ドル円見通し 日銀ショックによる暴落一服だが戻りは勢いに欠ける(22/12/22)

ドル円は日銀ショックによる大暴落一服で21日未明安値から21日深夜高値132.52円まで2円近い戻りを入れたが132.50円前後の水準では上値が重くなっている。

ドル円見通し 日銀ショックによる暴落一服だが戻りは勢いに欠ける(22/12/22)

日銀ショックによる暴落一服だが戻りは勢いに欠ける

〇ドル円、21日未明安値から21日深夜高値132.52まで2円近い戻りを入れるが上値重い
〇日銀ショックを材料消化しきれず、買い戻し一巡後にもう一段安へ下落に転じる懸念強まる
〇21日の米経済指標は強弱まちまち、深刻な不況入りへの懸念後退でNYダウが大幅上昇
〇米10年債利回りは前日比0.03%低下の3.66%、前日までの3連騰一服
〇131.50以上での推移中は上昇余地あり、132.70から133.20にかけての水準を試す上昇を想定
〇131.50割れからは21日未明安値130.56試し、底割れからは下落期入りと考える

【概況】

ドル円は日銀ショックによる大暴落一服で21日未明安値から21日深夜高値132.52円まで2円近い戻りを入れたが132.50円前後の水準では上値が重くなっている。
12月20日の日銀金融政策決定会合で長期金利を0%程度に誘導する許容変動幅が従来のプラスマイナス0.25%程度から0.50%程度へ拡大したことを事実上の利上げ効果を伴う政策変更と受け止めてドル円はサプライズ反応で大暴落となり、20日午前高値137.47円から21日未明安値130.56円まで6.91円の大幅下落となったが、130円の大台割れをひとまず回避して買い戻しに入っている。21日深夜への戻り幅は1.96円で直前の下げ幅6.91円に対して3分の1に満たない程度であり、12月2日安値133.60円を割り込んで一段安した状況改善にはまだ距離を残す。

【アベノミクスと連動した異次元緩和の終局? 材料消化には時間かかる】

日銀の金融政策修正を受けて日本国債売りとなり12月21日の新発10年債流通利回りは0.48%へ上昇、2015年7月以来凡そ7年半ぶりの高水準となった。日銀は20日の金融政策決定会合で長期金利のゼロ%誘導のための許容変動幅を従来の0.25%から0.50%へ引き上げたが、新発10年債利回りは20日に0.25%近辺だったところから0.46%へ上昇、21日も続伸となった。

日銀は旧安倍政権によるアベノミクスと同調した異次元金融緩和政策を継続してきたが、主要国が利上げに走る中でインフレ進行や急激な円安に対する批判と共に岸田政権によるアベノミクスの見直し姿勢を踏まえて今回の政策修正に踏み込んだのではないかとの見方がある。黒田総裁在任中の政策金利そのものの利上げは無いと思われるが、今回の長期金利変動幅引き上げに続き、黒田総裁退任までの間にさらに政策修正が進む可能性や、次期総裁による大胆な政策転換もあり得るとの警戒感が強まっている。このため、ドル円としては12月20日の大幅下落では日銀ショックを材料消化しきれず、暴落一服後の買い戻しが一巡した後にはもう一段安へと下落に転じる懸念が強まってきている印象だ。海外投資家も日銀の政策変更を踏まえた日本国債売りやクロス円における円買いを進めてゆく可能性もあるだろう。

【12月21日の米経済指標はまちまちだが深刻不況への懸念はやや後退】

12月21日夜の米経済指標は強弱まちまちで、11月の中古住宅販売が2年半ぶり低水準となり住宅市況の悪化を示したもののコンファレンス・ボードの12月消費者景気信頼感指数が8か月振り高水準へ改善したため深刻な不況入りへの懸念が後退してNYダウが大幅上昇、米長期債利回り低下に寄与した。
米調査会社コンファレンス・ボードによる12月消費者信頼感指数は108.3となり11月の101.4から大幅上昇して市場予想の101.0を上回り今年4月以来の高水準となった。現況指数は147.2で11月の138.3から改善、期待指数は82.4で11月の76.7から改善した。また現在の景気判断では「良い」が19.0%で11月の17.8%から上昇し、「悪い」は20.1%で11月の23.6%から低下した。6か月先の景気については「改善する」が20.4%で11月の19.8%から改善、「悪化する」は20.3%で11月の21.0%から低下した。

