ドル円見通し FRB議長講演からのドル全面安続き10月21日以降の安値更新
〇ドル円、12/1夕刻136円を割り込み12/2早朝135円台序盤へ続落、米FRB議長講演からのドル下落継続
〇ユーロ・ポンド・豪ドルも対ドルで続伸、ドル全面安の様相
〇米PCEデフレーターの伸びは鈍化、12月FOMCでの利上げペースの鈍化に寄与する内容
〇米長期債利回りは前日に続き大幅低下、NYダウは反落
〇136.50以下での推移中は、134.70割れから134円前後を試す下落を想定する
〇136.50超えからは、137円台序盤への上昇を想定する
【概況】
ドル円は12月1日未明のパウエル米FRB議長講演をきっかけとしたドル全面安による下落を継続、12月1日夕刻には136円を割り込み、2日早朝には135円台序盤へ続落している。
11月30日夜の米7-9月期GDP改定値が速報値から上昇修正されたことでいったんはドル高となり、30日深夜に139.89円へ上昇していたが、パウエル米FRB議長講演内容が市場予想よりもハト派的だったことで次回FOMCでの利上げペース減速感が強まり米長期債利回りが大幅低下、ドル全面安となり12月1日早朝に137.64円まで急落した。東京時間もこの流れは続き、2日夜の米個人消費支出デフレーターの伸びも鈍化したことで米長期債利回り低下、ドル安が継続し8月18日以来の135円台序盤の水準となった。
ユーロドルは1日深夜に1.0533ドルへ続伸して9月28日安値0.9536ドル以降の高値を更新、ポンドドルも9月26日の史上最安値1.0421ドル以降の高値を1.2307ドルまで伸ばし、豪ドル米ドルも10月13日安値0.6170ドル以降の高値を0.6841ドルまで伸ばしており、ドル全面安の様相となっている。
【米PCEデフレーターの伸びは鈍化】
12月1日夜に米商務省が発表した10月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比6.0%上昇となり、市場予想と一致したが9月の6.3%から2か月振りに減速した。変動の激しいエネルギー・食品を除いたコア指数は前月比0.2%上昇だったが市場予想の0.3%及び9月の0.5%を下回り、前年同月比は5.0%上昇で市場予想と一致したが9月の5.2%上昇からは鈍化した。
依然としてFRBが掲げる物価目標の2%を大幅に上回った状況にあり、物品の上昇が鈍化しているもののサービス部門の上昇はまだ鈍化せずにいるが、パウエルFRB議長が前日の講演で述べた通りの水準だったため、12月FOMCでの利上げペースの鈍化に寄与する内容だった。
米労働省による新規失業保険申請は11月26日までの週間で前週比1万6000件減の22万5000件となり、2週ぶりの改善で市場予想の23万5000件を下回った。また失業保険受給者総数は11月19日までの週間で160万8000人となり、前週から5万7000人増加して市場予想の157万3000人を上回った。
米サプライ管理協会(ISM)による11月の製造業景況指数は49.0となり、市場予想の49.8及び10月の50.2を下回った。またS&Pグローバルによる11月の製造業PMI確報値は47.7となり、速報の47.6から若干の上方修正となった。
失業保険申請件数やISM等の景況感が50を下回っていることは景気減速感を反映しており、米FRBの利上げペース減速に寄与する内容といえる。
【12月FOMCでの利下げペース減速支持発言続く】
米FRBのパウエル議長は11月30日の講演で「暫くは景気抑制的な水準で政策を据え置く必要がある」、「歴史は時期尚早な金融緩和策を警告している」と述べて早期の利下げについて否定的な見方を示したものの、「これまで実施してきた急激な金融引き締めの効果はまだ経済に浸透していないため早ければ12月の次回FOMCで利上げペースの縮小が妥当」と述べた。市場はタカ派的な発言を警戒していたものの想定よりもハト派の内容だったとしてドル全面安のきっかけとなった。
12月1日も米FRB高官らの発言が相次いだが、パウエル米FRB議長講演によるドル安の加速にブレーキを掛けるものではなかった。バーFRB副議長は「FRBは来年も利上げする必要がある」「金利の面でもっとやるべきことがある」としたものの12月13-14日の次回FOMCでは利上げペースを減速する可能性がある」と述べた。
ボウマンFRB理事は「利上げサイクルの影響を評価するために利上げペースを緩めるべきだが、インフレ水準はなお過度に高水準で推移しており、政策金利は当面十分に制約的である必要がある」と述べ、9月会合時点よりも自身の政策金利ピーク水準をわずかに上方修正する姿勢を示した。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は「今月の会合で何をするにしても、景気抑制に十分な水準に向けてまだ道半ばだ」「今後の利上げペースはデータ次第」とし、利下げペースの鈍化余地を示しつつも「2%の物価目標達成には数年掛かるが2025年までの達成を望んでいる」と若干釘を刺す発言を行った。
【米10年債利回りは引き続き大幅低下、NYダウは反落】
パウエル議長講演を受けて米長期債利回りは総じて大幅低下したが、12月1日も大幅な低下が続いた。
