パウエル、ラガルド氏の発言次第でレンジ抜けか
〇先週は米金利よりもドイツ国債の利回り上昇が先行、ユーロドル上昇のきっかけに
〇世界的にインフレ率低下のペースが鈍化、欧州のCPIも同様との見通しで欧州の利回り上昇
〇ドイツ、ユーロ圏もインフレ率低下ペース鈍化、16日ECB理事会に向け金利高止まりの動きが続きそう
〇今週はパウエルFRB議長(7・8日)とラガルドECB総裁(8日)の講演に要注目
〇今週は1.0550レベルをサポートに1.0700レベルをレジスタンスとする週とみる
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは米金利の影響が大きかったことと同時にドイツ国債の利回りも上昇する動きがユーロが買われる局面で大きく影響していました。週初から米金利よりもドイツ国債の利回り上昇が先行したことがユーロドル上昇のきっかけとなりました。
これは世界的にインフレ率低下のペースが鈍化してきていることから欧州のCPIも同様であるとの見通しが欧州の利回り上昇につながっていました。実際に先週発表されたドイツの2月CPI速報値は予想の8.5%に対して8.7%と前月から変わらず、ユーロ圏の2月CPI速報値も予想8.2%に対して8.5%と前月から変わらずという数字が出たことで、3月16日のECB理事会に向けて金利が高止まりする動きが続きそうです。
ただ、ユーロドルも金利差、米独金利差が為替レートには反映しますのでドイツ金利以上に米金利が上昇すればユーロドルは売られるという3月2日のような動きになります。先週の米独金利差をドイツ金利から米金利を引く計算にしてユーロドルの動きに合わせたチャートをご覧下さい。
ローソク足がユーロドルの1時間足(右軸)で1日単位に四角で囲ってあります。オレンジのラインが米独金利差(左軸)で差がマイナスで表示されています。こうして見ると動きが異なる部分もありますが、ほぼ同様の動きとなっていてユーロドルと米独金利差の相関が高いことがわかります。
現在の為替市場は金利がメインテーマということから、今週のパウエルFRB議長による議会証言(7・8日)、そしてその間にラガルドECB総裁の講演(8日)があります。どちらもそれぞれの国の金利に影響を与える可能性が高いため、要注目となります。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
3本の平行ラインの一番下と真ん中のラインの中での動きを続けていますが、小さくは2月24日の安値1.0535と3月1日の高値1.0690の中での取引となっていて、これらのどちらかを抜けた方向にもう一段動くと考えていてよいでしょう。
下抜けの場合は2022年安値と2023年高値との38.2%押しの1.0460、上抜けの場合は上昇チャンネルの真ん中のラインが位置する1.0800レベルがそれぞれのターゲットとなりますが、これはパウエル議長とラガルド総裁の発言次第だと思います。
ここでは、抜けることは考慮せず、今週は1.0550レベルをサポートに1.0700レベルをレジスタンスとする週を見ておきますが、抜けた場合には上述したターゲットを考える必要があることは繰り返しておきます。
今週のコラム
今週は米金利とドイツ金利の日足チャートを見ておきましょう。
金利差のチャートはよく扱っていますが、日足チャートで米国10年債利回りとドイツ10年債利回りを比較するとかなり似た動きをしています。
白黒のローソク足が米債利回り(右軸)、カラーのローソク足がドイツ債利回り(左軸)です。昨年9月からの日足チャートですが、ほとんど同じ動きとなっていることがわかります。ただ米債利回りは昨年10月のピークにやや距離がありますが、ドイツ債利回りは高値更新を昨年末、先週と繰り返し、金利先高観が米国以上に強いことを感じさせるチャートとなっています。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
3月6日(月)
18:30 英国2月建設業PMI
19:00 ユーロ圏小売売上高
3月7日(火)
09:01 英国2月小売売上高
16:00 ドイツ1月製造業新規受注
24:00 パウエルFRB議長議会証言(上院)☆
3月8日(水)
16:00 ドイツ1月小売売上高、鉱工業生産
19:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
24:00 パウエルFRB議長議会証言(下院)☆
28:00 ベージュブック ☆
3月9日(木)
09:01 英国2月住宅価格
3月10日(金)
**:** 日銀会合結果発表 ☆
15:30 黒田日銀総裁会見 ☆
16:00 ドイツ2月CPI
16:00 英国1月鉱工業生産、貿易収支
16:45 フランス1月貿易収支
22:30 米国2月雇用統計 ☆
3月12日(日)
**:** 米国夏時間開始
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
2月27日(月)
週明けのユーロドルはNY市場までは安値圏でもみあいを続けていましたが、NY市場に入ると米金利が下げるいっぽうでドイツ金利は高止まりしていたことを受けてユーロドルの買いが入り、1.0620レベルへと上昇後高値圏での引けとなりました。
2月28日(火)
ユーロドルは米債利回りと足並みを揃えてドイツ国債の利回りも欧州市場で上昇した動きを受けてユーロ買いの動きとなりました。NY市場での動きも同様でしたが、ドイツ債利回りがやや下げたこと、月末の実需売りが出たことから1.0572レベルまで下げての安値引けとなりました。
3月1日(水)
ユーロドルはドイツ金利上昇が先行していましたが、その後ドイツCPI速報値が予想よりも高い8.7%と前月と同水準に留まったことから一段高となり、1.0691レベルまで上昇、引けにかけては米金利も上昇したことからやや押しての引けとなりました。
3月2日(木)
米金利が4%の大台乗せとなったことからドル買いの動きが強まり、ユーロドルも終日ユーロ売りの動きとなりました。ほぼ前日の上げ幅を失う2日かけての行って来いの動きを見せましたが、週末前のポジション調整も入った様子でした。
3月3日(金)
ユーロドルは米金利低下からユーロ買い(ドル売り)の動きが続きましたが、水曜高値から木曜安値までの下げに対して半値程度の戻しに留まりました。ドル円での下げがより大きくユーロ円でも下げたことがユーロドルの戻りを鈍くしていました。
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