トルコリラ円見通し ドル円急騰一服で7.05円へ上昇後は上げ幅削る
〇トルコリラ円、ドル円の騰落に合わせた動き継続、2/14未明には7.05まで高値を伸ばす
〇しかし2/14早朝にかけてドル円が修正安に入りトルコリラ円も7.02へ失速、2/14午前7.01へと続落
〇対ドル、2/13は概ね18.85から18.81の取引レンジ、最安値近辺での推移
〇2/13は15時台に18.81近辺を試すも、夕刻以降18.84から18.85中心の推移、2/14早朝18.86へ下落
〇トルコ12月経常赤字は大幅増、トルコ大震災の今後の影響も踏まえれば経常赤字が一層悪化の可能性も
〇トルコ小売売上高は前年同月比で大幅増だが、前年のリラ暴落を考慮すると実態は低調か
〇7.00以上での推移中は上昇余地ありとし、7.05超えからは7.07前後への上昇を想定する
〇7.00割れからは下げ再開とみて、6.97前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の2月13日は概ね7.05円から6.97円の取引レンジ、14日早朝の終値は7.02円で先週末終値の6.98円からは0.04円の円安リラ高だった。
ドル/トルコリラでは経常赤字拡大やトルコ大震災の影響によりリラ安感が強まりつつあるが、トルコリラ円はドル円の騰落に合わせた動きを続けており、ドル円が2月10日の日銀人事サプライズをきっかけとした当初の急落から反騰に転じた流れに乗じて10日夕刻安値6.89円からの反騰を継続して14日未明には7.05円まで高値を伸ばし、2月6日高値7.06円に迫った。しかし14日早朝にかけてはドル円が修正安に入ったことで7.02円へ失速して上げ幅を削り、14日午前には7.01円へと続落している。
【日銀人事騒動から今夜の米CPIへ】
日銀新総裁人事を巡り、2月6日には雨宮現副総裁起用との報道でドル円は急伸し、2月3日夜の米雇用統計をきっかけとした米長期債利回り上昇と全般ドル高により2月7日未明には132.90円の高値をつけたが、植田氏起用報道からの乱高下を通過しての反騰で2月7日未明高値とほぼ並んだことで材料的にはひとまず消化された印象だ。
今夜は米1月CPI上昇率の発表があり、市場の関心はCPI内容とその反応に向かっている。FRBが利上げペースを減速したことによりあと2回程度の利上げで政策金利もピークをつけ、年内は利上げ状態の維持とされつつも早期に利下げ再開となる可能性も期待されたことで2月2日夜にかけてはドル全面安での推移だった。しかしその後は当面するドル売り材料消化としてドル高がぶり返し、2月3日の米雇用統計が予想以上の改善内容だったことで米長期債利回りは再上昇してきた。
トルコリラ円はドル円次第での動きだが、今晩の米CPIをきっかけにドル全面高へ進む場合はドル円の上昇と共に1月16日以降の高値を更新して7.10円台を目指す可能性も出てくるのではないかと思われるが、逆にドル安円高反応となる場合は1月16日以降の戻り一巡によりドル円と共に下落再開へと転じる可能性がある。
【対ドルでは最安値近辺での推移、震災の影響と経常収支悪化でのリラ売りも】
ドル/トルコリラの2月13日は概ね18.85リラから18.81リラの取引レンジ、14日早朝の終値は18.83リラで先週末終値の18.81リラからは0.02リラのドル高リラ安だった。
最近は15時から16時過ぎにかけてリラ買いが仕掛けられるものの早々に反落するパターンを繰り返しているが、2月13日も15時台に18.81リラ近辺を試したものの、16時のトルコ12月経常収支が予想以上の赤字となったことや震災被害を踏まえてリラ売りへ向かい、夕刻以降は18.84リラから18.85リラを中心の推移となった。14日早朝には18.86リラへ一時下落している。
トルコ大震災による死者はトルコ国内で3万5千人を超えて1939年12月に発生したエルジンジャン地震(マグニチュード7.8)による死者約3万3000人を上回っているが、今後も被害数値の拡大は続くと思われる。被災者への救助や支援、復興へ向けてエルドアン大統領が手腕を発揮して支持率を回復できるのか、対策への批判が強まり支持率を落として5月大統領選挙での再選が危うくなるのか注目される。また大規模な財政支出による財政基盤の悪化が続けばリラ安への防衛力もそがれる可能性がある。
【トルコの12月経常赤字は大幅増】
昨年12月のトルコ経常収支は59.1億ドルの赤字となり赤字額は11月の36.66億ドルから悪化、2022年1月の69.48億ドル以来最大となった。2011年3月に過去最大となる94.07億ドルの経常赤字が発生し、2017年12月にも72.7億ドルの経常赤字を発生させている。
