信用不安と米債務上限問題、リスク回避の円高基調続く
〇ドル円、26日夜に133.01へ下落、27日未明の戻りも134円に届かず上値の重い展開
〇米コア資本財受注0.4%減で悪化、市場は米景気後退への不安感をもたらすものと受け止める
〇米債務上限問題を巡り共和党提出法案可決、バイデン大統領の拒否でデフォルト発生の可能性浮上
〇週末に日銀会合、来週はFOMCとECB理事会、内容次第で円、ユーロ、ドルの力関係入り交じることも
〇26日の米長期債利回りはまちまち、10年債利回りは前日比0.05%上昇の3.45%
〇134円超えからは反騰継続とみて134.50前後への上昇を想定、134.50以上は反落警戒
〇133.01割れからは132円台中盤への下落を想定、132.50以下は買われやすい
【概況】
ドル円は4月19日高値135.11円からの下落基調が続いている。米中堅銀行のファーストリパブリック銀が3月末時点の預金残高が昨年末から4割減少し最大1000億ドルの資産売却を検討しているとの報道をきっかけに同社株が急落して信用不安が再燃したが、26日は米政府がファーストリパブリック銀救済に対して消極姿勢との報道や、米債務上限問題を巡り共和党提出法案が下院で可決されたことでの米デフォルト懸念、米耐久財受注でのコア資本財の悪化などによりリスク回避型の円高が継続し、ドル円は26日夜に133.01円へ下落、27日未明の戻りも134円に届かずに上値の重い展開となっている。
米商務省による3月の耐久財受注は全体の前月比が3.2%増となり、市場予想の0.2%減に反して3か月振りのプラスとなったが、設備投資の先行指標である航空機を除く非国防資本財受注=コア資本財は0.4%減となり、市場予想の0.1%減を超える悪化となったため、米景気後退への不安感をもたらすものと市場は受け止めたようだ。
【信用不安問題に加えて債務上限問題も】
米国の連邦政府債務上限問題の混乱がドル円には重石となっている。野党共和党のマッカーシー下院議長が債務上限を引き上げる替わりにバイデン政権の政策を一部撤回させる内容を盛り込んだ法案を発表し、26日に下院を通過した。バイデン大統領は拒否するとしているが、債務上限問題が解決まで長引くことにより一時的なデフォルトが発生する可能性が浮上している。米連邦債務は今年1月19日に既に上限に達しているが、米財務省は臨時的な資金確保を行っており当面は支障がない。しかし問題が解決しないと今年7月から9月にかけての間には政府の資金が尽きるとの試算もある。
債務上限問題はこれまでも毎年繰り返し与野党対立で混乱し、一時的な資金ショートにより政府機関の閉鎖が発生したこともあるが、デフォルト状態に陥ったとしても一時的なものとの認識により格付けについては大きな影響はない。しかし、一時的でもデフォルトの懸念がある以上は米国債を買いづらいという印象も与える。一方では銀行セクターへの信用不安に対して米国債が安全資産として買われる側面もあるため、米国債利回りの動きも混乱しやすいところだ。
4月26日は夕刻からユーロやポンドが急伸して25日夜の急落を解消したが、深夜から反落するなど乱調な展開となった。豪ドルはインフレ率が予想を下回り追加利上げへの懸念後退で売られ、ドル円が全般的なリスク回避感で下落基調を継続するなど、ドルの強弱についてはやや混乱も見られる。
今週末には日銀金融政策決定会合、来週は米FOMCとECB理事会があり、日銀が植田新総裁体制でYCCなどに関して修正姿勢を印象付ける可能性や、FOMCが0.25%利上げを決定したとしても利上げ打ち止めとするのかどうか、インフレの高止まりに直面しているECBの利上げ幅が0.50%となりさらに追加利上げの可能性が高まるのかどうかにより、円とユーロとドルの力関係が入り交じることも考えられる。
【米長期債利回りは上昇、NYダウは続落】
4月26日の米長期債利回りはまちまちだった。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%上昇の3.45%となった。一時は3.38%へ低下したところから戻している。4月19日に3.64%を付けて3月22日以降の低下幅を解消したところから低下に転じてきた流れに一服感が見られる。
30年債利回りは前日比0.05%上昇の3.71%となり、4月19日の3.83%からの低下が一服、25日の0.05%低下を解消した。また2年債利回りは0.01%低下の3.95%となり、一時は3.87%を付けて4月19日の4.29%以降の最低としたところからはやや持ち直した。
NYダウは前日比228.96ドル安と下落、25日の344.57ドル安からの続落となり、3月15日からの上昇が4月14日高値で一巡して下落期入りし始めた印象だ。ナスダック総合指数は前日比55.19ポイント高と小幅上昇となり24日から25日への続落が一服しているが、4月18日高値で2月2日高値に迫ったところから下落に転じている印象だ。渦中のファーストリパブリック銀は29.8%安と下げた。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は3月24日安値を起点として4月19日高値135.11円へ上昇してきたが、4月25日の夜の下落で上昇トレンドから転落している。26日夜の133円割れを回避してやや戻したものの134円に届かず27日午前は軟調推移のため、28日夜にかけて安値試しを続けやすい局面と思われる。
134円超えからはいったん戻しに入るとみて5月1日夜にかけての上昇を想定するが、4月19日高値から24日夜高値へと高値ラインが切り下がってきている範囲にとどまるのではないかとみる。
60分足の一目均衡表では4月26日未明への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、26日夜安値から一時反発したものの遅行スパンは好転しきれず、先行スパンの下限が上値を抑えているため、遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜くところからはいったん戻しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、その後に先行スパンから転落する場合は下落再開に入るとみる。
60分足の相対力指数は4月26日夜にかけての安値更新に際して指数のボトムがやや切り上がる逆行気配となり26日深夜にはいったん50ポイントを超えたのだが、50ポイント以上を維持できずにいるのでまだ一段安余地が残る。30ポイントを割り込む場合は逆行が破れての一段安となるため下げ足が速まりやすいと注意する。ただし55ポイントを超えてからも50ポイント以上を維持して指数の高値が切り上がりに入る場合は反騰継続とみて60ポイント台後半への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月26日夜安値133.01円を下値支持線、134.00円を上値抵抗線とする。
