米CPIショックによる大幅下落一服だが、上値重く切り返しに入れず
〇ドル円、16日午後に140円台に戻すも維持できず、16日夜以降は概ね139円台の揉み合いで推移
〇16日発表の10月米小売売上高は前月比1.3%増、10月鉱工業生産指数は前月比0.1%の低下に
〇ウォラーFRB理事「今年10-12月期の成長は弱く2023年も続く」と景気減速への認識示す
〇16日の米10年債利回りは前日比0.08%低下で3.69%、大幅な低下継続
〇140円以下での推移中は一段安警戒、138.80割れからは15日夜安値137.67試し
〇140円以上での推移が続いても14日夜高値140.79を超えないうちは戻り一巡後の下落再開に注意
【概況】
ドル円は11月15日夜の米PPI発表直後に137.67円の安値を付けて10月21日高値151.94円以降の最安値としたところから16日午後に140.29円まで戻したものの140円台を維持できず、16日夜以降は概ね139円台の揉み合いで推移した。
11月10日夜の米CPI上昇率が市場予想を下回ったことで米FRBによる超ハイペースでの利上げが減速するとしてドル全面安となり、ドル円は146円台序盤から11日午前安値140.19円へ急落し、12日未明には138.45円まで一段安となった。15日夜の米PPI上昇率も予想を下回ったことで137円台へ一段安したところでは当面のドル売り材料一巡として早々に買い戻されたものの、14日夜の戻り高値140.79円から戻り高値切り下がりにとどまっており、反騰入りへのきっかけをつかめずにいる。
ロシア製ミサイルがポーランド領内に着弾したとの報道から有事拡大リスクが強まる場面もあったがウクライナ側の防空ミサイルの落下とされて有事リスク感は後退している。
11月15日の米経済指標はまちまちで決め手に欠いたが、米10年債や30年債利回りが大幅に低下しており、ドル円の上値を抑えている。
【米小売は堅調だが鉱工業生産は低迷】
11月16日に米商務省が発表した10月の小売売上高は前月比1.3%増となり9月の0.0%及び市場予想の1.0%を上回り、自動車を除いた前月比も1.3%増で9月の0.1%及び市場予想の0.5%を上回った。小売好調ということで米FRBの利上げ継続感が強まるとして一時的にはドル高反応も見られたものの限定的な動きだった。
米FRBによる10月の鉱工業生産指数は前月比0.1%低となり、2か月ぶりのマイナスで市場予想の0.1%上昇を下回った。9月も速報の0.4%上昇から0.1%上昇へと下方修正された。設備稼働率は79.9%で9月の80.1%及び市場予想の80.4%を下回った。これらは景気減速感を示すものと受け止められた。
米商務省による9月の企業在庫は前月比0.4%増で市場予想の0.5%増を下回り8月の0.8%増から低下した。
米労働省による10月の輸入物価は前月比0.2%低下となり市場予想の0.4%低下を上回ったが、9月の1.1%低下に続いてマイナスの伸びとなった。輸出物価指数は前月比0.3%低下で市場予想の0.4%低下を上回ったが9月に1.5%低下に続いてマイナスの伸びとなった。
【利上げペースは減速しても利上げは継続】
サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は16日に利上げのピーク水準について「年4.75〜5.25%が妥当」との見方を示し、同氏が以前に示していた「年4.50〜5.00%」から引き上げた。同総裁は「利上げ停止は議論の一部ですらなく利上げペースの減速だ」と述べ、「金融引き締めをやり過ぎず、または少なすぎないようにすることが重要」と述べた。
ウォラーFRB理事は12月のFOMCで利上げ幅を0.5%に縮小することが「より妥当」と述べ、利上げのピーク水準は今後のインフレ指標次第とし、「次の個人消費支出(PCE)物価指数や雇用統計を確認するまで判断しない」と述べた。また「0.50%利上げでも大幅な利上げ」であり、「今年10-12月期の成長は弱く、2023年も続く」として景気減速への認識も示した。
12月のFOMCについては0.50%利上げで落ち着くのではないかと市場も見ているが、問題は年明け以降の利上げペースがさらに鈍化するのかどうかという点とインフレ指標が現状よりも一層目に見える形で低下するのかどうかということに尽きる。ただ、長期債利回り動向をみると2年債利回りは高止まりの様相がある一方で10年債や30年債の利回りは大幅に低下しており、利上げピークを見据えた動きともいえる。
【米10年債利回りは大幅低下、ダウは上昇一服感】
11月16日の米10年債利回りは前日比0.08%低下して3.69%となった。米小売売上高発表直後に一時的に3.79%へ上昇したところから失速している。11月10日の米CPI発表を受けて前日比0.28%低下となり1日の下げ幅としては2009円3月以来最大となり、祝日休場明けの14日に低下一服で0.04%上昇となったものの15日に前日比0.09%低下し、16日も大幅な低下継続となった。
30年債利回りは前日比0.13%低下して3.84%となった。11月10日に0.22%の大幅低下となり14日も0.02%低下、15日に0.07%低下となり16日もさらに大幅な低下となった。
利上げ水準に比較的敏感な2年債利回りは前日比0.01%上昇の4.36%で下げ渋った。11月10日に0.25%の大幅低下となり14日に0.05%上昇と戻してから15日に0.04%低下としていたが、16日は10年債利回りとの逆イールドが拡大する中で下げ渋った。
一方でNYダウは前日比39.09ドル安と小幅下落した。10月13日から反騰継続で34000ドルに迫っているものの14日以降は上げ渋りとなっている。ナスダック総合指数は前日比174.75ポイント安で15日の162.19ポイント高による上昇を解消している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は11月10日夜からの暴落一服で11月12日未明安値138.45円を目先の底として戻したものの11月14日夜高値から再び下落に転じて15日夜に137.67円まで一段安となった。その後は戻したものの140円台を維持できずに139円台中心の揉み合いとなっているのでまだ17日の日中から19日未明にかけての間へ安値試しを続ける可能性を残していると思われる。強気転換には14日夜高値を上抜き返す反騰が必要であり、140円以下での推移中は一段安余地ありとし、138円割れからは下げ再開に入るとみる。
