ユーロ ユーロ安とドル高とで1.03台を見に行く流れ(週報6月第2週)

ECB理事会では6月のQE終了直後の7月から利上げを開始することを決定し、その後も年内の各理事会で緩やかな利上げをしていくという方向性が示されました。

ユーロ ユーロ安とドル高とで1.03台を見に行く流れ(週報6月第2週)

ユーロ安とドル高とで1.03台を見に行く流れ

〇先週のユーロドル、ECB直後1.0774到達、先週高値越えられず1.0611まで切り下げる
〇ECB理事会7月0.25%利上げ予定、米国CPI予想超える8.6%、FRB7月0.75%利上げがコンセンサスに
〇欧州景気減速懸念、米欧金利差拡大を注視
〇今週は独仏5月CPI、ラガルドECB総裁講演、英中銀MPC政策金利発表予定
〇今週は1.0375レベルをサポートに、1.0575レベルをレジスタンスとする週とみる

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、ECB理事会までは1.07を挟んでのもみあいが続いていましたが、ドル円とともにユーロ円の買いも強まっていたため、理事会を前にした底堅さを手伝っていた印象でした。ECB理事会では6月のQE終了直後の7月から利上げを開始することを決定し、その後も年内の各理事会で緩やかな利上げをしていくという方向性が示され、おそらくは12月時点で0.25%×4回で+0.5%になる可能性が示されたと言えます。

直後には1.0774レベルと週間高値を更新しましたが、前週高値の1.0787レベルには届かなかったこともあり、利上げによる欧州の景気減速というスタグフレーションが現実のものとなる懸念からユーロは急速に水準を下げ前週安値を割り込み、金曜には米国CPIが8.6%と予想よりもかなり強い数字となったことから米金利上昇によるユーロ売りにつながり、1.05の大台目前と5月18日以来の安値圏へと沈み込んで引けました。

週明けの東京市場ではドル円が135円台を見る動きとともに1.05を割り込み改めてドル高の流れとなってきました。ユーロドルの割合が高いドルインデックスも104台に乗せ5月13日の年初来高値105.01を視野に入れる展開になってきたと言えます。今週はFOMC、英中銀MPC、日銀会合と週半ば以降に金融政策会合が続きますが、FOMCでは0.5%の利上げは織り込み済みでドットプロット(金利見通し)に先週のCPIが影響を与えるかがみどころになるかと思われます。

ECBは年内に合計1%の利上げを見込んでいますが、FRBは6・7月の2回で1%の利上げが行われるというのがコンセンサスですが、7月についてはCPIを受けて0.75%がコンセンサスとなりつつあることから、欧州の景気後退懸念だけでなく米欧金利差拡大も改めて注目する流れになってきたと言えそうです。

英中銀については0.25%の追加利上げで1.25%、日銀は緩和継続がコンセンサスではあるものの、先週金曜に財務省、金融庁とともに日銀も円安進行に懸念を示したことで、黒田日銀総裁もこれまでの円安容認スタンスを修正してくる可能性もあります。その場合、ユーロ円で円買いの動きが出てくるでしょうから、念のために注意しておきたいところです。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ユーロ安とドル高とで1.03台を見に行く流れ

年初来高値からのレジスタンスライン(青)が効いていて、先々週から先週にかけての高値圏もみ合いで抜けられずに反落してきました。現在は5月安値と6月高値の61.8%押し1.0515を下抜け、78.6%(61.8%の平方根)押しの1.0442をターゲットにしていると見られます。ユーロ売りの流れが続く場合、5月には抜けられなかった2017年1月安値の1.0340(赤の太い水平線)を試しに行く展開が考えられます。

今週はまだそこまでの下げ圧力は無いと思いますので、近づくものの試しきれない展開を考え1.0375レベルをサポートに、1.0575レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週のコラム

