トルコリラ円見通し 米長期債利回り低下と円高続き10月21日以降の安値を更新
〇トルコリラ円、ドル円に同調する展開で下落基調、12/2早朝安値7.25へ大幅続落
〇今晩は米雇用統計発表、結果次第ではドル安継続でドル円とトルコリラ円も続落しやすい状況か
〇対ドル、12/1は18.63から18.64を中心としたレンジ、一時的に18.66へ下落し18.59近辺では売られる
〇ドル全面安への反応鈍く、中長期的なリラ安基調は変わらず、18.63近辺での安値圏持ち合い
〇イスタンブール製造業PMIは3か月連続で低下
〇7.30を下回るうちは一段安警戒とし、7.23割れからは7.20前後への下落を想定する
〇7.30超えからは急落に対する修正高局面として、7.33前後試しを想定する
【概況】
トルコリラ円の12月1日は7.42円から7.25円の取引レンジ、2日早朝の終値は7.26円で前日終値の7.41円から0.15円の円高リラ安だった。
ドル円と同調した動きを続けているが、ドル円が11月30日夜の米GDP改定値発表後の上昇で140円に迫ったところからパウエル米FRB議長講演のハト派的な内容をきっかけに急落に転じたことでトルコリラ円は11月30日夜高値7.51円から12月1日早朝安値7.39円へ急落した。
ドル円の下落は12月1日の日中も続き、夕刻には136円を割り込み12月2日早朝には135円を試すところまで続落したが、トルコリラ円も円高に圧される展開で12月2日早朝安値7.25円へ大幅続落した。2日午前序盤にはさらに安値を切り下げている。
12月1日未明のパウエル米FRB議長講演で12月FOMCで利上げペース減速を示唆したことで米長期債利回りが大幅に低下したが、1日夜も米個人消費支出(PCE)デフレーターの伸びが鈍化したことで米長期債利回りは2日連続での大幅低下となりユーロやポンドが急伸、ドル円も8月半ば以来となる135円台まで大幅続落した。今晩は米雇用統計もあるが、利上げペースを維持すべきとするようなサプライズ的な強い数字にならなければドル安継続でドル円とトルコリラ円も続落しやすい状況にあると思われる。
【ドル/トルコリラはドル安への反応鈍く18.63リラ近辺での安値圏持ち合い】
ドル/トルコリラの12月1日は18.66リラから18.59リラの取引レンジ、2日早朝の終値は18.63リラで前日終値の18.59リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。
為替市場は12月1日未明のパウエル米FRB議長講演がハト派的な内容だったとしてドル全面安の様相となり、ドル/トルコリラも12月1日朝にかけてはドル安リラ高の動きが見られたものの、中長期的なリラ安基調は変わらず、トルコ中銀によるリラ安抑制の動きにより18.60リラ台の安値は買い戻される展開を続けつつも史上最安値更新を日々伺う展開で推移している。
日足で見ればほぼ横這いの推移が続いている状況ではあるが、持ち合い相場の中心値は徐々に切り下がってきており、12月1日は18.63リラ前後から18.64リラ前後のレンジを中心に一時的に18.66リラへ下落して18.59リラ近辺では売られる展開だった。
12月1日夜発表の週次外貨準備高は11月25日時点のグロスで797.7億ドルとなり前週の800.3億ドルから若干減少したが、ネットでは195.1億ドルとなり前週の187.5億ドルから増加した。
【イスタンブール製造業PMIは3か月連続低下】
12月1日夕刻に発表された11月のイスタンブール製造業PMIは45.7となり10月の46.4を下回った。3か月連続の低下となり、2021年8月につけた54.1以降の最低を3か月連続で更新した。
前日はトルコの7-9月期GDPの発表があり前期比が0.1%減とマイナスに転落し、前年同期比も4-6月期の7.7%増から3.9%増へと大幅に鈍化したが、GDPの推移とイスタンブール製造業PMIの推移は概ね同調しており、製造業PMIが10月と11月に連続で低下していることは、10-12月期のGDP伸び率も7-9月期からさらに低下する可能性が高いという印象をもたらす。
主要国の金融引き締めによる景気減速、ウクライナ戦争とロシア制裁の長期化による欧州景気の鈍化、中国の感染拡大と繰り返される規制強化などが世界全体の成長と需要を鈍化させており、トルコの製造業及び輸出にとっての環境は悪化しており、リラ安を武器とした輸出が伸びないと製造業も低迷してトルコの成長全般が低迷する負の連鎖をもたらしかねない。
【10月21日高値からの三段下げ】
トルコリラ円はドル円と一蓮托生の動きを続けているが、ドル円は10月21日高値151.94円を起点として10月27日安値145.10円までを一段目の下げとし、145円を下値支持線とした三角持ち合いを形成していたところからの下放れで11月15日安値137.67円へ下落し、いったん11月21日高値142.25円まで戻したところから底割れに至り三段下げの三段目に入った。
トルコリラ円も10月21日高値8.17円を起点として10月27日安値7.77円へ下落してから三角持ち合いを形成し、11月10日夜の米CPI発表をきっかけとした急落で11月15日安値7.40円へ下落し、いったん戻したところから底割れに至り三段下げの三段目に入っている印象だ。
日足チャート上の下値支持線となる目安の安値は8月2日安値7.27円(ベンダーによっては7.25円や7.22円等もある)だったが既に7.24円近辺まで安値を切り下げているのでトルコリラ円としての市場最安値である昨年12月20日安値6.02円(ベンダーによっては6.17円等もある)などの6円台序盤試しへ向かう可能性も懸念される。仮にドル円が2021年1月底を起点とした歴史的大上昇を終了して大規模調整安の時間帯に入っているとすれば、トルコリラ円も史上最安値を試す下落期に入っているとみるべき状況かもしれない。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月28日夕安値を頭、24日夜と29日夜の両安値を両肩とする逆三尊型の底打ちにより上昇していたが、11月30日深夜高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りしている。安値形成期は12月2日夜から6日夜にかけての間と想定されるのでまだ一段安警戒とし、強気転換には安値から0.50円以上の反騰が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では11月30日深夜からの急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落し、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん戻りを試すとみるが、先行スパンからの転落中は遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。強気転換は両スパンそろっての好転が必要と思われる。
60分足の相対力指数は12月1日夕刻の一段安から20ポイント台での推移が続いている、40ポイントを下回るうちは指数が横ばいを続けながら安値を更新する可能性があると注意し、40ポイント超えからは戻りを試す流れとみて50ポイント台への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.23円を下値支持線、7.30円を上値抵抗線とする。
(2)7.30円を下回るうちは一段安警戒とし、7.23円割れからは7.20円前後への下落を想定する。下げ足が速まる場合は7.10円台中盤(7.17円から7.03円)へ下値目途を引き下げる。7.30円以下での推移か直前安値から0.50円を超える反騰が見られないうちは週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)7.30円手前では戻り売りにつかまりやすいところとみてその後に7.25円を割り込むところからは下げ再開とみる。7.30円超えからは急落に対する修正高局面として7.33円前後試しを想定する。
【当面の主な予定】
12月5日
16:00 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 3.54%、予想 3.0%)
16:00 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 85.51%、予想 84.65%)
16:00 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 7.83%)
16:00 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 157.69%)
12月7日
23:30 11月 財務省現金残高 前月比 (10月 -722億リラ)
12月8日
20:30 週次 外貨準備高 12/2時点 グロス (11/25時点 797.7億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12/2時点 ネット (11/25時点 195.1億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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