6月24日の資本規制策発表からのリラ買い一巡、円高に押され対ドルでも軟調
〇トルコリラ円、円高に圧迫され8.15割れを買い戻されなくなり8.10割り込む
〇6月トルコ消費者物価上昇率本日発表、インフレ深刻化進むようならリラ売りのきっかけとなりやすい
〇対ドルでも混乱落ち着き16.50前後の水準から16.70台へドル高リラ安が徐々に進む
〇1日発表のイスタンブール6月製造業PMIは48.1で5月の49.2から悪化
〇8.00前後で買い戻しが入らず8円割れから続落に入る場合は7.90台中盤への下落を想定
〇8.10を超える場合は8.13から8.15前後への上昇を想定
【概況】
トルコリラ円の7月1日は8.14円から8.04円の取引レンジ、2日早朝の終値は8.06円で前日終値の8.12円からは0.06円の円高リラ安だった。
6月24日夜に外貨保有企業に対する融資規制が突然発表されたことでドル売り・ユーロ売り・リラ買いが殺到して乱高下となり、トルコリラ円は6月23日夜安値7.73円から6月27日高値8.37円へ急伸した。
ややパニック的な反応が一巡した後は8.20円台で売られて8.15円割れを買い戻される小動きで様子見に入り、その間にドル円は6月29日夜に137円へ到達する円安となってトルコリラ円を支えたが、ドル/トルコリラでは乱高下が落ち着いてからは再びドル高リラ安がジワジワと進んでトルコリラ円の上値を抑えた。
6月29日夜にドル円が137円を付けた後は下落に転じたため、トルコリラ円は円高に圧迫されて8.15円割れを買い戻されなくなり8.10円を割り込んだ。週末終了時点では8円割れを回避したものの、週明けの7月4日午前もやや軟調な推移が続いている。
本日は夕刻に6月のトルコ消費者物価上昇率などの発表があり、インフレ深刻化がさらに進むようだとリラ売りのきっかけとなりやすい。
【6月24-27日の乱高下一巡、再びドル高リラ安がジワジワ進む展開】
ドル/トルコリラの7月1日は16.79リラから16.68リラの取引レンジ、7月2日早朝の終値は16.76リラで前日終値の16.69リラからは0.07リラのドル高リラ安だった。
6月24日夜に外貨保有企業に対する融資規制政策が突然発表されたことで狼狽的なドル売りリラ買いが集中したために発表前の1ドル17.37リラ近辺から15.90リラへ急伸したが、混乱が落ち着いた後は16.50リラ前後の水準から16.70リラ台へとドル高リラ安が徐々に進んでいる。
企業の保有外貨の価値が1500万リラを超えている場合には新規の国内銀行融資が禁止されるとの報道で輸出入にかかわる企業やリラ安への防衛策として外貨を保有してきた企業にとっては突然の融資禁止となる非常事態となりかねないために慌てて外貨売りに走ったことと、投機筋のリラ買いも呼び込んだことで一時的なリラ急伸となったが、ファンダメンタルズ上のリラの弱さを根本的に解決するものではなく、昨年12月20日に史上最安値をつけたところでリラ建て預金の為替差損補填政策を発表して12月23日までリラ急伸が発生した時のように、規模は今回のほうが小さいものの一時的なリラ急伸にとどまった印象だ。
【イスタンブール製造業PMI 4か月連続で50を割り込む】
7月1日に発表されたイスタンブール6月製造業PMIは48.1となり5月の49.2から悪化した。
2020年春のパンデミック発生時に同年2月の52.4から同年4月に33.4へ急低下し、いったんは同年7月に56.9まで回復したが、その後は感染拡大の波が繰り返されたこととインフレの進行により徐々に低下傾向に陥り、2021年は5月に49.3まで低下したところから7月の54.1まで持ち直したものの9月からの連続利下げとリラ暴落及びインフレの深刻化から低下傾向をたどり、2022年3月に49.4へ低下して50を割り込んだ後は50以上へ回復できずにいる。
リラ安が輸出競争力を高めるとしても原材料輸入価格の高騰による収益への圧迫感は大きく、ウィズコロナ政策を比較的成功させてきたトルコの製造業も苦境に陥りつつある印象だ。
【トルコの外交的立場の改善はあるか】
6月28日にトルコはフィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟を支持することで合意したと報じられた。6月29日には米バイデン政権がトルコへF16戦闘機売却に応じる可能性を示唆する報道もあった。
