ドル円の急反騰に合わせてV字反騰だがドル高リラ安は継続中
〇トルコリラ円、ドル円反騰で押し上げられV反騰、高値7.82をつける
〇ドル/トルコリラは15日に17.30リラに到達後、16日17日と17.30リラの壁を超え安値更新続く
〇23日の中銀金融政策会合、利下げ再開決定ならリラ売り攻勢は一段とエスカレート
〇ゴールドマンサックスが対ドルでのトルコリラは今後さらに24%下落すると想定
〇先週末戻り高値7.82を超える場合は7.85試し、7.85超えからは7.90円台前半を目指すとみる
〇7.70を割り込む場合は先週末の反騰一巡による下落期入り、16日深夜安値7.59試しへ向かうとみる
【概況】
トルコリラ円の6月17日は7.82円から7.63円の取引レンジ、18日早朝の終値は7.79円で前日終値の7.64円からは0.15円の円安リラ高となった。
6月16日はドル円の急落に同調して6月9日以降の7.73円を下値支持線とした三角持ち合いから下放れとなり、さらに5月26日安値7.71円も割り込んで7.59円まで安値を切り下げて12月23日高値11.14円以降の安値を更新したが、6月16日深夜からドル円が反騰したことに押し上げられてV反騰となり高値で7.82円を付けて前日の急落分を解消した。
ドル円は6月15日午前高値で135.58円を付けて2021年1月6日安値102.57円以降の最高値としたが、その後はFOMCでの0.75%利上げ発表を材料消化として下落に転じ、16日夜のスイスや英国の利上げなどによるドル安継続で16日深夜安値131.48円まで4.10円の円高ドル安となっていた。しかし17日の日銀金融政策決定会合を控えて再び買い戻し優勢となり日銀の金融緩和継続決定から続伸して17日深夜には135.42円を付けて直前2日間の下げ幅をほぼ解消した。トルコリラ円はドル/トルコリラにおけるドル高リラ安基調は変わらなったもののドル円のV字反騰とほぼ同調した動きとなった。
週間では6月10日終値7.83円から0.04円の円高リラ安だった。
【ドル/トルコリラは週末も終値の最安値を更新】
ドル/トルコリラの6月17日は17.34リラから17.24リラの取引レンジ、18日早朝の終値は17.33リラで前日終値の17.30リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。
米FOMCによる大幅利上げを通過してからは為替市場全般がドル高一服となりユーロやポンドなどが戻したが、リラ安情勢は変わらずとしてドル/トルコリラは下落基調を継続、昨年12月20日に付けた史上最安値18.36リラには届いていないものの、日足の終値ベースでは12月17日終値16.41リラを6月2日に超え、その後も終値ベースの最安値更新を続けている。6月9日以降は1ドル17.30リラ近辺で下値支持が働いていたが6月15日に17.30リラに到達、16日、17日も17.30リラの壁を超えて安値更新が続いている。
米連銀の超大幅利上げと今後の大幅利上げ継続姿勢が鮮明となり、16日にはスイス中銀と英中銀が利上げを決定、主要国の利上げが続く中で利下げ政策を強調するエルドアン政権に対する市場の不信任感がリラ売りを助長しており、6月23日のトルコ中銀金融政策決定会合が注目される。
【6月23日のトルコ中銀MPCでは利下げもあり得るか】
6月26日にトルコ中銀の金融政策委員会(MPC)がある。
トルコ中銀は昨年9月から12月にかけて4会合連続の利下げを強行して政策金利の週間レポレートを19%から14%へと引き下げた。インフレ進行中の利下げ強行によりリラ暴落を招き、リラ安がインフレをさらに悪化させる悪循環となった。今年1月から5月までは5会合連続で政策金利は据え置かれたのだが、エルドアン政権による利下げ要請もあり、トルコ中銀は通常ならば通貨防衛で利上げをすべきところを現状維持で済ませてきたため、昨年12月に史上最安値更新後にいったん大幅に戻したところから再びリラ安が進行、毎月のトルコCPI上昇率がどんどん悪化する中で政策金利据え置きが続いたためにインフレ進行とリラ安の悪循環が再燃している。
6月6日にエルドアン大統領が利下げ政策を変更しないと強調する演説を行ったため、今回のトルコ中銀MPCにおいては市場予想の中央値は14%での据え置きだが、予想レンジは13%から14%であり利下げもあり得るとの見方もある。仮に利下げ再開を決定する場合にはリラ売り攻勢が一段とエスカレートする可能性があり、12月20日の史上最安値を再び試す可能性も考えておく必要に迫られるかもしれない。
ただし、リラ安と共に円安も進行しているため弱さの綱引きとなり、円安が勢い付いてドル高リラ安の勢いに勝る場合はトルコリラ円としてはリラ売り材料で一時的に下げても円安で持ち直すケースもあり得るところだ。
