2023年の豪ドル対米ドルの見通し

2022年は年初までの世界的な財政拡大、ゼロ金利政策、中銀による国債購入拡大策により、インフレが高進し、先進国は利上げ競争の様相でした。

2023年の豪ドル対米ドルの見通し

2023年の豪ドル対米ドルの見通し

2022年は年初までの世界的な財政拡大、ゼロ金利政策、中銀による国債購入拡大策により、インフレが高進し、先進国は利上げ競争の様相でした。この間サプライチェーンの混乱を中心に製造業は鈍化傾向が続き、各国中銀のGDP予想は2021年時点と比べて、2022年末時点の予想では大きく引き下げています。

(1) ファンダメンタルズ分析

@ 米・豪中銀のGDP予想

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(1)	ファンダメンタルズ分析

上図@は豪州中銀の予想(2021年11月時)とFRBの予想(2021年12月時)、Aは1年後の同じ時点で、2023年以降の予想を示したものです。
2021年末予想では、2022年の豪・米GDP伸び率がそれぞれ5.5%・4%でしたが、2022年の暫定値ではそれぞれ3.0%・0.5%と大きく下がっています。そして2023年予想も2021年には、それぞれ2.5%・2.2%の成長率でしたが、2022年末時には1.5%・0.5%となり下方修正しています。現状を見ると、2023年前半は成長よりもインフレ鎮圧に重きを置いた政策が継続するとの市場観測になっています。両国共に3ヶ月毎に予想を修正していますが、2023年の年央辺りの修正値がどの様になるか注目されます。現状では経済規模を無視し、単純に成長率を見る限りでは2023年のGDPは豪州>米国になっています。

A 米・豪CPI

次に豪州と米国の各中銀のCPI見通しを見ると、下図B(2021年時点)とC(2022年時点)になります。5%に赤の横線を引いています。

(1)	ファンダメンタルズ分析 2枚目の画像

上図を見ると、2022年のインフレが大幅に高まり、容認できない程高進していたことが解ります。2023年にはインフレが沈静化する見通しになっていますが、中銀のインフレ目標値は豪州が2〜3%、米国が2%ですので、少なくとも2023年前半はまだ利上げ優先の政策が先行すると思われます。特に豪州は引き締めを継続せざるを得ない状況になっていると思われます。豪・米どちらが先に2023年中の利上げを終息させるのかが当面のポイントです。

2023年1月中旬現在、豪州のOCRが3.1%、米国のFFレートが4.25〜4.5%になっています。市場の先行き予想は昨年末時点で、豪州がエコノミスト予想では今年の年末に中央値3.55%(レンジ2.50〜4.10%)、一方、米国はCME Fedwatch(2023年1月25日現在)によれば2023年で一番高い時期が7月会合で4.75〜5%への利上げが48%支持、5〜5.25%が22%、最大は5.25〜5.50%が1.2%。12月のFOMC会合では4.25〜4.5%が33%、4.50〜4.75%が28%、4.75〜5.0%が10%、5%以上は1.6%になっています。現時点では豪州が残り0.4%、米国が0.5〜0.75%の利上げ予想幅になっています。

両国の政策金利ですが、下図Dを見ると、2021年末までは全く金利差はありませんでした。2022年に入ってからは豪米間の金利差が拡大しています。現状ではFFレート4.375%−OCR3.1%ですので、約1.2%の金利差ですが、上記見通しではこの金利差が1.2〜1.5%に拡大する見通しになっています。ここまでの状況は市場に織り込んでいるので、やはり年前半の両国の成長度合いやCPI動向が鍵を握りそうです。

(1)	ファンダメンタルズ分析 3枚目の画像

以上より、昨年末現在予想のファンダメンタルズから見ると、GDPもインフレも豪州>米国ですので、豪州の優勢が続くと思われ、実際にこの状況が裏付けられる数値が出ると、年内利上げが残り0.4%に留まるかは微妙になりそうです。
豪ドルにとってのリスク要因は2022年の中国経済の悪化が2023年も続くのかとなりますが、中国はゼロコロナ政策の解除で、経済優先に舵を切り替えてきているので、この分も2022年比でどの位回復するかが焦点になっています。

(2)テクニカル分析

@ 豪ドル/米ドル月足チャート(2023年1月20日現在)