米不動産業者協会(NAR)による11月の中古住宅販売件数(年換算)は前月比7.7%減の409万戸で10か月連続の悪化となり市場予想の420万戸も下回って2020年5月以来の低水準となった。前年同月比では35.4%減、販売価格中央値は2.1%低下の37万700ドルとなったが前年同月比は3.5%の上昇で販売価格の連続上昇は129か月となり過去最長を更新している。

【米10年債利回りは前日までの3連騰一服、NYダウは20日からの2連騰】

12月21日の米10年債利回りは前日比0.03%低下の3.66%となり、前日までの3連騰が一服した。20日は日銀ショックによる日本債利回り上昇も引き金となったが、21日はその揺れ返しと週末の米PCEデフレーター発表を控えての調整で低下したと思われる。
30年債利回りは前日比0.01%低下の3.73%、2年債利回りは同0.04%低下の4.22%だった。
一方でNYダウは前日比526.74ドル高で20日からの2連騰、ナスダック総合指数も162.26ポイント高で20日の1.08ポイント高からの連騰となった。米長期債利回り低下と消費者信頼感指数の改善が株高に寄与したようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は日銀ショックによる暴落一服で12月21日未明安値から2円近い反発となったため、21日未明安値を目先の底として戻りを試しているところと思われる。直前の暴落規模と比較すれば勢いに欠ける戻りのため、131.50円以上を維持するうちは22日の日中から23日にかけての上昇余地ありとするが、131.50円割れからは下げ再開を警戒して21日未明安値試しとし、底割れからは新たな下落期入りとして23日深夜から28日未明にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では12月21日未明安値からの戻り継続で遅行スパンが好転したが先行スパンを下回った状況にとどまっている。遅行スパン好転中は上昇余地ありとし、先行スパンへ潜り込むところからはスパン上限を目指す可能性もあるとみるが、遅行スパンが悪化するところからは下げ再開とみて安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は12月20日午後から21日未明への一段安に際しては指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて戻しに入り50ポイント台に到達している。40ポイント以上での推移中は上昇継続性ありとみるが、40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、131.50円を下値支持線、132.70円を上値抵抗線とする。
(2)131.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、132.70円から133.20円にかけての水準を試す上昇を想定する。ただし133円前後は反落警戒水準とし、その後に132円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)131.50円割れからは21日未明安値130.56円試しとし、底割れからは130.00円、129.50円、129.00円を順次試す下落期入りと考える。

【当面の主な予定】

12/22(木)
14:00 (日) 10月 景気先行指数CI改定値 (速報 99.0)
16:00 (英) 7-9月期 経常収支 (4-6月 -338億ポンド、予想 -208億ポンド)
16:00 (英) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 2.4%、予想 2.4%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 2.9%、予想 2.9%)
22:30 (米) 7-9月期 個人消費支出(PCE)確定値 前期比年率 (改定値 1.7%、予想 1.7%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE確定値 前期比年率 (改定値 4.6%、予想 4.6%)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 22.2万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 167.1万人、予想 168.3万人)
24:00 (米) 11月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (10月 -0.8%、予想 -0.4%)
27:00 (米) 財務省5年インフレ指数連動債入札

12/23(金)
米国・債券市場はクリスマスに伴う短縮取引
08:30 (日) 11月 全国消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (10月 3.7%、予想 3.9%)
08:30 (日) 11月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (10月 3.6%、予想 3.7%)
08:30 (日) 11月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (10月 2.5%、予想 2.8%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(10月27-28日分)

22:30 (米) 11月 耐久財受注 前月比 (10月 1.0%、予想 -0.9%)
22:30 (米) 11月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (10月 0.5%、予想 0.0%)
22:30 (米) 11月 個人所得 前月比 (10月 0.7%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 個人消費支出(PCE) 前月比 (10月 0.8%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 PCEデフレーター 前年同月比 (10月 6.0%、予想 5.5%)
22:30 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前月比 (10月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (10月 5.0%、予想 4.6%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 59.1、予想 59.1)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数・年率換算 (10月 63.2万件、予想 60.0万件)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数 前月比 (10月 7.5%、予想 -5.1%)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る