれまでの正統的でない政策の継続となり野党統一候補が勝利すれば大胆な改革となるものの混乱を招くとしていずれの場合もリラ安が深刻化すると懸念されている。

【1ドル=20リラを超えてゆくリラ安論調続く】

世界の大手金融機関が加盟する国際金融協会(IIF)が4月27日に発表した最新レポートでトルコリラへの言及があったが、「来月の大統領選挙に向けて市場は非常にネガティブな見方に転じており、我々が適正価値とする1ドル=21.00リラよりも大幅に下げるとの見方が大半を占める」と指摘した。
4月19日にトルコ中銀が発表したエコノミスト調査における2023年末のドル/トルコリラ予想は1ドル=23.1535リラで3月調査時の22.9097リラからリラ安の進行度が増すとされた。4月14日には金融大手JPモルガンが大統領選挙後には1ドル=24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落し、より厳しい展開になれば選挙後には1ドル=30リラへ向かう可能性もあると指摘している。
これらの見方を踏まえれば、楽観的見通しで1ドル=21リラ、中立的な見方で1ドル=24〜25リラ、悲観的な展開となればさらにそれ以上にリラ暴落が発生する可能性のある局面ということになろうか。

【トルコ貿易赤字、2月からは減るものの高水準】

【トルコ貿易赤字、2月からは減るものの高水準】

トルコの3月貿易収支は83.4億ドルの赤字となり、赤字としては1月に142.6億ドルで過去最大となったところから2月の121億ドルへ減少した流れを継続したが、依然として高水準を維持している。
輸出は235.95億ドルで前年同月比4.4%増となり過去最大となった。一方で輸入は319.36億ドルで前年同月比は3.4%増となり、過去最大となった1月の336.06億ドルには及ばなかったものの高水準が続いている。
エルドアン政権としては輸出増には成功しているものの世界的なインフレの高止まりにリラ安が輪をかけることによる輸入額の増加で赤字体質から脱却する展望が見えない状況にある。

【トルコ観光収入は前年比増を続ける】

トルコ文化観光庁による1-3月期の観光収入は86.91億ドルとなり2022年1-3月期の49.03億ドルから倍近い増加となった。3月の単月では29.07億ドルで前年同月比39.8%増だった。パンデミックによる急激な落ち込みが解消して着実に収入増となっているものの、1-3月のトータルで3月の貿易赤字を埋める程度であり、経常収支の改善にはつながっていない。
3月の海外観光客数は233万5728人で前年同月比は12.32%増となり、パンデミック発生前の2019年3月における223万2358人を若干上回った。入国のトップ5はロシア(11.35%)、イラン(10.53%)、ドイツ(9.28%)、ブルガリア(8.78%)、ジョージア(5.56%)だった。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月26日夜安値から下げ渋りとなったために27日午前時点では6.90円超えからは強気サイクル入りとし、27日夜の反落時は安値更新を回避して27日夜高値で6.90円に到達したため、28日午前時点では26日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクルとした。またサイクルトップ形成期は4月27日夜から5月1日夜にかけての間とした。
4月28日の日銀金融政策現状維持発表からの急伸で7円に到達した後も高値圏を維持しているので1日夜から2日にかけての間への上昇余地ありとするが、急騰後の反動安にも注意がいるところとみて6.97円割れからは弱気サイクル入りと仮定して5月1日夜から3日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では4月28日の急伸で遅行スパンが好転し、先行スパンに対してもいったん転落したところから好転した。その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。相場が上昇一服に入ると遅行スパンは悪化しやすくなるため、遅行スパン悪化からは安値試し優先とするが、先行スパンを上回るうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とする。

60分足の相対力指数は4月28日夜への急伸で70ポイント台後半へ上昇してからやや下げているものの、60ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとみる。ただし、相場が小反落後に高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は反落入り注意とし、60ポイント割れからはいったん下げに入るとみて40ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.97円を下値支持線、7.01円を上値抵抗線とする。
(2)6.97円を上回るうちは上昇余地ありとし、7.01円超えからは7.03円前後への上昇を想定する。7.03円以上は反落警戒とするが、6.98円以上を維持しての推移なら2日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.97円割れから6.94円前後への下落を想定する。6.94円以下は反騰注意とするが、6.97円以下での推移が続く場合は2日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5月2日
 16:00 4月 イスタンブール製造業PMI (3月 50.9)
5月3日
 16:00 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 2.29%)
 16:00 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 50.51%)
 16:00 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 0.44%)
 16:00 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 62.45%)
5月5日
 20:30 週次 外貨準備高 4/28時点 グロス (4/21時点 668.8億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 4/28時点 ネット (4/21時点 82.9億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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