ドル円、振れを伴いつつも方向感に欠ける展開。リスクは依然ダウンサイドか
〇ドル円、海外時間は139円台半ばを中心に振れを伴いつつも方向感に欠ける動き
〇東京時間に乱高下の後、FRB関係者のハト派発言と米金利低下に140円割れ
〇ユーロドル、地政学リスク後退に1.04台を回復するもECB関係者のハト派発言に再び1.04割れ
〇ドル円、情報より複数のレジスタンス垂れ下がり、複数の売りサインも点灯中、地合い弱い
〇ファンダメンタルズも米国のインフレピークアウト期待が高まる等ドル円下落材料増加
〇引き続きドル円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇本日の予想レンジ:138.50ー140.25
海外時間のレビュー
16日(水)のドル円相場は振れを伴いつつも方向感に欠ける展開。(1)ポーランド外務省によるロシアのロケット弾が着弾したとの正式発表や、(2)上記を背景とした地政学的リスクの上昇懸念(リスク回避のクロス円売り→ドル円連れ安)が重石となり、アジア時間朝方にかけて、安値138.73まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(3)バイデン米大統領による「ポーランドへの着弾は軌道を見る限りロシアから発射された可能性は低い」との発言や、(4)上記を背景とした地政学的リスクの後退期待(クロス円反発→ドル円連れ高)、(5)心理的節目140.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、日本時間13時過ぎに、高値140.29まで急伸しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(6)トランプ前大統領による2024年の米大統領選への正式出馬表明や、(7)カンザスシティ連銀ジョージ総裁による「来年は利上げペース緩和が理に適う」とのハト派的な発言、(8)ウォラーFRB理事による「最近の指標を踏まえれば、12月会合では50bpの利上げがより妥当」とのハト派的な発言、(9)米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは10/5以来の低水準となる3.69%へ急低下)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間11/17午前5時00分現在)では、139.40前後で推移しております。尚、昨日発表された米経済指標は、米10月小売売上高(結果+1.3%、予想+1.0%、前回±0.0%)および、米10月輸入物価指数(結果▲0.2%、予想▲0.4%、前回▲1.2%)が市場予想を上回る一方、米10月鉱工業生産(結果▲0.1%、予想0.2%、前回0.1%)が市場予想を下回るなど、強弱まちまちの結果となりました。
16日(水)のユーロドル相場は振れを伴いつつも方向感に欠ける展開。(1)ポーランド外務省によるロシアのロケット弾が着弾したとの正式発表や、(2)上記を背景とした地政学的リスクの上昇懸念(有事のドル買い)が重石となり、アジア時間早朝に、安値1.0280まで急落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(3)バイデン米大統領による「ポーランドへの着弾は軌道を見る限りロシアから発射された可能性は低い」との発言や、(4)上記を背景とした地政学的リスクの後退期待(有事のドル買い後退→ユーロドルのショートカバー)、(5)米金利低下に伴うドル売り圧力、(6)デギンドスECB副総裁による「量的引き締め(QT)を開始することを支持」とのタカ派的な発言が支援材料となり、米国時間朝方にかけて、高値1.0437まで急伸しました。
もっとも、前日高値1.0481や200日移動平均線をバックに伸び悩むと、(7)フランス中銀ビルロワドガロ総裁による「今後の利上げはより柔軟かつ恐らく速度を落としたペースになる可能性がある」とのハト派的な発言や、(8)イタリア中銀ビスコ総裁による「制約的な政策を続ける必要があることは明らかだが、より積極的ではないアプローチを取るべきという理由が増えている」とのハト派的な発言、(9)スペイン中銀デコス総裁による「金利が到達しなければならない具体的な水準は経済データに完全依存」「時間とともに変化する可能性があるため不確実」とのハト派的な発言が重石となり、本稿執筆時点(日本時間11/17午前5時00分現在)では、1.0387前後まで値を崩す展開となっております。
本日の見通し
ドル円は直近安値圏での神経質な値動きが続いております(11/15米国時間に約2ヵ月半ぶり安値137.70まで急落→ショートカバー主導で11/16アジア時間に140.29まで急反発→11/16米国時間に139円台前半まで再び下落。ボラタイルで不安定な値動きが継続中)。上方より複数のレジスタンスラインが垂れ下がってくることや、強い売りシグナルを示唆するチャートパターン(弱気のバンドウォークやダウ理論の上昇トレンド終焉)が複数点灯していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱い(押し目買いでは無く、戻り売りのフェーズ)と判断できます。足元の相場水準を維持することができれば、ローソク足の一目均衡表雲下限割れを通じて、早ければ週内にも、強い売りシグナルを示唆する三役逆転が点灯するため、地合いは今後一段と悪化すると考えられます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米国でインフレのピークアウト期待が高まっていること(先週の逆CPIショックに続き、今週は逆PPIショックが発生)や、(2)上記を背景とした米利上げペースの鈍化期待(FRBは直近4会合連続で75bpの利上げを行ってきましたが、次回12月会合で50bpへ利上げ幅を落とし、更に来年2月会合では25bpへ利上げペースをもう一段落とすとの見方が市場コンセンサス)、(3)日米金利差縮小に伴う円キャリートレードの逆流リスクなど、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります(対主要通貨でドル売り圧力が強まる可能性大。9/28に約20年ぶり高水準となる114.745を記録した米ドル指数は11/15に105.155まで急落)。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、本日は米経済指標(米11月フィラデルフィア連銀景況指数、米10月住宅着工件数、米10月建設許可件数、米新規失業保険申請件数)および、米当局者発言(セントルイス連銀ブラード総裁講演、クリーブランド連銀メスター総裁講演、ジェファーソンFRB理事発言、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁発言)が複数予定されているため、米国時間帯のボラティリティ拡大に引き続き警戒が必要でしょう。
本日の予想レンジ:138.50ー140.25
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
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