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(2)テクニカル分析

2001年5月を底値にしたサポートラインA(=0.8080)を2018年に下抜けてからは戻り高の抵抗線になっています。一方、2011年7月を高値にした抵抗線B(=0.7900)は依然として有効となっており、豪ドル安の流れは今現在も変わっていません(抵抗線Bは年間200ピップス程度下がり、2023年末には0.7700付近になります)。更に、2021年2月高値からの抵抗線C(=0.7500)もあり、上値はまず最初のCを越えない限りBまでの戻りは厳しくなります(抵抗線Cは年間150ピップス程度下がり、2023年末には0.7350付近になります)。また、上値には2010年5月を底値にした抵抗線D(=0.8060)があり、丁度AとDが交差しています。Cを越えてもB、D、Aの抵抗線が控えており、0.80を中心とした強い抵抗線は今年も健在と思われます。

下値は2003年9月の底値E(=0.6300)の横サポートが効き、2022年底値もその下限までになりました。2022年底値は0.6170までありましたが、月足終値ではこのサポートEを守っています。この下には2008年10月底値の横サポートF(=0.6000)、及び最安値2001年4月底値からのサポートG(=0.5650)があります。2023年は豪ドルの戻り高から入っていますが、当面はどこまで戻れるのかになります。

A 週足チャート(2023年1月20日終値現在)

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(2)テクニカル分析 2枚目の画像

週足では2021年2月22日週高値からの抵抗線A(=0.7440)と、そこから平行に下したB(=0.660)で豪ドル安トレンドラインを形成しています。しかしながら、昨年9月19日週に完全下抜けしてから豪ドルは底値模索になっていました。この底値は昨年4月4日週高値からの抵抗線C(=0.6510)とそこから平行に下したD(=0.5710)のラインで10月10日週に綺麗に止まり、そこから上げたサポートE(=0.6620)に沿って豪ドルが上昇し、しかもラインCを上抜けています。現在はB内にも回復しているので、AとBのトレンドに回帰しています。トレンドは豪ドル安ですが、現状はその戻りがどこまであるかを模索している段階です。因みにEと平行に上げると今週は0.7140に抵抗線があります。このラインを越えればA方向トライになりそうです。

2023年見通し

昨年初、2022年は「…以上より今年のレンジは0.6800〜0.7800とし、年前半豪ドル安、後半フローに目が向けば豪ドル高を想定します。年央になっても、豪ドルの景気回復見込みや利上げ気運が予想以下の場合には、月足のE(0.6300)方向が視野に入りますが、この場合は週足62週線の0.7500を上限にして0.6500〜0.7500の1,000ピップスレンジとします。後者の可能性は低いと見ています」としましましたが、結局米国の利上げが大きく、豪州の利上げが少なかったことから後者の0.6500〜0.7500に軍配があがり、下限は0.6300をも一時割り込みました。

2023年の見通しですが、まず最初に2022年の値幅は1,441(レンジ0.6170〜0.7611)ピップスでした。2015年〜2019年までの値幅は650〜1,250(平均930)ピップス、2020年が2,100、2021年は1,014ピップスでしたので、過去8年間では2番目に大きなレンジ幅となりました。2020年以降の3年間平均は約1,500ピップスとなり、今年も1,200〜1,500ピップスの値幅を想定する必要がありそうです。トレンドはまだ豪ドル安ですので、月足チャートのB(=0.7900)を基準とすると、上記レンジ幅を勘案して下限は0.6700〜0.6400になります。月足のC(=0.7500)を基準とすると、同じく下限は0.6300〜0.6000になります。
一方、週足を見ると、Aの抵抗線が1月下旬時点で0.7440ですので、月足のB近くまで行くと、この抵抗線を大きく越えることになりますので、この場合には豪ドル高への反転も考慮に入れなければなりません。

従い、ファンダメンタルズで現状想定されている利上げ幅などを勘案し、テクニカルでもまだ上値が重いので、今年は月足のCをベースとします。月足ベースのサポートはE(=0.6300)かF(=0.6000)ですので、上記のCから見たレンジ幅と合致します。2023年の予想としては0.6300〜0.7500とします(年央ですとCが75ピップス程度下がりますので、0.6225〜0.7425辺りになります)。
万一、米豪のファンダメンタルズ分析通りを反映し、インフレが豪州>米国の地合いが鮮明となり、利上げ幅が想定以上に豪州>米国となれば、上限を月足Bとし、この場合のレンジは0.6500〜0.7800(Bは年央で0.7800付近まで下がります)とみます。可能性としては少ないと見ています。

(2023年1月26日15:30、1豪ドル=0.7117〜18米ドル)

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