クルド人反政府勢力に対して北欧がトルコからの引き渡し要求を拒否してきたことでトルコは北欧2か国のNATO加盟を拒否する姿勢を繰り返し強調してきたが、この問題での妥協が成立したと市場は受け止めた。
しかし、エルドアン大統領は6月30日にフィンランドとスウェーデンが合意を守らなければ国内の批准手続きを行わないと述べている。トルコは同国がテロリストと見なしている73人の引き渡しについてスウェーデンが約束したと述べているが、合意文書には具体的な記述はなくトルコの要請に対応するとしか記載されていないため、まだこの問題の紆余曲折がありそうだ。
仮に北欧2か国のNATO加盟をトルコが認め、米バイデン政権との関係が改善されればトルコの西側における立ち位置も従来の孤立的なものから大きく改善し、トルコ経済にとってもプラスとなる可能性がある。しかしその場合はロシアとの関係悪化を招くことにもなる。欧米とロシアと両方の関係性を保ってきた外交バランスが崩れる懸念もあるため、トルコリラへの影響も少なからずあるのではないかとしてこの問題を注視してゆきたいところだ。
【概ね3か月から4か月周期の反騰は短命か】
トルコリラ円は6月24日の企業保有の外貨規制発表から6月27日高値へと反騰したが、この流れは概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルにおける上昇期と重なっている。
2020年11月6日底以降、2021年3月8日、6月2日、9月27日、12月20日と底打ちし、今年は3月11日とそこから3か月後の6月16日安値でこのサイクルの底を付けたと思われる。
3月11日から4月28日への上昇時はドル円の歴史的上昇力が強かったことで押し上げられており、5月後半への下落はドル円の調整安が長引いたことを反映した。このため今後もドル円の動向に左右されやすい状況にある
高値形成期は短ければ6月27日高値で既に付けてしまった可能性もあるが、8円前後で底固さを見せてドル円が一段高へ進むようならトルコリラ円ももう一段高する可能性も残る。しかし7月4日の物価上昇率や今後の金融政策及びやや強硬で無理筋なリラ防衛策を嫌気してドル高リラ安が進行するようだと8円割れからの続落により概ね3か月から4か月周期のサイクルにおける下落期入りとなる可能性も考えておく必要があると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.00円を下値支持線、8.15円を上値抵抗線とする。
(2)8.10円以下での推移中は一段安警戒とみる。8.00円前後で買い戻しが入らずに8円割れから続落に入る場合は7.90円台中盤(7.97円から7.93円)への下落を想定する。また8.05円以下での推移中は5日以降も安値を試しやすいとみる。7月4日のトルコ消費者物価発表から下げ足が早まる場合は週後半にかけて7.90円台序盤へ下値目途を引き下げる。
(3)8.10円を超える場合は8.13円から8.15円前後への上昇を想定するが、8.15円手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。8.15円を超えて続伸の場合は8.20円手前へ上値目途を引き上げるが、短期的な急騰が一巡した後は下げ再開に入りやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月4日
16:00 6月 消費者物価上昇率 前月比 (5月 2.98%、予想 5.38%)
16:00 6月 消費者物価上昇率 前年同月比 (5月 73.5%、予想 78.35%)
16:00 6月 生産者物価上昇率 前月比 (5月 8.76%)
16:00 6月 生産者物価上昇率 前年同月比 (5月 132.16%)
7月7日
20:30 週次 外貨準備高 7/1時点 グロス (6/24時点 603.4億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 7/1時点 ネット (6/24時点 75.3億ドル)
23:30 6月 財務省現金残 (5月 1492.3億リラ)
7月8日
16:00 5月 経常収支 (4月 -27.4億ドル)
7月13日
16:00 5月 失業率 (4月 11.3%)
注:ポイント要約は編集部
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