(2)133.75円から134円手前にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみるが、134円超えからは反騰継続とみて134.50円前後への上昇を想定する。134.50円以上は反落警戒とし、その後に134円を割り込むところからは下げ再開とみるが、134円以上を維持しての推移なら28日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)133.01円割れからは132円台中盤への下落を想定する。132.50円以下は買われやすいと注意とするが、134円以下での推移が続く場合や直前安値から1円を超える反騰が見られない場合は28日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
4/27(木)
休場 南ア
日銀・金融政策決定会合初日
10:30 (豪) 1-3月期 輸入物価指数 前期比 (10-12月 1.8%、予想 0.5%)
14:00 (日) 2月 景気一致指数CI・改定値 (速報 99.2)
14:00 (日) 2月 景気先行指数CI・改定値 (速報 97.7)
18:00 (欧) 4月 経済信頼感 (3月 99.3、予想 99.9)
18:00 (欧) 4月 消費者信頼感・確定値 (3月 -17.5)
21:30 (米) 1-3月期 GDP速報値 前期比年率 (10-12月 2.6%、予想 2.0%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP個人消費速報値 前期比年率 (10-12月 1.0%、予想 4.1%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCEデフレーター速報値 前期比年率 (10-12月 4.4%、予想 4.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.5万件、予想 24.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 186.5万人、予想 187.8万人)
23:00 (米) 3月 住宅販売保留指数 前月比 (2月 0.8%、予想 0.5%)
23:00 (米) 3月 住宅販売保留指数 前年同月比 (2月 -21.1%)
26:00 (米) 財務省7年債入札
4/28(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
08:30 (日) 3月 失業率 (2月 2.6%、予想 2.5%)
08:30 (日) 4月 東京区部消費者物価指数(CPI)・生鮮食品除く 前年同月比 (3月 3.2%、予想 3.2%)
08:50 (日) 3月 鉱工業生産速報値 前月比 (2月 4.6%、予想 0.4%)
08:50 (日) 3月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (2月 -0.5%、予想 -1.2%)
08:50 (日) 3月 小売業販売額 前年同月比 (2月 6.6%、予想 6.5%)
10:30 (豪) 1-3月期 生産者物価指数(PPI) 前期比 (10-12月 0.7%)
10:30 (豪) 1-3月期 生産者物価指数(PPI) 前年同期比 (10-12月 5.8%)
14:00 (日) 3月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (2月 -0.3%、予想 -3.8%)
15:00 (独) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 -2.4%、予想 -1.2%)
15:00 (独) 3月 輸入物価指数 前年同月比 (2月 2.8%、予想 -3.9%)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
16:55 (独) 4月 失業者数 前月比 (3月 1.60万人、予想 0.90万人)
16:55 (独) 4月 失業率 (3月 5.6%、予想 5.6%)
17:00 (独) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 -0.4%、予想 0.2%)
17:00 (独) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (10-12月 0.3%、予想 0.8%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 0.0%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (10-12月 1.8%、予想 1.4%)
21:00 (独) 4月 消費者物価指数(CPI)速報値 前月比 (3月 0.8%、予想 0.6%)
21:00 (独) 4月 消費者物価指数(CPI)速報値 前年同月比 (3月 7.4%、予想 7.3%)
21:30 (米) 1-3月期 雇用コスト指数 前期比 (10-12月 1.0%、予想 1.1%)
21:30 (米) 3月 個人所得 前月比 (2月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 個人消費支出(PCE) 前月比 (2月 0.2%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 3月 PCEデフレーター 前年同月比 (2月 5.0%、予想 4.1%)
21:30 (米) 3月 PCEコアデフレーター 前月比 (2月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 PCEコアデフレーター 前年同月比 (2月 4.6%、予想 4.5%)
22:45 (米) 4月 シカゴ購買部協会景況指数 (3月 43.8、予想 43.6)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 63.5、予想 63.5)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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