トルコリラ円見通し 信用不安拡大による円高で3月8日以降の安値更新(23/3/20)

トルコリラ円の3月17日は概ね7.04円から6.92円の取引レンジ、18日早朝の終値は6.92円で前日終値の7.03円からは0.11円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 信用不安拡大による円高で3月8日以降の安値更新(23/3/20)

信用不安拡大による円高で3月8日以降の安値更新

〇トルコリラ円はドル円を見ながらの展開、18日早朝に6.92へ安値切り下げる
〇円高進行、トルコリラ円もしばらくは円高に圧迫される展開で安値試しを続けやすい状況
〇対ドルではリラ安基調続く、17日に19.01をつけ終値ベースで最安値更新
〇5月大統領選挙へ向けた政局不安、大地震の影響も踏まえ史上最安値更新を繰り返し試す展開
〇トルコ中銀調査、23年末の見通しは1ドル22.9097リラで2月から上昇
〇6.97以下での推移中は一段安警戒、6.90割れからは21日夜から23日夜にかけての間への下落を想定
〇6.97超えからは7.00手前を試す上昇を想定するが、7.00手前は戻り売り有利とみる

【概況】

トルコリラ円の3月17日は概ね7.04円から6.92円の取引レンジ、18日早朝の終値は6.92円で前日終値の7.03円からは0.11円の円高リラ安だった。週間では3月10日終値7.12円から0.20円の円高リラ安だった。
3月10日の米銀破綻報道から信用不安の拡大で円高が進行し、ドル円は3月8日に付けた年初来高値137.91円からの下落を継続、3月16日夜安値131.71円から17日未明高値133.82円まで一時戻したものの、17日は前日に暴落一服で戻していたクレディ・スイス株が反落し、破綻したシリコンバレー銀の親会社であるSVBファイナンシャル・グループが連邦破産法11条適用を申請したとの報道からリスク回避感が一層強まったために米長期債利回りの低下と共に18日未明には131.55円まで安値を切り下げた。

トルコリラ円はドル円を見ながらの展開だが、3月8日高値7.29円から下落に転じて3月13日へ3営業日続落、13日夜安値6.97円を付けたところから3月15日夕高値7.12円まで戻したものの、ドル円の一段安により16日夜に6.93円へ下落し、17日未明に7.04円まで戻したところから再び売られて18日早朝に6.92円へ安値を切り下げた。
欧米金融機関の連鎖破綻への不安が拡大しており、株売り・債券買いにより欧米長期債利回りが揃って低下しているが、米長期債利回り低下が目立ち、リスク回避によるクロス円の手仕舞い売りもあって円高が進行しており、トルコリラ円もしばらくは円高に圧迫される展開で安値試しを続けやすい状況と思われる。

【対ドルでは終値ベースで最安値更新】

ドル/トルコリラの3月17日は概ね19.03リラから18.82リラの取引レンジ、18日早朝の終値は19.01リラで前日終値の18.98リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。週間では3月10日終値18.96リラから0.05リラのドル高リラ安だった。
2021年末からの長期的なリラ安基調が続く中、2月6日のトルコ南部大地震による震災級の被害発生と2月23日のトルコ中銀による利下げ及び1月の貿易収支や経常収支、2月財政収支の悪化等からリラ安が勢い付き始めており、手元のデータでは3月15日に19.10リラを付けて取引時間中の史上最安値を更新し、終値ベースでは3月16日終値18.98リラで3月14日と3月15日につけたそれまでの最安値18.97リラを更新していたが、17日終値は19.01リラへさらに最安値を更新した。
為替市場では米長期債利回り低下によりドル安優勢の動きで推移しているが、米銀破綻からクレディ・スイスの経営危機へと信用不安の飛び火が進んでおり、市場心理がリスク回避へ向かう中ではファンダメンタルズが弱く5月大統領選挙へ向けた政局不安のあるトルコリラは売られやすい状況にあり、大地震の影響も踏まえてしばらくは史上最安値更新を繰り返し試す展開と思われる。

【トルコ中銀調査、2023年末は1ドル22.91リラの予想】

3月17日にトルコ中銀は月次の企業経営者による経済見通し調査を発表した。それによると、2023年末のトルコCPI上昇率予想は年率で37.72%となり2月調査時の35.76%から上昇、2023年通年のGDP伸び率の予想は3.5%で2月時点の3.6%から低下、2023年末のドル/トルコリラの見通しは1ドル22.9097リラで2月時点の22.8363リラから上昇した。
2月のCPI上昇率についての予想は前月比2.88%で2月時点の3.01%から低下した。また政策金利の週間レポレートについての予想は3か月後で8.50%(2月時点は9.00%)、12カ月後では12.83%(2月時点では13.94%)だった。
総じて言えることは、インフレはピーク時からは大きく減速したとはいえ主要国と比較すれば異常に高い水準にとどまり、GDPは昨年後半から鈍化した状況の継続、対ドルでのリラ安は続いて1ドル20リラを超えてゆく見通しであり、政策金利はこれ以上は下がらないだろうというのがトルコの企業経営者たちの認識ということだ。

