ドル円見通し 米長期債利回り低下でドル安進行、10月21日夜の市場介入時安値に迫る(22/10/27)

ドル円は、27日未明に146.21円まで安値を切り下げて10月21日夜の市場介入による急落で付けた安値146.19円に迫った。

ドル円見通し 米長期債利回り低下でドル安進行、10月21日夜の市場介入時安値に迫る(22/10/27)

米長期債利回り低下でドル安進行、10月21日夜の市場介入時安値に迫る

〇ドル円、27日未明146.21まで安値切り下げ、10/21の市場介入による急落でつけた安値146.19に迫る
〇カナダ中銀、26日夜に主要政策金利を0.50%引き上げ、前回9月からは利上げペース鈍化
〇その他主要国の利上げペースも同様に鈍化の可能性、米FRBも12月FOMCで0.50%利上げにとどめるか
〇米経済指標の鈍化目立つ、緩やかな景気減速にとどまらずに不況入りしかねないとの懸念も
〇米長期債利回りは総じて低下、10年債利回りは前日比0.10%、30年債利回りは0.12%低下に
〇146円以下で安値更新続けば10/24午前急落時の安値145.61試し、底割れからは145円前後への下落想定
〇147.20を超えるところからは148円を目指す反騰を想定、147円台後半は売られやすいとみる

【概況】

ドル円は10月25日夕刻にかけて149円を挟んだ小動きを続けていたが、25日夜の米経済指標が予想を相次いで下回ったことをきっかけとしてドル安が進行したために25日深夜に147.51円へ下落、26日の日中は148円台を回復したものの148円台序盤にとどまって上値の重い状況となっていた。
10月26日夜は米新築住宅販売件数が予想を下回り、カナダ中銀が市場予想の0.75%利上げではなく0.50%利上げにとどめたことで米長期債利回りが一段と低下したためにユーロドルが1ユーロ1ドルのパリティ(等価)を1か月振りに回復するなどドル安が加速したためにドル円も一段安となり、27日未明には146.21円まで安値を切り下げて10月21日夜の市場介入による急落で付けた安値146.19円に迫った。

【カナダ中銀の利上げペース鈍化で米FRBの利上げペース鈍化も連想】

カナダ中銀は10月26日夜、主要政策金利である翌日物金利を0.50%引き上げて3.75%としたが、前回9月に0.75%の超大幅利上げを決定した後も0.75%利上げを継続するとの事前予想だったために利上げペースが鈍化したとの認識が広がった。
カナダ中銀のマックレム総裁は「インフレ圧力は続いており利上げを継続する」とした上で「金融引き締め局面は終わりに近づいている」とし、「金利上昇が経済やインフレに与える影響を注意深く検証していく」として過度の利上げによる景気後退リスクを踏まえて利上げペースを鈍化させたとの認識を示した。カナダ中銀による同国のGDP見通しは今年が3.25%だが2023年は1%を切る程度へと低下すると予想されており、利上げの終点を意識させることで景気後退への不安感を緩めたいという姿勢と思われる。

10月27日にはECB理事会があり市場の事前予想は0.75%の超大幅利上げ見込みとなっている。ECBは利上げ開始に出遅れておりインフレも米国やカナダと比較してかなり高進しているために0.75%利上げの可能性は高いと思われるが、その他主要国の利上げペースもカナダ同様に鈍化する可能性があり、それらの動向を踏まえつつ米FRBも11月1-2日のFOMCで0.75%利上げを決定した上で12月のFOMCでは0.50%利上げにとどめるのではないかとの見方が強まっており、現時点で12月に0.75%の利上げがあるとの予想は5割を切っているようだ。

【米経済指標の鈍化目立つ】

米商務省による9月の新築一戸建て住宅販売件数(年換算)は前月比10.9%減の60.3万戸で市場予想の58.5万戸は上回ったが、8月の前月24.7%増だった67.7万戸から大幅に鈍化した。利上げによる住宅ローン金利上昇で住宅価格が高騰していることで買い控えられた印象で、前年同月比は17.6%減だった。販売価格の中央値は前月比8.0%上昇の47万600ドルだった。
今週は10月24日の米S&Pグローバルによる10月製造業及び非製造業のPMIが揃って市場予想を大幅に下回り、10月25日発表のケースシラー住宅価格指数の伸びも鈍化、コンファレンスボードによる10月消費者信頼感指数も102.5となり9月の107.8及び市場予想の106.5を下回った。
米FRBのパウエル議長は「景気よりも物価抑制を最優先」としバイデン政権もガソリン価格高騰対策で米戦略石油備蓄在庫の追加放出を決定するなど、11月の中間選挙も踏まえて物価抑制を重視する政策をとってきたが、経済指標の鈍化により0.75%の超大幅利上げをいつまでも続けるという市場へのシグナルを落ち着かせないと緩やかな景気減速にとどまらずに不況入りしかねないとの懸念も強まってきている印象だ。

