ドル円見通し 130円割れから132円台後半へ急伸、JOLTSやISM雇用改善でドル高(23/1/5)

ドル円は、FOMC議事録公開前に132.71円の高値を付けて1月3日安値からの上昇幅を3.21円へ伸ばした。

ドル円見通し 130円割れから132円台後半へ急伸、JOLTSやISM雇用改善でドル高(23/1/5)

130円割れから132円台後半へ急伸、JOLTSやISM雇用改善でドル高

〇ドル円、FOMC議事録公開前に132.71の高値をつけ1/3安値からの上昇幅を3.21円へ伸ばす
〇FOMCサプライズなしでドル円上昇一服、5日朝にかけやや失速で132円台を維持できるか試す
〇FOMC議事録要旨、参加者全員が2023年中の利下げを否定
〇米長期債利回りは総じて低下、10年債利回りは前日比0.05%低下の3.69%で3日から続落
〇132円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地あり
〇131.75割れは弱気転換注意、131.50割れからは下げ再開とみて130円台後半への下落を想定

【概況】

ドル円は1月3日午後に129.50円へ下落して12月20日の日銀ショックによる暴落時の12月21日未明安値130.56円を割り込み昨年10月21日高値151.94円以降の最安値としたが、その後は売られ過ぎへの警戒感から1月4日午前に131.44円まで戻し、夕刻に130円を割り込んだところも買われて底固さを見せていた。
米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が政策金利のピーク水準を5.4%として今後数回の利上げが必要と述べたことでドル高感が強まり、23時過ぎからは米JOLTS(雇用動態調査)での雇用の堅調さや12月の米ISM製造業景況指数における雇用部門の改善からドル買い優勢となり132円台へ到達、FOMC議事録公開前に132.71円の高値を付けて1月3日安値からの上昇幅を3.21円へ伸ばした。
FOMC議事録が当該FOMC声明やパウエル議長会見での内容と変わらずサプライズ感無しとしてドル円の上昇も一服となり、5日朝にかけてはやや失速気味の展開で132円台を維持できるか試している。

【FOMC議事録要旨、参加者全員が2023年中の利下げを否定】

FRB(米連邦準備制度理事会)は5日未明に12月13-14日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨を公表した。議事要旨では「会合参加者は誰も2023年中の利下げ開始を予想していない」として市場の期待するインフレ低下と景気減速を踏まえてFRBが年内に利下げに転じるのではないかとの楽観的な見通しを否定する内容だった。

当該FOMCでは、それまで続いてきた0.75%ずつの超ハイペース利上げから0.50%利上げへと減速し、通常の0.25%利上げの2倍とした。市場は利上げペースの減速から、利上げ期間の短縮と早期利下げ再開を期待し、次回会合では0.25%利上げに落ち着くのではないかと楽観見通しを抱いていた。今回の議事要旨では特段にサプライズ内容は無かったもののFOMC参加者が「インフレは受け入れがたいほど高い」との見解で一致し、「インフレ見通しへのリスクは引き続き上振れ」とし、利上げを減速したことについては多くの参加者が「物価安定に対するFRBの決意が弱まったりインフレが持続的に低下するとの判断を示すものではないとはっきり伝えることが重要」とした。ただ、「十分に景気抑制的な水準に近づいた」としており、過度の大幅利上げ継続感を煽る内容は無かった。

議事要旨公開前に米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「ターミナルレート(政策金利ピーク水準)については5.4%と予想」、「インフレがピークに達したと確信するまで少なくとも今後数回の会合で利上げを継続することが適切」とし、「長期間インフレが高止まりする兆候が示されれば政策金利がさらに上昇する可能性が正当化される」とタカ派的な姿勢を示し、「FRBは時期尚早の利下げを回避すべき」と述べた。

【米労働市場は確り】

米労働省による2022年11月の雇用動態調査(JOLTS)では非農業部門求人数が前月比5万4000件減の1045万8000件となり、2か月連続の減少だったが市場予想の1000万件を上回り堅調な水準を維持した。10月分については1051万2000件で速報の1033万4000件から上方修正された。
米サプライ管理協会(ISM)による12月米製造業景況指数は48.4で11月から0.6%低下して市場予想の48.5を若干下回った。好不況の分岐点である50を2か月連続で割り込んでパンデミック発生後だった2020年5月の43.5以来2年7か月振りの低水準となった。しかし雇用指数は11月の48.4から51.4へと改善しており、JOLTSと合わせて労働市場がしっかりしていることを示した。これらはドル買い要因とされた。

【米長期債利回りは続落】

1月4日の米長期債利回りは総じて低下した。独仏のインフレ率が低下したことでECBの利上げペース減速感が強まり独10年債利回りは1月2日から3営業日の大幅低下となり、米長期債利回りも1月3日からの続落となった。ミネアポリス連銀総裁のタカ派発言でやや上昇する場面もあったもののFOMC議事録に対してはサプライズ無しとして反応は鈍かった。

