『約6ヵ月ぶり安値圏へ下落。来週はトルコ中銀金融政策決定会合に注目』
〇今週のトルコ円、週央にかけ7.85まで上昇後7.59まで急落、引けは7.78前後
〇世界的金融引き締めによるスタグフレーション懸念、トルコ指標不冴え、CDSの上昇等が重石に
〇トルコ円主要サポート下抜けテクニカルの地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズもトルコ円相場下落材料増加
〇来週は6/23のトルコ中銀金融政策決定会合に注目
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):7.50ー8.00
今週のレビュー(6/13−6/17)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初7.83円で寄り付いた後、@トルコ4月鉱工業生産(結果+10.8%、予想+6.4%、※前年比)の良好な結果や、Aトルコ4月経常収支(結果27億4千万ドル赤字、予想32億ドル赤字)の予想比改善、B米FOMCを控えたポジション調整が支援材料となり、週央にかけて、週間高値7.85円まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線や基準線をバックに続伸が阻まれると、C世界的な金融引き締め(米FRBによる75bpの利上げに続いて、英中銀による25bp利上げやスイス中銀による50bp利上げなど)を背景とした過剰流動性相場の逆流懸念(スタグフレーション懸念が燻る中での世界的な金融引き締め→世界的なリセッション懸念→株式市場急落→新興国通貨下落)や、Dトルコとその他各国との金融政策格差(世界的な金融引き締めムードに対してトルコは利下げスタンス継続→対主要通貨でのリラ売り圧力)、
Eトルコ5年債クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の上昇継続が重石となり、週後半にかけて、週間安値7.59円(昨年12/20以来、約6ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間6/18午前4時25分現在)では、7.78円前後で推移しております。
来週の見通し(6/20−6/24)
トルコリラの対円相場は、4/28に記録した直近高値8.90円をトップに反落に転じると、週後半にかけて、昨年12/20以来、約半年ぶり安値となる7.59円まで急落しました(対ドルでは史上最安値更新)。この間、ローソク足が主要サポートポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線など)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転、弱気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の下落トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシア・ウクライナ両国と親密関係にあるトルコ経済に下押し圧力。またフィンランド・スウェーデンによるNATO加盟への反対姿勢継続に伴うNATO同盟国との軋轢懸念)や、Aトルコ中銀による利下げスタンスの明確化(トルコ5月CPIが約24年ぶり高水準を記録したにも係わらず、エルドアン大統領は先週、「現政府が利上げすることはない」「引き続き利下げしていく」とのハト派スタンスを強調)、B上記Aを背景とした実質金利の急低下(高インフレを低金利政策で対処するといった独特な金融政策理論)、C世界的な金融引き締めムードに端を発した過剰流動性相場の逆流懸念(トルコから米国への資本流出)、
Dトルコ経済の先行き不透明感、E経常赤字拡大に伴う構造的なリラ売り圧力、F外貨準備減少に伴う通貨防衛能力の一段の低下(外貨準備減少を背景に昨年12月より資本規制を開始するもその効果も徐々に剥落傾向)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は6/23に予定されているトルコ中銀金融政策決定会合に注目が集まります。政策金利の据え置きが見込まれているものの、声明文や記者会見でハト派姿勢が改めて強調される場合には、トルコリラの実質金利低下を通じて、リラ売りに拍車がかかる恐れが警戒されます(来週はトルコ中銀会合に加えて、6/22に予定されているトルコ6月消費者信頼感指数や、6/24のトルコ6月設備稼働率などにも注目)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.50ー8.00
注:ポイント要約は編集部
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