FOMC後の乱高下から反騰、日銀金融政策から円安加速か
〇ドル円、22日未明にFOMCが3会合連続の0.75%利上げ決定、発表直後に144.70へ上昇
〇9/14の日銀レートチェックでつけた安値142.54の後は22日未明まで安値切り上げを継続
〇本日昼頃に日銀の金融政策発表、午後に黒田総裁会見、円安阻止への強い姿勢示されるか注目
〇米10年債利回りは前日比0.04%低下の3.53%、一時3.64%をつけ2011年2月以来の高水準に
〇NYダウは前日比522.45ドル安、ナスダック総合指数も204.86ポイント安と大幅下落
〇22日未明高値144.70超えからは145円突破試し、145円乗せからは145円台中盤を目指すとみる
〇22日未明安値143.40割れからはいったん下げに入るとみて142円台後半への下落を想定
【概況】
ドル円は9月22日未明の米FOMCが3会合連続の0.75%利上げを決定して年末へ大幅利上げを継続する姿勢を鮮明にしたことで発表直後に144.70円へ上昇し、いったんは当面するドル買い材料消化として143.40円まで反落したところも買われて22日午前序盤には144.50円をいったん超えるところまで切り返しており、発表前の水準を若干上回っている。
9月21日午後にはロシアのプーチン大統領が動員令に署名したとの報道があり15時過ぎからユーロやポンドなどが急落反応を見せ、ドル円もリスク回避的な手仕舞い売りで円高に振れる場面もあったが、戦争の泥沼化やロシア制裁の長期化への懸念がFOMCによる大幅利上げ見通しも踏まえて全般的にはドル高感を強めるものだった。
FOMCを通過して9月14日の日銀レートチェックから下落したところで付けた安値142.54円の後は19日午前安値142.63円へと底上げをし20日から21日、さらに22日未明と安値の切り上げを継続している。本日昼頃には日銀の金融政策発表があり午後には黒田総裁会見があるが、そこで円安阻止への強い姿勢が示されなければFOMC後のドル高基調に加えて円安感が強まることでドル円が145円の壁を突破する可能性もあるところとして注目したい。
【FOMC 5会合連続利上げ、3会合連続0.75%利上げ】
米FRB=連邦準備制度理事会は9月20-21日開催のFOMC=連邦公開市場委員会において政策金利を0.75%引き上げた。通常は0.25%ずつの利上げとなるところ、今年3月に0.25%利上げをした後は5月に0.50%の大幅利上げとし、6月から3会合連続で通常の3倍となる0.75%利上げを継続した。
利上げ決定は全会一致で政策金利は3.00〜3.25%となり2008年以来の高水準となったが、FOMCメンバーによる金利水準見通しでは2022年末を4.25〜4.50%として6月時点の3.25〜3.50%から大幅に上方修正したため、11月会合での0.75%利上げの可能性が濃厚となり、12月も0.50%利上げされる公算となった。また2023年末については4.50〜4.75%が中心値(6人)だったが、4.75〜5.00%も6人、4.25〜4.50%も6人と振れ幅も大きかった。2024年末については3.75〜7.00%が4人で最も多かったが4.50%での高止まり予想から3.25%への利下げ予想など幅が広いものとなった。
2022年のGDP見通し中央値は0.2%として6月時点の1.7%から大幅下方修正し、失業率は3.8%で6月時点の3.7%から下方修正、23年は4.4%として6月時点の3.9%から大幅上方修正した。
パウエル米FRB議長はこれまでも「景気よりも物価抑制を最優先」として景気後退もやむなしとの姿勢を強調してきたが、今回のFOMCにおいても「インフレに大きく下振れ圧力をかける金利水準へ利上げを行う」「景気抑制的な水準への利上げが必要」とした。
【米2年債利回りは15年ぶり、10年債利回りは11年ぶり高値水準に】
9月21日の米10年債利回りは前日比0.04%低下の3.53%となった。一時は3.64%をつけて2011年2月以来の高水準としたが株売り債券買いによる利回り低下圧力や2024年からの利下げ可能性も意識して上昇一巡後に低下した印象だ。30年債利回りは前日比0.06%低下の3.51%となり20日に付けた2014年4月以来の高水準だった3.62%から上昇一服となっている。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.08%上昇の4.05%となり、一時は4.10%を付けて2007年10月以来の高値水準とした。
10年債や30年債は2024年の利下げ可能性も踏まえて上昇一服感が出やすい状況かもしれないが、今回のFOMCにおける先行きの金利水準見通しの大幅上方修正により、インフレ低下が顕著にならないと大幅利上げがさらにペースアップする可能性も警戒されるため、当面は上昇基調を継続するのではないかと思われる。
一方でNYダウは前日比522.45ドル安と大幅下落、ナスダック総合指数も204.86ポイント安と大幅下落した。ロシア動員令報道への反応は限定的だったものの米国の大幅利上げとそれに続く主要国の大幅利上げ継続による景気後退懸念が大きな重石となってきており、NYダウは6月安値に迫り年初来安値更新へ向かう懸念も強まってきている。
【日銀は円安阻止姿勢を強固に示せるか試される】
本日は日銀の金融政策決定会合結果の発表がある。金融緩和政策は継続的と思われマイナス金利や指値オペによる長期金利上昇抑制策は変わらないと思われるが、急激な円安や物価上昇に対するリスク評価を踏まえての情勢認識と円安阻止への姿勢の強弱に注目が集まる。
9月20日に発表された8月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除く総合の前年同月比が2.8%上昇となり31年ぶりの高水準となっているが、円安を享受する企業群があるものの輸入インフレによるコスト増や小売価格へ転嫁できずに苦境に陥る企業群もあり、賃金が伸びない中で個人消費の低迷していることに対しての日銀の認識も問われる。
