ドル円見通し 日銀人事波乱での乱高下落ち着き133円手前で足踏み、今夜の米CPIへ向かう(23/2/14)

ドル円は2月14日未明高値で132.91円へ上昇、133円突破へは進めずに上昇一巡で2月14日午前には132円台序盤へ下げている。

ドル円見通し 日銀人事波乱での乱高下落ち着き133円手前で足踏み、今夜の米CPIへ向かう(23/2/14)

日銀人事波乱での乱高下落ち着き133円手前で足踏み、今夜の米CPIへ向かう

○ドル円、2/14未明132.91へ上昇、しかし133円突破へは進めず2/14午前132円台序盤へ下げる
○日銀総裁人事による乱高下落ち着き、米CPI発表を控え、2/14未明高値から急騰後の修正安に入ったか
○今夜米CPI発表、結果次第で米長期債利回り、ドルや株価への影響も
〇米長期債利回りは上昇一服、総じて低下、NYダウとナスダックはともに上昇
○132円以上での推移中は上昇余地ありとし、132.91超えからは133円台中盤への上昇を想定する
○131.85割れからは下げ再開に入ったとみて、131円台中盤への下落を想定する

【概況】

ドル円は2月14日未明高値で132.91円へ上昇、2月8日未明のパウエルFRB議長発言を前後して急落する前の高値132.90円にほぼ面合わせしたが、日銀総裁人事でのサプライズによる乱高下の揺れ返しが一服、2月14日の米CPI発表も迫ったことで133円突破へは進めずに上昇一巡で2月14日午前には132円台序盤へ下げている。

2月7日未明高値への上昇は2月3日夜の米雇用統計で就業者増加数が予想の3倍近かったことによるドル全面高に加え、2月6日早朝に日銀人事を巡り雨宮現副総裁起用との憶測報道が背景だったが、2月10日に植田氏起用とのサプライズ人事案報道から市場は10日午前高値131.87円から夕刻安値129.79円まで急落した。しかし植田氏が10日夜に現状の金融緩和政策を適正と述べたことや海外メディアの評価等から揺れ返しの円安反応となり、米雇用統計をきっかけとした米長期債利回りの反騰も継続したことで132.91円まで高値を伸ばしたのだが、植田氏起用問題をひとまず織り込んだ上で133円を超えてゆくには時期尚早として14日未明高値からは急騰後の修正安に入っている印象だ。
2月14日は植田氏起用等の日銀人事案が国会に提示されるが、具体的な国会審議は2月24日に予定されており、新たなサプライズが無ければ消化済材料として市場の動きも鈍いと思われ、それよりも今夜の米CPIへ向けてのポジション調整が主体となって推移するのではないかと思われる。

【2月14日夜の米CPI反応で3月へ向けた流れも方向付けされる】

2月14日夜に1月の米CPI上昇率の発表がある。事前予想では全体の前月比がプラス0.5%、前年同月比はプラス6.2%、コア指数の前月比はプラス0.4%、前年同月比はプラス5.5%とされ、いずれも前年同月比では減速するものの前月比では再加速の兆しを示すものと見込まれている。前年同月比が予想通りに鈍化して前月比が予想以下に収まればインフレ鎮静化への楽観が優先されてドル安株高反応を招きやすいが、前年同月比が予想程に鈍化せずに前月比が予想以上に伸びる場合はインフレのぶり返し懸念からFRBによる利上げ継続期間短縮への期待が後退し、利上げペースが再加速する懸念も生じてドル高株安反応を招きやすいと思われる。
先週、米労働省は消費者物価指数(CPI)上昇率についての年度補正を行い、前月比については10月を当初のプラス0.4%から0.5%へ、11月分を当初のプラス0.1%からプラス0.2%へ、12月分を当初のマイナス0.1%からプラス0.1%へと改定している。

2月13日夜にNY連銀が発表した1月の消費者調査では1年先の期待インフレ率が4.95%となり12月の4.99%から小幅低下して3か月連続での低下となり、3年先については2.71%となり12月の2.99%から顕著に低下した。このことは2月13日のNYダウ上昇や終盤の米長期債利回り低下のきっかけとされた。

【ボウマンFRB理事はタカ派的発言】

2月8日未明のパウエルFRB議長インタビューからFRB高官や地区連銀総裁による発言が相次いだが、総じて利上げ継続の正当性を強調するものだったため、米長期債利回りの再上昇に寄与していた。
2月13日にはボウマンFRB理事が講演において「インフレはあまりにも高すぎる」「物価安定には程遠い」として「利上げ継続が適切」と述べたが、「金融引き締めによる景気悪化リスクよりもインフレ持続を許容するリスクのほうがはるかに重大」と述べたことが注目される。昨年の利上げペース加速時においてはパウエルFRB議長が繰り返し「景気よりもインフレ抑制が最重要課題」と述べてきた基本姿勢とも合致する。
FRBとしては市場が楽観し過ぎることにより金融引き締め効果が薄まるよりも、景気減速への警戒感を持つことがインフレ抑制には寄与すると認識しているのだろうと推察される。仮に2月14日のCPIが予想を上回る上昇率となり、3月3日の米2月雇用統計も1月に続いてかなり強い数字になる場合は利上げ回数が増えて利上げ状態維持期間も長引き、政策金利ピーク水準が現状の想定よりも引き上げられることもあり得ると注意したい。

