トルコリラ円見通し 1ドル17リラを突破、円安に勝るリラ暴落の様相(22/6/9)

トルコリラ円の6月8日は7.92円から7.79円の取引レンジ、9日早朝の終値は7.82円で前日終値の7.90円から0.08円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し 1ドル17リラを突破、円安に勝るリラ暴落の様相(22/6/9)

1ドル17リラを突破、円安に勝るリラ暴落の様相

〇昨日のトルコリラ円は7.92から7.79の取引レンジ、前日終値から0.08円の円高リラ安
〇エルドアン政権への不信によるリラ売り激しくトルコリラ円は円安を凌駕するリラ安により3日続落
〇対ドルでは1ドル17リラを突破して終値ベースでの史上最安値を連日更新
〇通貨危機への警告指標CDSレートは8日に736bpとなり2008年リーマンショック以来の高水準に
〇26日のトルコ中銀金融政策で利下げ強行か現状維持か見定めるまではリラ売り基調が続きやすい
〇7.79割れからは7.70台前半を試すとみる、7.72以下は反騰注意

【概況】

トルコリラ円の6月8日は7.92円から7.79円の取引レンジ、9日早朝の終値は7.82円で前日終値の7.90円から0.08円の円高リラ安となった。
日銀の金融緩和政策継続姿勢が繰り返し強調される中でドル円は8日夜に134円台に突入、9日午前序盤には134.50円を超える円安となり、主要なクロス円は全面高で円の独歩安の様相となっているが、高インフレ下での利下げ政策の継続を強調するエルドアン政権への不信によるリラ売りも激しく、8日は1ドル17リラを突破して終値ベースでの史上最安値を連日更新しているため、トルコリラ円は円安を凌駕するリラ安により6月6日から3日続落となった。

【1ドル=17リラ超えで終値ベースの最安値連日更新、年初来23%安】

ドル/トルコリラの6月8日は17.19リラから16.74リラの取引レンジ、9日早朝の終値は17.13リラで前日終値の16.74リラからは0.39リラの大幅なドル高リラ安となった。
対ドルでの史上最安値は12月20日の18.36リラだが、日足の終値ベースでは12月17日の16.41リラだったところ、6月2日終値16.45リラで最安値を更新、6月6日から7日、8日と連日の最安値更新となっている。
トルコ政府によるリラ預金の為替差損補填政策発表から一時的な急伸で付けた12月23日高値10.06リラを起点とした下落基調が続いているが、1月から2月後半にかけては1ドル14リラが壁となっていたところウクライナ戦争勃発で突破され、3月11日に1ドル15リラを付けた後もしばらくは安値更新を回避していたものの5月5日のトルコ4月物価上昇率発表をきっかけに突破され、6月2日までは1ドル16.50リラ手前での攻防が続いていたが、6月3日にこれも突破してリラ売りはさらに加速してきた。

さらに6月6日のエルドアン大統領による利下げ政策の継続を強調する演説が火に油を注ぐこととなって1ドル17リラ台へと暴落的な下げに入っている。
年初来の下落率は23%安、通貨危機への警告指標でもあるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートは6月8日に17ベーシスポイント上昇して736bpとなり2008年のリーマンショック発生以来の高水準に達した。

【6月26日のトルコ中銀MPCへ安値試し続くか】

6月3日にトルコの5月消費者物価上昇率が前年比で70%を超える高進となりハイパーインフレへの懸念が強まる中でエルドアン大統領が6月6日に「金利の低下が生産と輸出及び雇用を促進して経常収支を黒字化し、トルコ経済を強くすることで最終的には通貨リラを安定させて物価上昇を抑制する」「政府は決して利上げをせず、逆に金利を下げ続け、低金利を利用して投資を拡大することを促進する」と演説したことでリラ売り攻勢が激化した。
エルドアン大統領はこれまでも利下げ政策に同調しない中銀総裁や副総裁らを相次いで解任し、現在のカブジュオール中銀総裁はエルドアン大統領への忖度により昨年9月から12月まで4会合連続で利下げを強行、利下げの結果がインフレを一段と悪化させる中でも1月から5月まで5会合連続で利上げせずに現状維持を繰り返してきた。6月6日の大統領演説により6月26日に中銀が利下げに踏み切る可能性も出てきたといえる。

トルコリラ円は概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで推移しており、昨年12月20日底から3か月目の今年3月11日安値で前回のサイクルボトムを付けている。4月28日までは円安に押し上げられて戻していたが戻り一巡により下落期に入っているところと思われ、安値形成期の目安としては3月11日安値から3か月目の6月中旬、長引く場合は7月前半にかけての間と想定されるので、6月26日のトルコ中銀金融政策で利下げが強行されるのか現状維持にとどまるのかどうかを見定めるまではリラ売り基調が続きやすいと思われる。
金融緩和から抜け出せず円安に歯止めがかからない状況とリラ安の攻防だが、リラ安が円安に勝るレベルに入ってきた印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月3日夜の急騰で6月2日早朝高値を超え、その後の急落で6日夜に7.87円まで下落してから再び7.95円超えへ反騰したため、6月7日午前時点では5月31日夕安値から5日目となる6月6日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期は8日夜から10日夜にかけての間と想定したが、乱高下が続いているので7.92円割れからは弱気転換注意として6日夜安値試しとした。
6月8日朝安値で6日夜安値に迫ったために8日午前時点では既に弱気サイクル入りしている可能性があるとしたが、8日夕刻への急落で底割れとなったため、6月4日早朝高値と6月7日午後高値をダブルトップとした弱気サイクル入りとして9日夜から13日夜にかけての間への下落を想定する。強気転換には7.90円を超えるような反騰が必要とみて7.90円以下での推移中は一段安警戒とみる。

60分足の一目均衡表では、6月8日早朝への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落し、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとし、先行スパンを超えないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は6月8日夕刻への急落時に20ポイント台へ低下、その後の戻りも40ポイント台にとどまっているので、50ポイント以下での推移中はもう一段安余地ありとみる。相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られる場合は反騰注意とし、50ポイント超えからはいったん戻しに入るとみて60ポイント台への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.79円を下値支持線、7.90円を上値抵抗線とみる。
(2)7.90円手前は戻り売りにつかまりやすいところとし、7.79円割れからは7.70円台前半(7.75円から7.70円)を試すとみる。7.72円以下は反騰注意とするが、7.85円以下での推移中か、直前安値から0.10円近い反騰が見られないうちは10日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.90円超えからは7.93円前後への反騰とみるが、その後に7.85円を割り込むところから下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

6月9日
 20:30 週次 外貨準備高 6/3時点 グロス (5/27時点 612.9億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/3時点 ネット (5/27時点 121.9億ドル)
6月10日
 16:00 4月 失業率 (3月 11.5%)
6月13日
 16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -1.8%)
 16:00 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 9.6%)
 16:00 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.3%)
 16:00 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 2.5%)
 16:00 4月 経常収支 (3月 -55.54億ドル)
6月15日
 17:00 5月 財政収支 (4月 -517.7億リラ)
6月23日
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 14.00%)

注:ポイント要約は編集部

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