近年は2018年8月から同年11月、2019年5月から同年11月に連続的な経常黒字となり、2021年も8月から10月まで経常黒字を実現するなど、慢性的な経常赤字体質からの脱却を目指す動きも見られたが、リラ安の進行が収まらずに黒字体質の継続化は非現実化してきた。トルコ大震災による今後の影響も踏まえれば、当面は観光収入も最盛期を過ぎて震災の影響も受け、工業地帯の被災による輸出低迷等が発生すると経常赤字が一層悪化してゆくことも懸念される。
【トルコ小売売上高は前年同月比で大幅増だが実態は低調か】
2月13日にトルコ統計局が発表した12月のトルコ小売売上高は前月比4.8%増、前年同月比は21.8%増だった。前年同月比が高い伸びとなった背景には2021年12月のリラ暴落があり、その当時との比較により見かけの数字が大きくなっている側面がある。前月比は2021年12月に4.2%減、2022年1月に1.6%減と落ち込んでいたため前年同月比としては1月の数字も見かけでは上昇幅が大きくなる可能性がある。同様の状況はCPIにもみられ、リラ暴落の2021年12月との比較によりCPIの前年同月比は2022年11月の84.39%から12月に64.27%、2023年1月に57.68%と低下したが、2023年1月の前月比は6.65%上昇となりインフレのぶり返し気配が見られた。
トルコ大震災の影響により2月の製造業や小売がどうなるのか、被害状況にもよるため、既に過ぎ去った統計よりも今後の懸念が先行すべきところと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月8日未明から乱高下が続いていたが、2月10日夕安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたとし、高値形成期を15日午前から17日午前にかけての間と想定した。2月14日未明へ続伸した後は失速気味のため、既に期間を短縮してサイクルトップをつけた可能性があると注意し、7.00円以上を維持するうちは上昇再開余地ありとするが、7.00円割れからは弱気サイクル入りと仮定して15日夕から17日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では2月10日夕刻からの反騰で先行スパンを上抜き遅行スパンも好転してきたが、14日未明高値からの反落で遅行スパンは悪化しやすい位置に来ている。遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて先行スパンの上下限試しとし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まると警戒する。ただし、先行スパンからの転落を回避しつつ遅行スパンが一時的に悪化しても再び好転する場合は上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は2月13日夕刻から14日未明への高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られてから50ポイント割れへ低下しているので、55ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとするが、30ポイント前後への低下へ向かいやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.00円を下値支持線、7.05円を上値抵抗線とする。
(2)7.00円以上での推移中は上昇余地ありとし、7.05円超えからは7.07円前後への上昇を想定する。7.07円以上は反落注意とするが、7.02円以上での推移なら15日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.00円割れからは下げ再開とみて6.97円前後への下落を想定する。6.97円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、下げ足が速まる場合は6.95円前後へ下値目途を引き下げ、7.00円を割り込んでの推移なら15日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
2月15日
17:00 1月 財政収支 (12月 -1186億リラ)
2月16日
20:00 週次 外貨準備高 2月10日時点 グロス(2月3日時点 779.3億ドル)
20:00 週次 外貨準備高 2月10日時点 ネット(2月3日時点 270.9億ドル)
2月20日
16:00 2月 消費者信頼感指数 (1月 79.1)
23:30 1月 中央政府債務 (12月 403.3億リラ)
注:ポイント要約は編集部
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