『規制当局による資本規制強化でトルコリラは週末にかけて急上昇』
〇今週のトルコ円、指標不冴え、中銀政策金利据え置きに、週後半にかけ週間安値7.73まで下落
〇その後トルコ当局による新資本規制のサプライズ発表に一時8.19まで急伸。8円近辺で越週
〇トルコ円、週末の急上昇でテクニカルの地合い好転するも、上方にはレジスタンス控え上値重い
〇資本規制は諸刃の剣、リラ買いの長期効果は困難か
〇トルコリラ円相場の反落をメインシナリオとして予想、来週の予想レンジ(TRYJPY):7.75ー8.20
今週のレビュー(6/20−6/24)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初7.79円で寄り付いた後、@トルコ6月消費者信頼感指数(結果63.4、前回67.6)の冴えない結果や、Aトルコ中銀による政策金利の据え置き発表(先日発表されたトルコ5月消費者物価指数が約24年ぶり高水準となる73.5%を記録したにも係わらず、トルコ中銀はエルドアン大統領の方針に配慮する形で政策金利の据え置き措置を決定→実質金利に低下圧力)、Bトルコ6月景気動向指数(結果104.6、前回107.0)の不冴な結果、Cトルコ6月設備稼働率(結果77.6%、前回78.0%)の市場予想を下回る結果が重石となり、週後半にかけて、週間安値7.73円まで下落しました。
しかし、一目均衡表転換線をバックに下げ渋ると、Dトルコ当局による資本規制(トルコの銀行規制当局は1500万リラを超える外貨現金を保有し、その額が総資産または年間売上高の10%を超える場合、リラ融資を制限すると発表)のサプライズ発表や、E上記Dを切っ掛けとしたトルコリラの大規模ショートカバーが支援材料となり、週末海外時間にかけて、週間高値8.19円まで急伸しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/25午前4時45分現在)では、8.05円前後で推移しております。
来週の見通し(6/27−7/1)
トルコリラの対円相場は、6/16に記録した約半年ぶり安値7.59円(昨年12/20以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時8.19円まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を上抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、上方には強いレジスタンスとして警戒されている90日移動平均線や一目均衡表雲上下限が控えているため、ここからの更なる上昇は容易では無いと考えられます(来週は戻り売りが強まる恐れあり)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシア・ウクライナ両国と親密関係にあるトルコ経済に下押し圧力)や、ANATO加盟国との関係悪化懸念(トルコ政府はフィンランド・スウェーデンによるNATO加盟へ反対姿勢継続)、Bトルコ中銀による徹底した利上げカードの封印スタンス(トルコ5月CPIが約24年ぶり高水準を記録しているにも係わらずトルコ中銀は利上げの選択肢を排除)、
C上記Bを背景とした実質金利の低下圧力、D世界的な金融引き締めムード(過剰流動性相場逆流懸念→トルコから米国への資本流出圧力)、Eトルコ経済の先行き不透明感(今週発表された経済指標は軒並み悪化)、F経常赤字拡大に伴う構造的なリラ売り圧力、G外貨準備減少に伴うリラ売り防衛能力の脆弱さなど、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。今週はトルコの規制当局によるサプライズ的な資本規制発表がリラ高騰に繋がりましたが、資本規制は諸刃の剣であるため、リラ買い効果を長期化させることが出来ず、一巡後に再び下落に転じるシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.75ー8.20
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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