指標の10年債利回りは11月30日に前日比0.14%低下して3.61%となったが12月1日は0.11%低下で3.50%へとさらに水準を切り下げた。30年債利回りは11月30日に前日比0.07%低下の3.74%、12月1日は前日比0.14%低下で3.60%となった。利上げ動向に敏感な2年債利回りは11月30日に前日比0.17%低下の4.361%となったが、1日も0.08%低下で4.23%まで水準を切り下げている。
一方でNYダウは11月30日に前日比737.24ドル高の大幅上昇となったが1日は急騰後の調整も入り194.76ドル安と反落した。ナスダック総合指数は11月30日に484.22ポイント高の大幅上昇だったが1日も14.45ポイント高と小幅ながら続伸した。米FRBによる利上げペースの減速を好感していることと中国の感染規制緩和への期待感からNY原油が連騰していることも押し上げ要因となったようだが、為替市場としては株式市場の楽観がリスク選好感とドル安感を助長するものとなっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は11月28日夕安値で137.48円をつけた後を下げ渋って11月30日深夜に140円に迫ったところから急落したため、12月1日午前時点では11月28日からの戻り一巡による下落期入りとして12月6日夜にかけて安値試しを続けやすい局面とした。
12月2日早朝へさらに続落しており、今晩の米雇用統計内容次第ではさらに下げ足が速まる可能性もあると警戒するが、パウエル議長講演から雇用統計までの一連のイベント通過による買い戻しも入りやすいタイミングと注意し、137円に迫る反騰や直前安値から1.50円を超える反騰の場合は急落一服によるリバウンド期入りを想定する。
60分足の一目均衡表では、11月30日深夜からの急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパンが好転するところからは戻りを試すとみるが、先行スパンから転落した状況での推移中は遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。強気転換には先行スパンを上抜き返す規模の反騰が必要と思われる。
60分足の相対力指数は12月1日夕刻と2日早朝に20ポイント近辺を試しており反騰の兆しが見られない。相場が一段安しても指数が低位で横ばい推移なら売られ過ぎの反動も出やすいところと注意し、40ポイント以下での推移中は一段安警戒とするが、40ポイント超えからはいったん戻しに入る可能性に注意しつつ50ポイント台への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、134.70円を下値支持線、136.50円を上値抵抗線とする。
(2)136.50円以下での推移中は134.70円割れから134円前後を試す下落を想定する。下げ足が速まる場合は133円台中盤(133.70円から133.30円)へ下値目途を引き下げる。136円以下での推移か直前安値から1.50円を超える反騰が見られないうちは週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)136.50円超えからは137円台序盤への上昇を想定するが、一時的な反騰後に再び136円を割り込むところからは下げ再開とみる。
【当面の主な予定】
12/2(金)
10:30 (日) 黒田日銀総裁、フォーラムで挨拶
11:40 (欧) ラガルドECB総裁、パネル討論会
16:00 (独) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 -0.9%、予想 -1.7%)
16:00 (独) 10月 輸入物価指数 前年同月比 (9月 29.8%、予想 23.3%)
16:00 (独) 10月 貿易収支 (9月 37億ユーロ、予想 52億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (9月 1.6%、予想 -2.0%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (9月 41.9%、予想 31.5%)
21:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
22:30 (米) 11月 非農業部門就業者数 前月比 (10月 26.1万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 11月 失業率 (10月 3.7%、予想 3.7%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前月比 (10月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前年同月比 (10月 4.7%、予想 4.6%)
24:15 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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