ドル円見通し 147円手前へ続伸するも実弾介入無し、緊張感を伴いつつ高値を試す(22/10/13)

ドル円は、財務相や政府高官による口先介入的な円安けん制が見られたものの実弾介入の第二弾は見送られたために12日深夜には146.97円まで高値を切り上げた。

ドル円見通し 147円手前へ続伸するも実弾介入無し、緊張感を伴いつつ高値を試す(22/10/13)

147円手前へ続伸するも実弾介入無し、緊張感を伴いつつ高値を試す

〇ドル円は12日午前146円台に到達、9/22の24年ぶり円買い介入で急落する前の高値超える
〇口先介入的な円安けん制が見られるも実弾介入第二弾は見送られ12日深夜に146.97へ高値切り上げ
〇13日未明公開のFOMC議事録要旨、サプライズ感なかったが利上げ姿勢強調でドル高基調継続
〇G7財務相・中銀総裁会議開催、ドルの独歩高に対しG7としての明確で強い牽制はなし
〇146.35以上での推移中は上昇余地あり、147円超えからは147円台中盤試しとみる
〇口先介入にとどまって上昇が抑えられない場合は148円に迫る可能性もあるとみる
〇146.35割れからは修正安入りの可能性を警戒し146円前後試し、146円前後は買われやすい
〇実弾介入で急落なら145円台中盤へ下値目途引き下げ、大規模介入でなければバーゲンハント買いに注意

【概況】

ドル円は10月12日午前に146円台に到達して9月22日に24年ぶりとなる政府・日銀による円買い介入で急落する前の高値145.89円を超えたが、財務相や政府高官による口先介入的な円安けん制が見られたものの実弾介入の第二弾は見送られたために12日深夜には146.97円まで高値を切り上げた。
147円手前ではさすがに実弾介入警戒感もあって利益確定売り優勢となり、13日午前序盤には146円台中盤へ下げている。10月12日夜は米長期債利回りの連騰が一服したが、為替市場では英ポンドが戻したもののユーロや豪ドルが先週末以降の安値を更新している。米9月PPIも市場予想の高水準を維持し、13日未明に公開されたFOMC議事録要旨も内容にサプライズ感はなかったものの利上げ姿勢を強調するものでドル高基調は継続している印象だ。

【鈴木財務相、市場介入は水準ではなく動きで判断】

米ワシントンのG20財務相・中銀総裁会議出席で訪米中の鈴木財務相は「必要があれば必要な措置を取る」、「緊張感を持って注視」と円安をけん制したが、介入の判断に関しては「動きが重要であり、どこの額に来たらとかそういうことではない」と述べた。文言通りに解釈すれば146円を超えたからとか147円に到達したからということではなく、1日で2円や3円の急激な円安が発生する場合には制動をかけるということかもしれない。
しかしこれ以上の円安は望まないという目標水準はあるのだろうと推察されるため、例えば1998年8月天井の147.63円近辺では動きが出るのではないかと思われる。また2015年6月には125.84円で天井となったが、日銀の黒田総裁が「これ以上の円安は考えられない」と述べて黒田ラインと呼ばれた円安阻止ラインを示したが、新たな黒田ラインが示されることも考えられる。日銀の黒田総裁は12日、「為替の一方的で急激な変動は経済に悪影響を及ぼす」「為替の動向が経済に与える影響を注視していく」と述べたが、従来よりも牽制のトーンが上がった印象は見られない。

【米PPIは高水準、FOMC議事要旨は大幅利上げ継続姿勢】

米労働省による9月のPPI(生産者物価指数)は全体の前月比が0.4%上昇となり、8月の0.2%低下及び市場予想の0.2%上昇を上回って3か月振りにプラスとなった。前年同月比は8.5%で8月の8.7%から若干低下したものの市場予想の8.4%を上回った。食品やエネルギーを除いたコア指数の前月比は0.3%上昇で8月の0.3%上昇と変わらず予想と一致したが、前年同月比は7.2%上昇で予想の7.3%を若干下回ったものの8月の7.2%上昇と同じで高止まりの様相となっている。

米FRB(連邦準備制度理事会)は9月20-21日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨を公表したが、インフレが予想よりも高止まりするリスクがあるとして利上げ継続が適切との見解で一致していた。また「金融引き締め効果はインフレ率にそれほど反映されていない」とし、「政策スタンスを一段と景気抑制的にして維持する」、「引き締めが弱すぎる場合に払うツケはやり過ぎるより大きい」とし、パウエル米FRB議長が繰り返し主張してきた「景気よりも物価抑制」の姿勢が反映されている印象となった。ただ一部のメンバーは「世界経済や金融環境をめぐる不透明感が強くリスクを和らげるために金融引き締めペースを調整することが重要」との見解を述べており、景気後退への懸念も認識されている印象を与えた。

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は12日、「政策金利を4.5%程度まで引き上げてその後も長期にわたって据え置くことが極めてあり得るシナリオ」とし、引き締め効果が経済全体に及ぶには「1、2年かかる」と述べた。またボウマンFRB理事も12日に「インフレはあまりにも高すぎる」「11月以降のFOMCでも0.75%の大幅利上げを検討する必要がある」と述べている。

