『日米金融政策格差と堅調な株式市場がドル円を下支え』
〇今週のドル円、株価堅調、米長期金利上昇に週央にかけ23年8ヵ月ぶり高値136.72に上昇
〇週後半にかけ米指標不冴え、米金利低下等で134.26に急落するも135円台を回復して越週
〇ユーロドル、仏与党連合過半数割れ等に週央1.0468まで下落するも1.05台半ばに持ち直す
〇ドル円、主要レジスタンスポイント上抜け、テクニカルの地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違い、米国のドル高容認姿勢等がドル円をサポート
〇ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想、来週は日米の物価指標要注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):134.00ー137.00、(EURUSD):1.0400−1.0700
今週のレビュー(6/20−6/24)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初134.90で寄り付いた後、@株式市場の堅調推移(アジア株や欧米株が軒並み上昇)や、A上記@を背景としたリスク選好の円売り圧力(クロス円上昇→ドル円連れ高)、B米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが一時3.31%まで上昇)、C直近高値(6/15高値135.60)突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週央にかけて、週間高値136.72(約23年8ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。しかし、心理的節目137.00をバックに伸び悩むと、D急ピッチな上昇に対する反動売り(利食い売りや新規の逆張り)や、EパウエルFRB議長の半期に一度の議会証言を通過したことに伴う材料出尽くし感(パウエルFRB議長は100bpの利上げの可能性に関する質問に対し、「いかなる利上げ幅も排除しない」と回答するなど、インフレ押し下げへの強いコミットを改めて強調するも、真新しさに欠けたことから材料視されず)、F中尾元財務官による「為替介入の可能性は排除できない」との見解発表、
G米経済指標の冴えない結果(米新規失業保険申請件数や米6月製造業・サービス業PMI速報値が軒並み予想比悪化)、G米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは6/16に記録した3.49%からわずか1週間で3.00%まで急低下)が重石となり、週後半にかけて、週間安値134.26まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、HパウエルFRB議長による「インフレ抑制に対してFRBは無条件にコミット」とのタカ派的な発言や、IボウマンFRB理事による「7月会合での75bpの利上げ実施とその後数回の会合での少なくとも50bpの利上げ実施が適切となることを想定」とのタカ派的な発言、J米主要株価指数の大幅上昇(米ダウ平均株価は2週間ぶり高値圏へ急騰→市場心理改善→リスク選好の円売り圧力)、K米長期金利の持ち直し(米10年債利回りは3.00%から3.13%へ急上昇)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/25午前6時00分現在)では、135.20前後まで持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0472で寄り付いた後、@週末に実施されたフランス下院選挙の決選投票でマクロン大統領率いる与党連合が過半数を大きく割り込んだこと(前回の350議席に対して今回は過半数の289議席を大幅に割り込む245議席まで大幅減少)や、Aロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの悪化懸念(ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアによる攻撃が激化する可能性がある」との見解を発表)、B欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締め転換は景気への逆風)、C欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0468まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、D米金利低下に伴うドル売り圧力(米長期金利が急低下→世界的なドル安に波及)や、D株式市場の持ち直し(市場心理改善→リスク選好のドル売り圧力)、E短期筋のショートカバーが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0606まで反発しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、F米当局者による相次ぐタカ派発言(パウエルFRB議長やシカゴ連銀エバンズ総裁など)や、Gユーロ圏6月消費者信頼感指数(結果▲23.6、予想▲20.5)の冴えない結果、Hユーロ圏PMI速報値(フランス6月PMI速報値、ドイツ6月PMI速報値、ユーロ圏6月PMI速報値)の冴えない結果、Iドイツ政府による国内ガス供給リスクレベルの上方修正(上から2番目の「警報」レベルへの引き上げ)、Jドイツ6月IFO企業景況感指数(結果92.3、予想92.9)の不冴な結果が重石となり、本稿執筆時点(日本時間6/25午前6時00分現在)では、1.0555前後で推移しております。
来週の見通し(6/27−7/1)
<ドル円相場>
ドル円は5/24に記録した直近安値126.36をボトムに反発に転じると、今週半ばにかけて、約23年8ヵ月ぶり高値となる136.72まで急伸しました(わずか1ヵ月で10円を超える上昇幅を記録)。この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線など)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転、強気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる金融引き締めスタンスの明確化(先週の米FOMCで政策金利が75bp引き上げられると共にドットチャートも大幅上方修正。今週の議会証言でパウエルFRB議長はインフレ抑制への強いコミットを改めて強調)や、A日銀による金融緩和の長期化姿勢(市場の度重なる緩和修正催促にも係わらず、黒田総裁は先週の日銀金融政策決定会合でゼロ回答)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C本邦経常収支悪化に伴う構造的な円売り圧力、D世界各国と日本との金融政策格差(米国のみならず、英国・カナダ・ニュージーランド・オーストラリア・南アフリカ・メキシコ・チリ・ポーランド・マレーシア・ペルー・フィリピン・ハンガリー・韓国・ユーロ圏・スイスなども多くの国が金融引き締め政策に転換→日本と世界の名目金利差拡大→クロス円上昇→ドル円連れ高)、
E米国によるドル高容認スタンス(米財務省が先週公表した半期為替報告書で円安に対するけん制は盛り込まれず→米国によるインフレ抑制に繋がり得るドル高容認スタンスが明確化。一部市場関係者の中で悪い円安への対処として日銀によるドル売り・円買い介入が警戒されておりますが、例え日銀短観などで冴えない数字が出てきたとしても、米国への配慮から為替介入には踏み切らないと整理)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(目先は1998年10月1日に記録した高値136.93や、心理的節目137.00、1998年9月24日高値137.24試すシナリオを想定)。尚、来週は日米の物価指標(6/30の米5月PCEデフレータ、7/1の本邦6月消費者物価指数、米6月ISM製造業景況指数の雇用項目)に注目が集まります。米国のインフレ加速が確認される場合などには、米長期金利上昇を通じて、ドル円に強い上昇圧力が加わる恐れもあるため、来週後半はアップサイドリスクに注意を要する時間帯が続きそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):134.00ー137.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/30に記録した直近高値1.0788をトップに反落に転じると、6/15に一時1.0359まで下げ幅を広げましたが、今週は再び持ち直す動きとなりました。但し、上方に一目均衡表の分厚い雲が覆い被さってきていることや、日足ベースで強い売りシグナル(弱気のパーフェクトオーダー)が点灯していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱い(続伸余地は限定的)と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(エネルギー危機への警戒感増大→ドイツ政府は国内ガス供給リスクレベルを上から2番目の「警報」レベルへ引き上げ)や、A欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締め転換は欧州経済への強い逆風。今週発表された欧州経済指標を軒並み冴えない結果)、
B米FRBによるタカ派傾斜観測(米欧名目金利差拡大に着目したユーロ売り・ドル買い圧力)、Cフランスの政局不透明感(マクロン大統領率いる与党連合が過半数を大きく割り込んだこと)など、ユーロドル相場のダウンサイドリスクを連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は6/29に予定されているドイツ6月消費者物価指数や、7/1のユーロ圏6月消費者物価指数に注目が集まります。市場予想を上回る場合は、ECBによる更なる金融引き締めスタンス強化→欧州経済への強い逆風→スタグフレーション懸念→欧州株下落→ユーロ売りの経路が意識されるため、週央以降はユーロドルの下落リスクに注意を要する時間帯が続きそうです。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0400−1.0700
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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