今週はユーロ円の日足チャートを見てみましょう。

ユーロ安とドル高とで1.03台を見に行く流れ 2枚目の画像

先週の月足チャートで考えたターゲットよりもはるかに高い水準まで見て一時144.24レベルをつけましたが、ECB理事会後のユーロの下げでユーロ円も短期的には高値を見て調整段階にあると言えるでしょう。

直近の5月安値と先週高値との38.2%押しが139.81となっていますので、今週の金融政策イベントの流れの中で一度140円の大台を試すという展開がいかにもありそうです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

6月13日(月)
15:00 英国4月鉱工業生産、貿易収支
17:00 オーストリア中銀総裁、リトアニア中銀総裁講演
20:00 デギンドスECB副総裁講演 ☆

6月14日(火)
15:00 ドイツ5月CPI ☆
15:00 英国5月失業率
18:00 ドイツ6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月ZEW景況感
26:00 シュナーベルECB理事講演

6月15日(水)
15:45 フランス5月CPI ☆
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産、貿易収支
18:15 ドイツ連銀総裁講演 ☆
21:30 スペイン中銀総裁講演
22:00 パネッタECB理事講演
22:15 オランダ中銀総裁講演
23:15 ポルトガル中銀総裁講演
25:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
27:00 FOMC結果発表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆

6月16日(木)
16:00 イタリア中銀総裁講演
16:30 スイス中銀政策金利発表 ☆
16:45 フランス中銀総裁講演 ☆
16:50 パネッタECB理事講演
17:00 スロベニア中銀総裁講演
17:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
18:30 オランダ中銀総裁、スペイン中銀総裁、ポルトガル中銀総裁講演
20:00 英中銀MPC政策金利、議事要旨発表 ☆

6月17日(金)
15:00 英国5月小売売上高
15:30 黒田日銀総裁会見 ☆
18:00 ユーロ圏5月CPI ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月30日(月)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場序盤にドイツ、フランスが休場で参加者が少ない中で買いが先行しましたがすぐに元の水準へ押してのNY市場入り。NY市場では米金利上昇によるドル買いがユーロドルを押し下げ、1.0684レベルの安値をつけ若干戻して引けました。

5月31日(火)
ユーロドルはドル円のドル高の動きに沿って欧州市場昼頃まではじり安の展開を続け、1.0652レベルまで水準を下げました。しかし9日のECB理事会に向けてタカ派な発言に期待する向きが多いことや、ユーロ円の根強い買いに支えられてNY後場には1.0714レベルまで買われて高値圏で引けました。

6月1日(水)
ユーロドルは東京市場ではドル円とともにドル買いの動きから上値が重たい展開が続きましたが、欧州市場に入り発表されたユーロ圏1〜3月期GDP改定値が予想以上に強い結果となり、ユーロは対ドル、対円で買われてNY市場前場には、それぞれ1.0749レベル、144.25レベルの高値をつけ、高値圏でもみあいのまま引けました。

6月2日(木)
ユーロドルは注目のECB理事会を前に1.07台前半でのもみあいを続け、直前にはやや売られての発表待ち。大方の予想通り6月のQE終了直後の7月に0.25%の利上げが示されました。直後は欧州の金利上昇とともにユーロ買いが先行、一時1.0774レベルを見ましたが先週高値は超えられず。ラガルド総裁会見では9月以降も緩やかな利上げとしたことで、9,10,12月理事会で0.25%ずつという市場のコンセンサスに沿った見通しを示しました。しかし利上げによるスタグフレーションが現実化するリスクを懸念して引けにかけては1.0611レベルまで大幅安となり安値引けとなりました。

6月3日(金)
ユーロドルは東京市場では動きが鈍かったものの、欧州市場では改めて前日ECB理事会での7月からの利上げ開始によるスタグフレーション懸念が再燃しユーロ売りとなりました。NY市場では予想よりもかなり強い米国CPIがきっかけとなり米金利が上昇、ドル買いの動きからユーロドルも1.0506レベルまで水準を切り下げ安値引けとなりました。

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