【NYダウは小幅4連騰だがナスダックは下落、米長期債利回りは大幅低下】

10月26日のNYダウは前日比2.37ドル高と小幅上昇で4連騰となったが、10月21日の748.97ドル高、24日の417.06ドル高、25日の337.12ドル高と続いた大幅連騰から勢いが低下した。ナスダック総合指数は228.13ポイント安で4日ぶりに反落した。
26日はマイクロソフトが7.7%安、グーグル親会社のアルファベットが9.1%安、アマゾンが4.1%安、フェイスブックのメタが5.6%安と下げが目立った。
一方で米長期債利回りは総じて低下した。指標の10年債利回りは前日比0.10%低下の4.00%で一時は3.99%まで低下した。30年債利回りは0.12%低下の4.14%、2年債利回りは0.07%低下の4.41%となった。いずれも先週までの大幅上昇に対する修正的な動きであり、今晩のECBや11月3日未明に声明発表のあるFOMCを控えて調整している印象だが、ドル円にとっては米長期債利回り低下による日米金利差縮小が円高圧力となっている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は10月24日午前序盤の一段安から切り返したものの24日に149円台前半へ戻した後は伸びず、25日に149円絡みの横ばい推移から一段安したため、26日午前時点では市場介入による急落後の買い戻し一巡で再び安値の落ち着きどころを探る動きに入っているとして26日夜から31日午前にかけての間への一段安余地ありとした。
10月27日未明へ続落し、午前序盤も安値を切り下げているのでまだ一段安を試しているところと思われる。強気転換は147.20円を超えるところからとし、その際は27日夕から31日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では、10月25日夜の下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とみるが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10月27日朝に20ポイント台序盤へ低下しており、25日夜安値からの一段安に際しては指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られないためまだ一段安余地ありとみる。相場が安値を更新する際に指数のボトムが下げ渋る展開に入れば反騰警戒とし、40ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先して50ポイント台への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月24日午前安値145.61円を下値支持線、147.00円を上値抵抗線とする。
(2)147円以下での推移中はもう一段安余地ありとし、146円以下で安値更新が続く場合は10月24日午前急落時の安値145.61円試しとし、底割れからは145円前後への下落を想定する。また直前安値から1円を超える反騰へ進めないうちは28日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)147円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、147.20円を超えるところからは148円を目指す反騰を想定する。147円台後半は売られやすいとみるが、147.20円を超えた後も147円台を維持しての推移なら28日も高値試しへ向かいやすいとみる。また直前安値から1円を超える反騰に入りその後も1円以上の戻りを維持する場合は目先の底を付けて反騰継続へ進みやすいと注意する。

【当面の主な予定】

10/27(木)
日銀・金融政策決定会合初日
15:00 (独) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -42.5、予想 -41.9)
21:15 (欧) ECB(欧州中銀) 政策金利 (現行 1.25%、予想 2.00%)
21:30 (米) 7-9月期 GDP速報値 前期比年率 (4-6月 -0.6%、予想 2.4%)
21:30 (米) 7-9月期 PCE(個人消費)速報値 前期比年率 (4-6月 2.0%、予想 1.0%)
21:30 (米) 7-9月期 コアPCE速報値 前期比年率 (4-6月 4.7%、予想 4.5%)
21:30 (米) 9月 耐久財受注 前月比 (8月 -0.2%、予想 0.6%)
21:30 (米) 9月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 23.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 138.5万人、予想 138.8万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、会見
24:30 (英) ウッズ英中銀副総裁、講演
26:00 (米) 財務省7年債入札

10/28(金)
昼 頃 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
昼 頃 (日) 日銀展望レポート
08:30 (日) 10月 東京都消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (9月 2.8%、予想 3.1%)
08:30 (日) 9月 失業率 (8月 2.5%、予想 2.5%)
09:30 (豪) 7-9月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (4-6月 1.4%)
09:30 (豪) 7-9月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (4-6月 5.6%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、会見
17:00 (独) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4-6月 0.1%、予想 -0.2%)
17:00 (独) 7-9月期 GDP速報値・季調前 前年同期比 (4-6月 1.8%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 10月 経済信頼感 (9月 93.7、予想 92.4)
18:00 (欧) 10月 消費者信頼感確定値 (速報 -27.6)
21:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (9月 1.9%、予想 0.6%)
21:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (9月 10.0%、予想 10.1%)

21:30 (米) 7-9月期 雇用コスト指数 前期比 (4-6月 1.3%、予想 1.2%)
21:30 (米) 9月 個人所得 前月比 (8月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 9月 PCE(個人消費支出) 前月比 (8月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 9月 PCEデフレーター 前年同月比 (8月 6.2%、予想 6.3%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前月比 (8月 0.6%、予想 0.5%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (8月 4.9%、予想 5.2%)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前月比 (8月 -2.0%、予想 -5.0%)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前年同月比 (8月 -22.5%)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 59.8、予想 59.7)

注:ポイント要約は編集部

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