【歴史的なドル高に対するG7による牽制は鈍い】

G20財務相・中銀総裁会議に先立ってG7財務相・中銀総裁会議が行われ、「多くの通貨がボラティリティーの高まりを伴って著しく変動している」と懸念を示したが、為替レートは市場で決定されるのが原則とし、過度な変動や無秩序な動きによる経済への悪影響に言及したG7の従来の合意を再確認した上で、「注意深く監視していく」との声明を発表した。ユーロが20年ぶり安値、ポンドが史上最安値更新、円が24年ぶり安値となりドルの独歩高に対する懸念も高まっているところだが、明確なG7としてのドル高への強い牽制という印象ではなかった。

イエレン米財務長官は「ドル高は当然の結果」、「金融引き締めペースの違いを概ね適切に反映している」と述べており、米国としてはドル高によるインフレ抑制のメリットの方が重要であるとの認識を暗に示した。また1985年の「プラザ合意」によるドル高是正の再現についての質問に対して「ドルの価値を市場で決定することが米国の利益」と述べてG7によるドル高是正について否定した。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は「ドル高の進行はファンダメンタルズに基づくもの」とし、「通貨防衛で外貨準備を無駄にするなとアドバイスする」と述べた。
ECBや英中銀が日銀と共に協調介入でドル高是正を図るような動きもまだ見られない。政府・日銀としては当面は米国の思惑を意識しつつ、急激に円安が加速するところでの単独介入の機会を探るというスタンスだろうか。

【NYダウは小反落、ナスダック続落、米長期債利回りは連騰一服】

10月12日のNYダウは前日比28.34ドル安と小幅下落に終わった。10月5日から10日まで4営業日の続落となり11日は前日比36.31ドル高と下げ渋ったものの反騰入りの勢いは見られず。ナスダック総合指数は前日比9.09ポイント安と小幅下落だったものの10月5日から6営業日続落に終わった。米国の大幅利上げによる景気減速懸念に中国の感染再拡大と規制強化の動きも圧迫感をもたらしている。

米長期債利回りは連騰一服で総じて低下。10年債利回りは前日比0.05%低下の3.90%、30年債利回りは0.05%低下の3.90%、2年債利回りは0.02%低下の4.29%だった。いずれも先週末の米雇用統計をきっかけとした連騰一服だが高水準を維持している。今晩は米CPIの発表もあり、予想に近いか予想を上回る上昇率の場合は長期債利回り上昇再開とドル高の加速も考えられるところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は10月5日午前に143.50円まで下げたところで目先の底を付けて戻してきたが、10月12日未明へやや下げたところから146円台へ一段高となったため、12日午前時点では12日未明安値を起点として新たな上昇期に入ったとして14日午後から18日午後にかけての間への上昇を想定した。
10月12日深夜へ一段高した後はやや下げているものの146円台後半を維持しているために高値試しを継続しやすい状況にあるとみる。但し、日銀介入も警戒されるために波乱注意とし、146.30円割れからは145円台後半へ失速する可能性もあると注意する。

60分足の一目均衡表では10月12日未明からの一段高で遅行スパンが好転し、先行スパンを上抜いた状況も維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、市場介入への警戒もあるので遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて先行スパンのある146円前後への下落を想定する。

60分足の相対力指数は10月12日深夜に80ポイントを超えたところから60ポイント台へ低下している。50ポイント以上での推移中は70ポイント超えから上昇再開とするが、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は反落警戒とし、50ポイント割れからは下落期入りとみて40ポイント割れへ向かう流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、146.35円を下値支持線、147.00円を上値抵抗線とする。
(2)146.35円以上での推移中は上昇余地ありとし、147円超えからは147円台中盤(147.30円から147.70円台)試しとみる。147.50円以上は反落警戒とするが、口先介入にとどまって上昇が抑えられない場合は148円に迫る可能性もあるとみる。
(3)146.35円割れからは修正安入りの可能性を警戒して146円前後試しとする。146円前後は買われやすいとみるが、実弾介入で急落する場合は145円台中盤(145.70円から145.30円)へ下値目途を引き下げる。ただし、9月22日の第一弾の介入時を超える大規模介入でなければ短期的な急落はバーゲンハント買いされやすいと注意する。

【当面の主な予定】

10/13(木)
休場 タイ
15:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 1.9%、予想 1.9%)
15:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 10.0%、予想 10.0%)
16:30 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
21:30 (米) 9月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (8月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 8.3%、予想 8.1%)
21:30 (米) 9月 CPIコア指数 前月比 (8月 0.6%、予想 0.5%)
21:30 (米) 9月 CPIコア指数 前年同月比 (8月 6.3%、予想 6.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.9万件、予想 22.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 136.1万人、予想 136.5万人)
24:00 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省30年債入札

10/14(金)
未 定 (中) 9月 貿易収支・米ドル建て (8月 793.9億ドル、予想 812.0億ドル)
未 定 (中) 9月 貿易収支・人民元建て (8月 5359.1億元、予想 5820.0億元)
08:50 (日) 9月 マネーストックM2 前年同月比 (8月 3.4%、予想 3.4%)
10:30 (中) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 2.5%、予想 2.8%)
10:30 (中) 9月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (8月 2.3%、予想 1.0%)
15:00 (独) 9月 WPI(卸売物価指数) 前月比 (8月 0.1%)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調済 (7月 -403億ユーロ、予想 -450億ユーロ)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調前 (7月 -340億ユーロ)

21:30 (米) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 -0.3%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 9月 輸入物価指数 前月比 (8月 -1.0%、予想 -1.1%)
21:30 (米) 9月 輸出物価指数 前月比 (8月 -1.6%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 8月 企業在庫 前月比 (7月 0.6%、予想 0.9%)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (9月 58.6、予想 59.0)
23:30 (米) クックFRB理事、講演

注:ポイント要約は編集部

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