【米10年債利回りは連騰一服、ダウが持ち直す】

2月13日の米長期債利回りは総じて低下、指標の10年債利回りは先週末比0.04%低下の3.70%、30年債利回りは0.04%低下の3.78%、2年債利回りは0.01%低下の4.52%となった。
10年債利回りは2月10日に前日比0.08%上昇の3.74%として2月2日の3.33%以降の高値を更新、1月6日以来の水準へ切り返していたが、CPI発表前でいったん修正的に低下したようだ。30年債利回りも10日に0.09%上昇の3.82%で2月2日の3.50%以降の高値を更新したところで上昇一服、利上げに敏感な2年債利回りも10日に0.04%上昇の4.53%として2月2日の4.04%以降の高値を更新し、13日は一時4.56%まで続伸したが上げ幅を削った。

一方でNYダウはNY連銀の期待インフレ率が低下したことで14日夜の米CPIへ向けてやや楽観優勢の動きとなり13日は前日比376.66ドル高と上昇、ナスダック総合指数も長期債利回り低下を好感して173.67ポイント高と上昇した。CPI発表から米長期債利回り低下・ドル安・株高へ向かうか、逆に米長期債利回りの一段高でドル高感が強まり株安となるか注目される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は2月8日未明安値から乱高下を繰り返し、日銀人事報道で10日夕刻へ急落したところから急反騰に転じてきたが、2月14日未明高値で132.91円をつけて2月7日未明高値132.90円とほぼ並んだところで目先のピークを付けて修正安に入っている印象だ。乱高下からの急伸と修正安であり、2月14日夜の米CPI内容次第では一段高も大幅続落もあり得るところと注意する。132円以下での推移に入る場合は下向きとし、米CPIから下落反応なら15日午後から17日夕にかけての間への下落を想定し、米CPIから上昇反応なら10日夕安値を起点とした上昇の継続とみて16日夜から21日未明にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では2月10日夕安値からの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンも突破してきたが、14日未明高値からの反落で遅行スパンは悪化しやすい位置に来ている。遅行スパン悪化からは修正安の継続とみて先行スパン下限を試し、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まって2月10日夕安値へ迫ってゆく下落を想定する。先行スパンからの転落を回避し、遅行スパンが一時的に悪化しても再び好転する場合は上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月13日夜に70ポイントを超えたが14日未明への続伸に際しては指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られて50ポイント台へ失速しているので、目先は40ポイント前後へ低下しやすいとみる。60ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先するが、米CPI等から下落する場合は30ポイント割れへ向かう可能性もあるとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、131.85円を下値支持線、132.91円を上値抵抗線とする。
(2)132円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、132.91円超えからは133円台中盤(133.30円から133.70円)への上昇を想定する。133.50円以上は反落警戒とするが、132円以上での推移か直前高値から1円を超える反落が見られないうちは15日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)131.85円割れからは下げ再開に入ったとみて131円台中盤(131.65円から131.35円)への下落を想定する。米CPI等から急落反応の場合は130円台後半へ下値目途を引き下げる。また131.80円以下での推移か直前安値から1円を超える反騰が見られないうちは15日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

2/14(火)
EU財務相理事会
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.1%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -2.8%)
13:30 (日) 12月 設備稼働率 前月比 (11月 -1.4%)
16:00 (英) 12月 失業率・ILO方式 (11月 3.7%、予想 3.7%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 1.9%、予想 1.9%)

22:30 (米) 1月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.5%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (12月 6.5%、予想 6.2%)
22:30 (米) 1月 CPIコア指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 1月 CPIコア指数 前年同月比 (12月 5.7%、予想 5.5%)
25:00 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、イベント参加
25:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
28:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

2/15(水)
10:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、上院公聴会出席
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.1%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (12月 0.4%、予想 -0.4%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (12月 10.5%、予想 10.3%)
16:00 (英) 1月 CPIコア指数 前年同月比 (12月 6.3%、予想 6.2%)
16:00 (英) 1月 小売物価指数(RPI) 前年同月比 (12月 13.4%、予想 13.2%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 1.0%、予想 -0.8%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 2.0%、予想 -0.7%)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 -152億ユーロ、予想 -160億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 -117億ユーロ)

22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.1%、予想 1.8%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -1.1%、予想 0.9%)
22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 -32.9、予想 -19.0)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.7%、予想 0.5%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 78.8%、予想 79.1%)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 35、予想 37)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省20年債入札


注:ポイント要約は編集部

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