トルコリラ円見通し 外貨保有企業への融資規制発動でリラ反騰(22/6/27)

トルコリラ円の6月24日は8.19円から7.74円の取引レンジ、25日早朝の終値は8.00円で前日終値の7.77円からは0.23円の円安リラ高となった。

トルコリラ円見通し 外貨保有企業への融資規制発動でリラ反騰(22/6/27)

外貨保有企業への融資規制発動でリラ反騰

〇トルコリラ円、政府による融資規制でリラ買い殺到、7.80割れから8.20へ急伸、8円台を維持して越週
〇対ドル、17.37近辺から16.47まで急伸、リラ買い一巡で6/25早朝16.89まで戻す
〇6/23トルコ金融会合、政策金利14%で据え置き、通貨防衛のための利上げ拒否
〇6/24外貨大量保有企業に対し新規融資禁止を発表、リラ暴落阻止を狙うが効果短期的か
〇6月トルコ製造業景況感指数106.4、同設備稼働率77.6%、ともに5月から低下
〇8.00以上での推移中は上昇余地ありとし、8.20超えからは8.40前後への上昇を想定する
〇7.95割れからは7.80円台後半への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の6月24日は8.19円から7.74円の取引レンジ、25日早朝の終値は8.00円で前日終値の7.77円からは0.23円の円安リラ高となった。
ドル円が6月22日朝高値136.71円から6月23日夜安値134.25円へ急落してドル高リラ安基調も継続していたためにトルコリラ円は6月23日安値で7.73円へ下落し、24日夜にかけてはドル円がやや戻したことで下げ渋っていたが、トルコ政府が外貨保有企業に対する新規ローン規制政策を発表したことで狼狽的なリラ買いドル売りが殺到したためにトルコリラ円も7.80円割れの水準だったところから8.20円へ急伸した。狼狽的な買い一巡でその後は下げたものの8円台を維持して週を終えた。
外貨保有比率によっては新規融資停止という荒業的な政策発表で市場もややパニック状態となったが、輸出企業は稼いだ外貨をいったん売ればよいが、輸入企業は外貨が必要であり、新たな政策に対する企業の対応方針が落ち着けばこの政策だけでリラ高が継続してゆくとも限らず、まずは市場が落ち着くところを見定めたいという状況だ。

【外貨保有規制策で1ドル17リラ割れへ反騰】

ドル/トルコリラの6月24日は17.38リラから16.47リラの取引レンジ、25日早朝の終値は16.89リラで前日終値の17.35リラからは0.46リラのドル安リラ高となった。
高インフレ下で利上げをせずにエルドアン大統領が利下げ政策継続を強調する中で1ドル17リラを超えるリラ安となり、終値ベースでは昨年12月17日の16.41リラを5月26日に超えたところから史上最安値の更新が続き、6月23日には17.35リラまで最安値を更新したが、6月24日夜にトルコ政府による外貨保有企業への新規融資停止政策が発表されたところからリラ買いが殺到して直前の17.37リラ近辺から16.47リラまで急伸した。リラ買い一巡で25日早朝には16.89リラまで戻したが、新たな政策に対する市場の受け止めもまだ落ち着いていない状況と思われる。
6月24日夕刻に発表された6月のトルコ製造業景況感指数は106.4となり5月の109.4から低下した。また6月の設備稼働率は77.6%で5月の78.0%から低下した。

【外貨大量保有企業への新規融資禁止】

トルコの銀行規制当局は6月24日夜にドルとユーロを大量に保有している企業に対して新規のリラ建て融資を禁止すると発表した。この措置によると、企業の保有する外貨が総資産または年間収益の10パーセントを超えて1500万リラ(6月24日終値時点での換算で凡そ89万ドル)以上である場合、銀行による新規融資が禁止される。これにより6月27日にローンの満期を迎える場合にはそれ以降の融資が受けられない可能性があり、6月24日夜には外貨保有企業がドルやユーロを売ってリラを買い戻す動きが殺到した。
トルコ中銀は6月23日の金融政策委員会で政策金利の週間レポレートを14%で据え置いた。高インフレが一段と悪化する中で6会合連続の据え置きであり、通貨防衛のための利上げを拒否しているが、6月6日にはエルドアン大統領が持論である低金利政策の維持を強調する演説を行っており、今回の資本規制措置導入も利上げをせずにリラ安を阻止しようとする奇策といえる。