60分足の一目均衡表では、139円台中心で横ばい推移のため遅行スパンは悪化しやすく先行スパンからも転落しやすい位置にある。遅行スパン悪化からは下げ再開を警戒して安値試し優先とし、16日午後高値140.29円を超えるところからは両スパンそろっての好転による上昇感が強まるとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は15日夜からの反発で60ポイントまで戻した後は50ポイントを挟んで横這い推移となっている。55ポイント超えからは60ポイント台前半を試す上昇へ進む可能性があるとみるが、40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.80円を下値支持線、11月16日午後高値140.29円を上値抵抗線とする。
(2)140円以下での推移中は一段安警戒とし、138.80円割れからは15日夜安値137.67円試しとし、底割れからは136円前後への下落を想定する。
(3)140.29円超えからは11月14日夜高値140.79円試しとし、その後も140円以上での推移が続く場合は141円台への上昇へ進む可能性があるとみるが、14日夜高値を超えないうちは戻り一巡後の下落再開に注意する。
【当面の主な予定】
11/17(木)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前月比 (8月 -0.6%)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前年同月比 (8月 2.3%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価指数(HICP)改定値 前年同月比 (速報 10.7%、予想 10.7%)
19:00 (欧) 10月 HICPコア指数改定値 前年同月比 (速報 5.0%、予想 5.0%)
21:30 (英) ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.5万件、予想 22.2万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 149.3万人、予想 150.0万人)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算 (9月 143.9万件、予想 141.0万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 -8.1%、予想 -2.0%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算 (9月 156.4万件、予想 151.4万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 1.4%、予想 -3.2%)
22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 -8.7、予想 -6.2)
23:15 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
23:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
23:40 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
24:40 (米) ジェファーソンFRB理事、パネル討論会
27:45 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、質疑応答
11/18(金)
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(19日まで)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (9月 3.0%、予想 3.7%)
08:30 (日) 10月 CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (9月 3.0%、予想 3.5%)
08:30 (日) 10月 CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (9月 1.8%、予想 2.4%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -47、予想 -46)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -1.4%、予想 0.5%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -6.9%、予想 -6.5%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 -1.5%、予想 0.6%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (9月 -6.2%、予想 -6.8%)
17:30 (欧) ラガルドECB)総裁、講演
22:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
22:15 (英) マン英中銀委員、講演
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数・年率換算 (9月 471万件、予想 436万件)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数 前月比 (9月 -1.5%、予想 -7.4%)
24:00 (米) 10月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (9月 -0.4%、予想 -0.4%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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