下げ足速いが、リスクは依然ドル安方向
〇先週のドル円、週央に週間高値139.89をつけた後急速な右肩下がり
〇週末には週間安値133.63まで6円以上も下落、週末NYは134円台を回復
〇パウエルFRB議長が「早ければ12月にも利上げペースを減速させる可能性」を示唆したことが嫌気される
〇今週は11月生産者物価指数や12月ミシガン大消費者信頼感指数速報値などの米経済指標に注目
〇今週のドル/円予想レンジは、132.00-137.00
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルが大幅安。週末には一時133円台、8月16日以来となる安値を示現している。
前週末は、中国上海で「ゼロコロナ」政策に反対する動きとされる、異例の「習氏退陣要求デモ」が発生し思惑を呼ぶ。一方、今月中旬に撤退したウクライナ南部ヘルソン州に対して、ロシア軍が再び激しい攻撃を加えたとも伝えられ、こちらも別途話題に。
そうした状況下、ドル/円は139.30-35円で寄り付いたのち、しばらくはドルの強保ち合いをたどるも上値は重い。137.50-139.50円といったレンジ取引をたどるなか、週央に週間高値の139.89円を示現している。しかし、以降は急速な右肩下がり。途中ストップロスを巻き込みつつ下げ足を早めると、週末には週間安値の133.63円まで6円以上も下落。そののちドルは小反発に転じ、週末NYは134円台を回復した134.30円レベルで取引を終え越週となった。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「中国情勢」と「米ファンダメンタルズと金融政策」について。
前者は、中国政府の発表で同国本土における新型コロナ感染者が3万人を超えるような状況が続くなか、前述した異例の「習氏退陣要求デモ」が各地で発生。金融市場以外でも思惑を呼ぶ。米英や国連などからデモを支持するコメントや、中国に対して市民を拘束しないよう自制を求める発言も聞かれた反面、中国当局は警察官の大量配備などの対応により当局がデモの鎮圧に動いていることが、そこここで確認されると、こちらも別の意味で問題に。ただ、そののちは中国政府が一部地域で検査要件や隔離基準を緩和したこともあり、デモは自主的に鎮静化していたようだ。なお、それとは別に米国防総省が「中国は35年までに核弾頭1500発所有の可能性」などとした報告書を発表したことも思惑を呼ぶ。
対して後者は、先週は週間を通し、発表された米経済指標と要人発言が市場の波乱要因になっていた。11月30日に発表された7-9月期の米GDP統計改定値が予想を上回ったことを市場は好感。ドル買いで反応するも、そののち伝えられたパウエルFRB議長が「早ければ12月にも利上げペースを減速させる可能性」を示唆したことが嫌気され、流れが急反転している。週明け28日にはセントルイス連銀総裁が「インフレを抑えるには金利を引き上げる必要がある」、NY連銀総裁も「2023年も政策を維持」−−などと強気コメントを発しただけに、多くの市場筋にとっては冷や水を浴びせられた格好だ。その後も、発表された11月のISM製造業景況指数が予想を下回るとともに、分岐点とされる「50」を割り込んだ反面、週末に発表された注目の米雇用統計は好数字になるなど、指標発表のたびに市場は振り回されていた。
<< 今週の見通し >>
ドル/円相場は、8月16日以来のドル安値圏まで沈んでいる。ドル安進行スピードの速さなどは気掛かりだがリスクは引き続き下向きか。足もとのドル下落第二波は起点が142.25円で、およそ2週間で8円を超える下落であり、かなり大きな下げ幅になるものの高値151.94円を起点にした137.67円まで下落した第一波は、約3週間強のあいだに14円も下落していた。それからすると、ドルの下げ余地はまだ残されているのかもしれない。今週さらなる下値模索の動きにも要注意だ。
12月13-14日の米FOMCについて市場筋が関心を寄せるなか、見通しは大きく二分されている。確かに「0.75%の利上げ」見通しなど強気一辺倒の見方は後退しているが、それでも米インフレは高進しており、来年1月以降も利上げが続くと予想する声もいまだ多いようだ。たとえばNY連銀総裁は、1日にも「インフレ率を2%に低下させるには数年かかる」、「過度に高い物価上昇圧力を抑えるためには追加利上げが必要」などと述べ、思惑を後押ししていた。いずれにしても、米金利情勢に今週も右往左往する展開か。
テクニカルに見た場合、ドル/円の一目均衡表の先行帯の雲の下限をはじめ、下方向のテクニカルポイントを次々下回り、ついには133円台へ。ちなみに先週末のNYクローズ、134.30円レベルは移動平均の200日(134円半ば)もわずかに下回っている。まだ完全に下回ったとは言えないが、今後200日線が抵抗として寄与するようだと、逆にさらなるドル安が進展しても不思議はなさそうだ。まずは200日線をめぐる攻防に注意を払いたい。
今週は、11月の生産者物価指数や12月のミシガン大消費者信頼感指数速報値などの米経済指標の発表が予定されている。前述したように、先週は雇用統計など発表される米指標が相場の波乱要因となることが多かっただけに、今週も一応要注意だ。なお、米FOMCを前にした「ブラックアウト期間」に入ることで、FRB関係者らの発言機会は週間を通し、とくに予定はされていない。
そんな今週のドル/円予想レンジは、132.00-137.00円。ドル高・円安については、前述した200日線をめぐる攻防にまずは注目。超えれば135円そして137円などがターゲットに。
対してドル安・円高方向は、先週安値の133.63円が最初のサポートで、下回ると8月11日安値の131.74円が意識されかねない。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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