エルドアン政権は昨年12月のリラ暴落に際してリラ建て預金の為替差損を国家が補填するという保護預金制度を突如発表した。4月には輸出企業などの外貨保有については40%を超えるものをリラに転換することを強制した。
今回の外貨保有規制については基準が極めて低いため、相当程度の企業に適用される可能性がある。またこうした突然の資本規制により今後もさらに突然で劣悪な資本規制が導入される可能性が企業存続にとっての大きなリスクとなる。短期的にはリラ買いを呼びリラ暴落を阻止する動きとなっても中長期的には海外への資本流出へと向かいリラ安やエルドアン大統領の支持率低下を招きかねないものと思われる。

【概ね3か月から4か月周期の反騰、長続きできるか試される】

【概ね3か月から4か月周期の反騰、長続きできるか試される】

トルコリラ円は概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで推移してきた。昨年来の主要な安値は昨年3月8日、6月2日、9月27日、12月20日であり、そこから3か月目の今年3月11日に前回のサイクルボトムをつけて4月28日まで戻していた。4月28日高値まではドル円の歴史的大上昇がドル高リラ安に勝ったことでの上昇だったが、対ドルでのリラ安が進む中で5月26日安値7.71円へ下落、さらに6月16日には7.59円へ安値を切り下げてきたが、6月24日に8円を超える急伸となり6月7日の戻り高値を超えたため、3月11日安値から3か月目となる6月16日安値でこのサイクルの底打ちとなった印象だ。

60分足チャートにおいては6月16日夜安値を中心の頭とし、6月9日夕安値と6月23日夜安値がほぼ同水準で両肩となり逆三尊底打ちパターンを形成している。6月22日早朝にかけての上昇を一段目とし、6月24日の上昇が二段目だが、この二段目が発展してさらに三段目の上昇へと伸びてゆくのかどうか、二段戻しに終わるのかどうかというところも見定めてゆく必要があると思われる。

日足における高値のサイクルも平均的には3か月から4か月周期が多いが、より上位のサイクルが弱気基調にあれば高値の間隔は短縮されるので長続きしない可能性もあるが、中勢の弱気転換には6月16日安値を割り込むことが必要となったと思われる。当面は6月24日発表の新資本規制によるリラ買い効果が継続するかどうか、対ドルでのリラ安が収まる中で円安が加速して円安相場的な上昇として勢い付くか、円安も頭打ちとなりリラの買い戻し一巡で再びリラ安感が強まるのかどうかを見定めてゆく必要がありそうだ。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、乱高下の継続もあり得るところと注意し、7.95円を下値支持線、8.20円を上値抵抗線とする。
(2)8.00円以上での推移中か一時的に7.90円台後半へ下げても8.00円を回復するうちは上昇余地ありとみる。8.20円前後は戻り売りも出やすいとみるが、8.20円超えからは8.40円前後への上昇を想定する。
(3)7.95円割れからは7.80円台後半(7.90円から7.85円)への下落を想定する。7.80円台後半は買い戻されやすい水準とみるが、7.95円以下での推移が続く場合は週末の急騰を解消するような揺れ返しの下落に転じる可能性もあると注意する。

【当面の主な予定】

6月24日
 16:00 6月 製造業景況感 (5月 109.4)
 16:00 6月 設備稼働率 (5月 78.0%)
6月29日
 16:00 6月 経済信頼感 (5月 96.7)
6月30日
 16:00 5月 貿易収支 (4月 -61.1億ドル)
 20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
 20:30 週次 外貨準備高 6/24時点 グロス (6/17時点 594.5億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/24時点 ネット (6/17時点 73.8億ドル)
7月1日
 16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 49.2)
7月4日
 16:00 6月 消費者物価上昇率 前月比 (5月 2.98%)
 16:00 6月 消費者物価上昇率 前年同月比 (5月 73.5%)
 16:00 6月 生産者物価上昇率 前月比 (5月 8.76%)
 16:00 6月 生産者物価上昇率 前年同月比 (5月 132.16%)

注:ポイント要約は編集部

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