【トルコリラはあと24%下落する?】
6月17日にトルコ中銀が発表した物価や成長率見通しに関する調査では、年末時点の消費者物価上昇率は前年比64.59%となり5月時点の57.92%からさらに悪化する予想となった。ドル/トルコリラの年末予想値は18.8874リラで5月の17.5682リラから下方修正された。また政策金利に対する予想中央値は5月と変わらずの14%だった。
ゴールドマンサックスは6月17日に対ドルでのトルコリラに関して今後さらに24%の下落となり通年では44%の下落を想定するとした。同社見通しではトルコのインフレ率は5月時点の73.5%から80%に到達し、年末にかけては60%近辺に低下するとしている。
6月17日にNY原油は前日比8.03ドル安(6.8%安)の急落で110ドルを割り込んだ。ロシア制裁の長期化により資源エネルギー価格や穀物価格は今後もさらに高騰する可能性があるものの、主要国の金融引き締めや中国が感染拡大抑制のための規制完全解除へなかなか進めないために景気鈍化による需要低下感もあり、原油としては120ドル以上を売られて90ドル台序盤では買い戻される展開となっている。
トルコのインフレも資源エネルギーと穀物等の価格高騰が落ち着けばやや収まる可能性もあるが、世界規模の穀物需給見通しが夏の生育期迎えて供給不足感を強める場合や、ロシア産以外の原油などの争奪戦が本格化してくるとトルコ独自のインフレ抑制策では何ともならないことになり、政策金利の現状維持による利上げ拒否がリラ安を助長し悪性の通貨インフレが深刻化するようだと、ゴールドマンサックスの予想を超える事態にもなりかねないと思われる。民間のインフレ調査ではすでに前年比160%規模のインフレとなっているとの報道もある。
【当面のポイント、3-4か月サイクルの底打ちへ向かえるか試す】
トルコリラ円は概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで推移してきた。
昨年3月8日安値以降では6月2日安値、9月27日安値、12月20日の史上最安値、3月11日安値と底打ちしており、3月11日安値から3か月目となる6月16日安値からの反騰で6月7日高値7.99円を超える場合はこのサイクルの底打ちによる上昇期入りとして6月末から7月にかけて高値を切り上げてゆく可能性が浮上する。相対力指数は5月26日安値を割り込んだ過程で指数のボトムが切り上がる強気逆行の気配を見せており底打ちの可能性を示唆している。
しかしトルコ中銀のMPC前でありまだ決め手に欠ける。6月7日高値を超えられずに安値を更新する場合は3月11日安値から4か月目となる7月前半にかけて下げ足が早まる可能性も警戒される。今後の円安動向とトルコ中銀の金融政策決定会合に対する市場反応で明暗も分かれるところだ。
こうした状況を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.70円を下値支持線、7.85円を上値抵抗線とみておく。
(2)円安の勢い次第では、7.75円から7.70円までの範囲内では押し目買いから高値切り上げを試す可能性があるとみる。先週末の戻り高値7.82円を超える場合は7.85円試しとし、7.85円超えからは7.90円台前半(7.90円から7.95円)を目指すとみる。7.90円以上は反落警戒圏とし、その後に7.80円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)7.70円を割り込む場合は先週末の反騰一巡による下落期入りとして6月16日深夜安値7.59円試しへ向かうとみる。トルコ中銀金融政策発表からリラ安が勢い付く場合などで底割れに至れば、7.50円台前半を目指す下落期入りとみる。
【当面の主な予定】
6月20日
17:00 5月 観光客数 前年同月比 (4月 225.6%)
23:30 5月 中央政府債務 (4月 312.5億リラ)
6月22日
16:00 6月 消費者信頼感指数 (5月 67.6)
6月23日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 14.00%、予想 14.00%)
20:30 週次 外貨準備高 6/17時点 グロス (6/10時点 607.9億ドル)
週次 外貨準備高 6/10時点 ネット (6/10時点 81.5億ドル)
6月24日
16:00 6月 製造業景況感 (5月 109.4)
16:00 6月 設備稼働率 (5月 78.0%)
注:ポイント要約は編集部
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