米10年債利回りは前日比0.05%低下の3.69%で1月3日の年末比0.14%低下からの続落となり、30年債利回りも0.04%低下の3.80%で1月3日の0.13%低下から続落、2年債利回りは利上げ期間長期化を意識して低下幅は限定的だったものの0.01%低下の4.36%となり、1月3日の0.06%低下からの続落となった。
ドル円にとっては米長期債利回り低下はドル売り要因となり上値を抑えるものの、それ以上に2023年中の利下げはないとの見通しやミネアポリス連銀総裁のタカ派発言及び労働統計の堅調さによるドル買いを優先した印象だ。
一方で1月4日のNYダウは前日比133.40ドル高と上昇、ナスダック総合指数は71.78ポイント高と上昇した。長期債利回り低下は株買い材料だったが、世界景気減速への不安感が株売り・債券買いへ流れやすくなることで上値が抑えられた印象だ。中国の感染爆発問題も重石だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は1月3日午前安値で129.50円へ一段安したところから2円近い反発を入れたために1月4日午前時点では1月3日午前安値を起点として戻りを試しているところとしたが、5日未明へ急伸した後も132円台を維持しているので5日の日中から6日にかけての間への上昇余地ありとみる。ただし、131円割れからは戻り一巡による下落再開とみて10日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では1月4日深夜の急伸で先行スパンを突破しているため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、急騰後の反動安も警戒されるので9本転換線割れが続く場合は反落注意とし、26本基準線割れからは下げ再開とみて先行スパンからの転落を回避できるかどうか試すのではないかとみる。

60分足の相対力指数は1月4日深夜の急伸で70ポイント台に到達した後は伸びずにやや下げている。50ポイント以上での推移中は上昇再開余地ありとするが、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は下げ再開を警戒し、50ポイント割れからは30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、131.50円を下値支持線、132.71円を上値抵抗線とする。
(2)132円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、132.71円超えからは133円台前半への上昇を想定する。133.35円以上は反落警戒とするが、131.75円以上を維持しての推移なら6日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)131.75円割れを弱気転換注意とし、131.50円割れからは下げ再開とみて130円台後半への下落を想定する。130.70円以下は反騰注意とするが、131.50円を割り込んでの推移なら6日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

1/5(木)
10:45 (中) 12月 財新サービス業PMI (11月 46.7、予想 46.8)
14:00 (日) 12月 消費者態度指数・一般世帯 (11月 28.6、予想 28.1)
16:00 (独) 11月 貿易収支 (10月 69億ユーロ、予想 75億ユーロ)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI改定値 (速報 50.0、予想 50.0)
19:00 (欧) 11月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (10月 -2.9%、予想 -0.8%)
19:00 (欧) 11月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (10月 30.8%、予想 27.5%)
22:15 (米) 12月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (11月 12.7万人、予想 15.0万人)

22:30 (米) 11月 貿易収支 (10月 -782億ドル、予想 -730億ドル)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 22.5万件、予想 22.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 171.0万人、予想 170.8万人)
23:20 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、イベント挨拶
23:45 (米) 12月 サービス業PMI改定値 (速報 44.4、予想 44.4)
25:00 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:20 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、イベント発言

1/6(金)
16:00 (独) 11月 製造業新規受注 前月比 (10月 0.8%、予想 -0.5%)
16:00 (独) 11月 製造業新規受注 前年同月比 (10月 -3.2%、予想 -5.8%)
16:00 (独) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -2.8%、予想 1.4%)
16:00 (独) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -6.6%、予想 -5.9%)
19:00 (欧) 12月 消費者信頼感・確定値 (速報 -22.2、予想 -22.2)
19:00 (欧) 12月 消費者物価指数(HICP)速報値 前年同月比 (11月 10.1%、予想 9.5%)
19:00 (欧) 12月 HICPコア指数速報値 前年同月比 (11月 5.0%、予想 5.0%)
19:00 (欧) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -1.8%、予想 0.5%)

19:00 (欧) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -2.7%、予想 -3.1%)
19:00 (欧) 12月 経済信頼感 (11月 93.7、予想 94.5)
22:30 (米) 12月 非農業部門就業者数 前月比 (11月 26.3万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 12月 失業率 (11月 3.7%、予想 3.7%)
22:30 (米) 12月 平均時給 前月比 (11月 0.6%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 平均時給 前年同月比 (11月 5.1%、予想 5.0%)
24:00 (米) 11月 製造業新規受注 前月比 (10月 1.0%、予想 -0.9%)
24:00 (米) 12月 ISM非製造業景況指数 (11月 56.5、予想 55.0)
25:15 (欧) レーンECB理事、講演
25:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
26:15 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
29:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加

注:ポイント要約は編集部

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