今週も安値更新の流れ
〇先週のユーロドル、欧州景気後退懸念にノルドストリーム停止の悪材料加わりユーロ売り加速
〇パリティ再トライも視野に入り、火曜の欧州市場序盤に一時0.9900つけ、年初来安値更新
〇その後調整の買い戻し目立つもパウエル議長のタカ派発言で改めてドル買い強まる
〇今週も再び低下予想のライン川水位問題、輸送費の上昇でインフレの要因に
〇今週は0.9800レベルをサポートに1.0025レベルをレジスタンスとするレンジとみる
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、もともとの欧州景気後退懸念の高まりによるユーロ悪材料に8月31日から9月2日までノルドストリームが点検で停止することが更なる悪材料として加わったことでユーロ売りが加速、テクニカルにもパリティ再トライが視野に入ったことで火曜の欧州市場序盤に一時0.9900レベルと年初来安値を更新する動きを見せました。
しかし、その後は利食いが出たことやジャクソンホールを控えて積極的なユーロ売りも見られず、上下しながらも調整の買い戻しが目立っていました。ジャクソンホールではパウエルFRB議長が予想通りとは言えタカ派な講演を行ったことで改めてドル買い(ユーロ売り)が強まっての週末クローズとなりました。
週明けにはFRBがタカ派なスタンスを強める可能性も含め株式市場は続落、為替市場はドル買いが強まってのスタートとなっていますが、ユーロドルも一時0.9918レベルと年初来安値更新を視野に入れた動きとなっており、材料的にも今週中の安値更新は確実に思えます。
ドルについての材料はドル円の週報でも書きましたので、ここではユーロについての材料を見て行きます。まず今週は欧州主要国の8月CPI速報値が発表されますが、ドイツCPI速報値は予想が8.7%、ユーロ圏のCPI速報値は9.0%とそれぞれ先月から上昇する予想です。しかも直近でエネルギー価格の一段高を見ていることから、来月も上昇する可能性があります。こうした動きから9月ECB理事会で0.75%の利上げを支持する理事会メンバーも出ていますが、景気の後退が確実視される中での金利急上昇となり、素直にユーロ買いには動けていません。
また8月31日からのノルドストリームの点検停止ですが、前回7月の点検では点検前の天然ガス供給量がピーク能力の40%にまで下がっていたのですが、点検が終わり再開した際にはそれが20%にまで削減されました。ロシア側は部品の問題等説明していましたが、欧州の対ロ制裁に対する対抗措置であることは間違いないところで、今回も場合によっては更なる削減や停止が懸念されています。既にコラムで欧州天然ガスの高騰状況を説明しましたが、仮に削減や停止といったことが起きると更なるインフレを招くこととなります。
もうひとつはライン川の水位の問題ですが、先週は雨が降ったことで最低の32pから一時的に1.2mまで上昇したものの熱波の影響が残っていて今週は再び水位低下が予想されています。いずれにしても通常の水位である1.5m以上無いと船舶の荷物を減らして運行させざるを得ませんし、熱波の影響ですから夏が終わるまでは大きな影響が残り続ける可能性は高そうです。このことも輸送費の上昇でインフレの要因となります。
材料的にはユーロの悪材料ばかりなのですが、思ったほど下げないという印象です。テクニカルに見てみましょう。日足チャートをご覧ください。
こうして見ると毎週書いていますが年初来高値からの下降チャンネルが鉄板に見えてきます。現在は6月下旬高値を起点とした逆N波動(ピンク)の78.6%(61.8%の平方根)エクスパンション0.9846をターゲットとする流れが続いていますし、100%エクスパンションの0.9705も下降チャンネルの中に位置していますので、急落時には0.97水準を考える必要がありそうです。
いっぽうで上値はジャクソンホール後の高値1.0090は遠い印象です。今週は0.9800レベルをサポートに1.0025レベルをレジスタンスとするレンジを見ておくこととします。
今週のコラム
今週は株価が急落していますのでドイツの株価指数DAXの週足チャートを見ておきます。
NYダウに比べても弱い値動きで、年初来高値から着実に高値を切り下げる動きとなっていること、また年初来安値に近づいていて今回トライすると3度目のトライとなり下抜けする可能性が高そうなことがわかります。
現在のドイツの経済状況を考えると3度目のトライで下抜けし、コロナショック安値と年初来高値の半値押しとなる12129を試す流れになってくるのではないかと見ています。そうなると、スタグフレーション思惑が一段と強まり為替市場でもユーロ売りになるのではないでしょうか。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
8月29日(月)
**:** 英国市場休場
22:00 レーンECB理事講演 ☆
8月30日(火)
18:00 ユーロ圏8月消費者信頼感
21:00 ドイツ8月CPI速報値 ☆
25:00 オーストリア・ベルギー・ギリシャ中銀総裁講演
8月31日(水)
15:45 フランス7月PPI
15:45 フランス4〜6月期GDP改定値 ☆
16:55 ドイツ8月失業率
18:00 ユーロ圏8月CPI速報値 ☆
9月1日(木)
16:50 フランス8月製造業PMI
16:55 ドイツ8月製造業PMI
17:00 ユーロ圏8月製造業PMI
18:00 ユーロ圏7月失業率
19:30 ポルトガル中銀総裁講演
9月2日(金)
15:00 ドイツ7月貿易収支
18:00 ユーロ圏7月PPI ☆
21:30 米国8月雇用統計 ☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月22日(月)
ユーロドルは東京前場に一時的に小さめの買い戻しが入った動きを除くと終日売りが続き、欧州市場前場にパリティ割れで売買が交錯したのちもユーロ売りが目立ち、NY昼過ぎには0.9926レベルの安値をつけ、安値圏での引けとなりました。
8月23日(火)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場序盤に売り仕掛けが先行したことで0.9900レベルの安値をつけたものの、すぐに買い戻されてNY市場入り。NY前場はドル売りと買い戻しに沿って1.0018レベルまで上昇後に0.99台半ばに押して引けました。
8月24日(水)
ユーロドルは8月31日から設備点検によるロシアからの天然ガス供給停止とその後の供給再開懸念から天然ガス価格が高騰を続ける中、ユーロドルはじり安となりNY前場には0.9910レベルの安値をつけました。しかし前日安値は下回らず短期筋の利食いが出ると、実需のユーロ買いも巻き込んで0.9999レベルの戻り高値をつけた後に若干押して引けました。
8月25日(木)
ユーロドルは東京市場ではドル売りの動きからユーロドルもじり高の展開となり、欧州市場序盤に発表されたドイツのGDP改定値が強かったことから一時1.0033レベルの高値をつけました。しかし、天然ガス価格は高騰を続け欧州景気に関してネガティブな材料しか見当たらない中、引けにかけては改めてユーロ売りとなり0.99台後半へと押して引けました。
8月26日(金)
ユーロドルは東京市場ではドル買いの動きからやや上値が重たい動きとなっていましたが、欧州市場に入り英国のガス料金上限引き上げをきっかけとしたユーロポンドの買いをきっかけにユーロドルも上昇。NY前場はパウエル議長講演の直後もユーロドルには目立った振れは見られず1.0090レベルまで続伸しました。引けにかけては全般的なドル買いの動きから0.99台半ばまで押して引けました。
ディスクレーマー
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