9月14日にドル円が144.95円を付けて9月7日夜高値144.98円に迫ったところで鈴木財務相の円安けん制発言が従来よりもトーンを強くした直後に日銀がレートチェックを入れたことで市場介入の可能性が警戒されたために14日夜安値142.54円まで急落したが、その後は徐々にドル高円安基調を回復して144円台後半まで切り返しており、きっかけ次第では145円手前の壁を超える可能性もあるところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月19日午前安値を直近のサイクルボトムとしてきた。22日未明に高値を更新してからいったん急落して再び反騰する乱高下となっているが、22日未明高値を直近のサイクルトップとし、高値更新へ進めないうちは22日の日中から26日午前にかけての間への下落余地ありとするが、22日未明高値更新からは新たな強気サイクル入りとして26日夜から29日未明にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では9月22日未明の乱高下からの反騰で遅行スパンが好転、先行スパンからの転落を回避して好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。弱気転換は先行スパンから転落するところからとし、その際は遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は9月22日未明に40ポイントまで低下してから60ポイントへ切り返しているので上昇継続とみて70ポイント台回復を目指す上昇を想定するが、40ポイントを割り込む場合は戻り一巡による下落再開として30ポイント割れへ向かう流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月22日未明安値143.40円を下値支持線、9月22日未明高値144.70円を上値抵抗線とする。
(2)143.40円以上での推移中は一段高余地ありとし、144.70円超えからは145円突破を試し、145円乗せからは145円台中盤(145.30円から145.70円)を目指すとみる。145円手前で再び売られる場合は143円台後半への反落とその後の反騰を想定する。また143.40円以上を維持するなら23日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)143.40円割れからはいったん下げに入るとみて142円台後半への下落を想定する。142.70円以下は反騰注意とするが、143.40円を割り込んでの推移なら23日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9/22(木)
休場、オーストラリア
政策金利発表集中日(フィリピン、インドネシア、スイス、ノルウェー、トルコ、南ア、台湾)
昼 頃 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、会見
20:00 (英) BOE・英中銀 政策金利 (現行 1.75%、予想 2.25%)
21:30 (米) 4-6月期 経常収支 (1-3月 -2914億ドル、予想 -2606億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.3万件、予想 21.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 140.3万人、予想 140.0万人)
23:00 (米) 8月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (7月 -0.4%、予想 -0.1%)
23:00 (欧) 9月 消費者信頼感速報値 (8月 -24.9、予想 -25.8)
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動10年債入札
9/23(金)
休場、日本
08:01 (英) 9月 GFK消費者信頼感 (8月 -44、予想 -42)
16:30 (独) 9月 製造業PMI速報値 (8月 49.1、予想 48.3)
16:30 (独) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 47.7、予想 47.2)
17:00 (欧) 9月 製造業PMI速報値 (8月 49.6、予想 48.8)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 49.8、予想 49.2)
17:30 (英) 9月 製造業PMI速報値 (8月 47.3、予想 47.4)
17:30 (英) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 50.9、予想 50.2)
22:45 (米) 9月 製造業PMI速報値 (8月 51.5、予想 51.3)
22:45 (米) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 43.7、予想 45.5)
27:00 (米) FRBイベント パウエル議長暴騰挨拶、ブレイナード副議長とボウマン理事が司会
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:橋本 光正
2022.09.22
米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利記者発表(22/9/22)
昨日開催されたFOMC金融政策会合の記者発表要旨が公表されました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2022.09.22
ドル円、一時144円台後半まで上昇。タカ派な米FOMCを受けてドル高再開か(9/22朝)
21日(水)のドル円相場は米FOMC後に乱高下。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。