【円高とリラ安の進行で7円割れ、3月8日を起点とした下落継続感強まる】

米銀破綻を発端とした欧米の金融機関連鎖破綻への不安が急拡大している。それ以前には米FRBによる3月21-22日のFOMCでは0.50%の大幅利上げの可能性も取り沙汰されていたが、信用不安をさらに助長することにもなりかねないために0.25%利上げへトーンダウンすると見込まれている。ECBは金融危機にはならないとして0.50%利上げを強行したものの今後については状況次第としており、主要国の利上げ問題もピークが見え、金融機関の破綻が拡大することで信用不安が深刻化するようなら利下げ再開時期も速まることも考えられる。
日銀としては植田新総裁体制の発足から急いで異次元金融緩和からの出口へ進む必要には迫られなくなったと思われるが、信用不安が拡大すれば株売り・債券買いにより欧米長期債利回りは低下傾向をたどり、ドル円は昨年の歴史的大上昇期とは逆に日米長期金利差の縮小傾向とリスク回避での円の買い戻しにより円高基調で進みやすくなると思われる。

ドル円はすでに1月16日から3月8日までの上昇が一巡して下落期に入っている印象だが、ドル円を追いかけてきたトルコリラ円も3月8日高値から下落期に入っている印象を強めている。
日足の一目均衡表では26日基準線を割り込んでいるが、2022年4月28日高値からの下落開始時、2022年10月21日高値からの下落開始時に近い動きであり、既に遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しつつある状況のため、1月16日からの上昇一巡による下落期入りとして、先行きは1月16日安値6.74円割れへ向かい、2021年12月20日に付けた史上最安値6.17円を目指してゆく可能性が徐々に高まってきているのではないかと思われる。

【3月23日未明の米FOMC、23日夜のトルコ中銀MPCでの波乱に注意】

【3月23日未明の米FOMC、23日夜のトルコ中銀MPCでの波乱に注意】

3月23日にはトルコ中銀のMPC(金融政策委員会)がある。前回の会合では大地震対策として政策金利の週間レポレートを9.0%から8.5%へ引き下げた。高インフレ状態とリラ安が進んでいる状況においては連続利下げを回避したいところではあろうが、5月14日のトルコ大統領選挙を控えての被災者対策として0.5%の追加利下げに踏み切る可能性も一部では予想されている。
3月23日は未明に米FRBによる連邦公開市場委員会(FOMC)、夜にはクレディ・スイス問題を抱えるスイス中銀、その他にもノルウェー中銀と英中銀の金融政策決定会合が相次ぐため、内容次第では為替市場全般が大きな波乱となる可能性がある。
先週は週明け早々に米銀の新たな破綻報道が飛び込んできたが、今週も新たな金融機関の経営危機関連報道には注意したい。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.90円を下値支持線、6.97円を上値抵抗線とする。
(2)6.97円以下での推移中は一段安警戒とし、6.90円割れからは21日夜から23日夜にかけての間への下落を想定する。当初の下値目途を6.85円前後試しとするが、下げ足が速まる場合は6.80円台序盤(6.83円から6.80円)へ引き下げる。また直前安値から0.07円を超える反騰へ進めないうちは戻り売りにつかまって下落基調を継続しやすいとみる。
(3)6.97円超えからは7.00円手前を試す上昇を想定するが、7.00円手前は戻り売り有利とし、その後に6.95円を割り込むところからは下げ再開とみる。ただし、米FOMC等でのサプライズ的な円安反応となる場合は7.05円前後への上昇を想定する。

【当面の主な予定】

3月20日
 23:30 2月 中央政府債務 (1月 417.8億リラ)
3月23日
 16:00 3月 消費者信頼感指数 (2月 82.5)
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.5%)
 20:30 週次 外貨準備高 3月17日時点 グロス(3月10日時点 697.0億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 3月17日時点 ネット(3月10日時点 186.2億ドル)
3月24日
 17:00 2月 海外観光客数 前年同月比 (1月 56.51%)
3月27日
 16:00 3月 製造業信頼感指数 (2月 102.4)
 16:00 3月 設備稼働率 (2月 75.2%)

注:ポイント要約は編集部

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