ドル円見通し 日銀の金融緩和継続姿勢が繰り返し強調され134円台に到達(22/6/9)

ドル円は6月8日夜に134.47円へ一段高となった。

ドル円見通し 日銀の金融緩和継続姿勢が繰り返し強調され134円台に到達(22/6/9)

日銀の金融緩和継続姿勢が繰り返し強調され134円台に到達

〇ドル円、8日夜に134.47へ一段高、連日にわたり1円ずつ水準を切り上げる展開
〇昨年1月底以降では最大級の上昇角度での円安ドル高推移が続く
〇金融緩和継続姿勢や輸入インフレと消費低迷及び経常収支悪化による円安感の拡大が背景
〇黒田日銀総裁「賃金が上昇しやすい経済環境の醸成に貢献したい」と金融緩和継続を改めて強調
〇当面の重要イベントは9日ECB定例理事会、10日米5月消費者物価指数、14-15日米FOMC
〇134円以上での推移中か一時的に割り込んでも回復するうちは135円を試すとみる
〇133.60割れからは133円前後への下落を想定するが、133.20以下は反騰注意

【概況】

ドル円は6月8日夜に134.47円へ一段高となった。5月9日に131.34円を付けて昨年1月6日底102.257円以降の最高値としたところから5月24日夜安値126.35円まで4.99円の調整安が入ったが、5月30日から反騰入りを鮮明として、6月1日深夜に130円、6月6日に131円突破から132円へ到達、7日には133円を付け、8日に134円台へ乗せるなど、連日にわたり1円ずつ水準を切り上げるような展開を続けている。
米10年債利回りが5月9日の3.20%をピークとした調整を終了して再び騰勢を回復して8日には3%台へ戻したこと、日銀黒田総裁らの金融緩和継続姿勢、原油上昇による輸入インフレと消費低迷及び経常収支悪化による円安感の拡大が背景だが、昨年1月底以降では最大級の上昇角度での円安ドル高推移が続いている。
既に2002年1月31日天井135.15円に迫っているが、過去の目安となる高値として1998年8月11日天井の147.69円を試す可能性も現実味が出てきている印象だ。

【日銀黒田総裁、金融緩和継続を連日繰り返す】

黒田日銀総裁は6月8日の衆院財務金融委員会において6月6日の講演で「家計が値上げを受け入れている」と述べたことについて批判が殺到した状況について「表現は全く適切でなかった。撤回する」と陳謝した。ただ、物価高は国際的な商品市況高騰の影響によるものとし、「良い物価上昇ではなく悪い物価上昇であり長続きしない」とし、「現在の金融緩和を続けていくことで賃金が上昇しやすい経済環境の醸成に貢献していきたい」として金融緩和継続を改めて強調した。
また夕刻の英FT紙主催イベントにオンラインで参加したところでも、「現在の物価上昇はエネルギー価格上昇によるもので持続的でない」、「金融政策は2%物価目標を安定的持続的に実現すること」と述べ、最近の円安については「円はウクライナ情勢や輸入業者の実需、日米金利差の影響で大幅に下落している」としたが「為替は中央銀行の政策目標ではない」と述べた。

黒田総裁は6日の講演で「日本経済は資源価格上昇による下押し圧力を受けており金融引き締めを行う状況にはまったくない」とし、円安についても「急激な変動ではなく安定的な円安方向であれば経済全体としてはプラスに作用する可能性が高い」と述べてドル円の一段高を招くトリガーとなったが、その後の7日、8日の発言も円安を加速させており、円安への危機感は強く見られず、円安にブレーキを掛けるという市場へのけん制姿勢も見られない。
当面の重要イベントとしては、6月9日のECB定例理事会、6月10日の米5月消費者物価指数、6月14-15日の米FOMC、6月16日の英MPC(金融政策委員会)、6月16-17日の日銀金融政策決定会合と続く。

【米10年債利回りは3%台回復】

6月8日の米10年債利回りは前日比0.06%上昇の3.03%、一時3.04%をつけた。30年債利回りは0.05%上昇の3.18%、2年債利回りは0.05%上昇の2.78%。
米10年債利回りは5月9日に3.20%を付けたところから5月26日の2.70%まで調整的な低下を続けていたが、インフレの高止まりと先行きの加速懸念を背景に米連銀による大幅利上げが年後半も続く可能性が再認識されて反騰に転じている。2年債利回りは5月11日につけた2.86%が直近のピークだが、終値ベースでは5月2日の2.73%がパンデミック以降の最高値であり既に超えてきている。
主要国の金融引き締めも徐々に強化されていることで米長期債利回り動向が必ずしもドルの強弱についての決定要因にならない局面もあるが、目立った上昇時にはドル全面高を引き起こし、特に金融緩和から抜け出せない日銀姿勢との対比を反映した日米金利差拡大局面ではドル円を大きく押し上げる要因となる。

6月8日のNYダウは前日比269.24ドル安、ナスダック総合指数は88.96ポイント安と下落した。米10年債利回りが金融引き締めによる圧迫感を示す目安の3%を超えたこと、NY原油が120ドルを超えて上昇基調を強めていることでのインフレと消費低迷懸念が背景だが、通常はさほど材料にならない米抵当銀行協会(MBA)による週間の住宅ローン申請数が住宅ローン金利の上昇を背景に凡そ22年ぶり低水準となり住宅市場への陰りも意識された。株安や景気低迷ならリスク回避で円高反応を見せるというのが以前の市場態度であったが、現状は主要通貨の中で最も弱い通貨が円となっているため株安による円高反応は見られないようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月24日夜安値からの持ち合い終点となった5月27日夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして5月31日午前から6月2日午前にかけての間への上昇を想定してきたが、6月2日夜安値へいったん反落してから一段高に入ったために6月7日午前時点では6月2日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクルとして6月7日の日中から9日午前にかけての間への上昇を想定した。
6月8日夜に134円台へ到達して9日午前もさらに高値を切り上げているため、6月2日夜安値から3日目となる6月7日深夜安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしたと仮定し、高値形成期を10日午後から14日午後にかけての間へと延長する。弱気転換には直近の高値から1円を大きく超える急落の発生が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では6月3日夜への上昇で遅行スパンが好転し、その後も好転を維持して先行スパンを上抜いた状況も継続しているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンが悪化するところからはいったん調整安に入るとみるが、先行スパンを上回るうちは5月後半からの上昇基調の範囲としてその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とみる。

60分足の相対力指数は6月2日深夜、3日深夜、6日深夜、7日午後、8日夜の高値形成時に80ポイントを繰り返しつけているが、6月2日夜以降は徐々に指数のボトムが切り上がっている。80ポイント台中盤では反落注意とするが60ポイント台では買われやすく、弱気転換には50ポイントを割り込む低下が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月8日夜安値133.60円を下値支持線、135円を上値抵抗線とする。
(2)134円以上での推移中か一時的に割り込んでも回復するうちは135円を試すとみる。135円台序盤では売られやすいと注意するが、勢い付く場合は135円台後半を目指すとみる。
(3)133.60円割れからは133円前後への下落を想定するが、133.20円以下は反騰注意とし、その後の134円を回復するところからは上昇再開とみる。

【当面の主な予定】

6/9(木)
未 定 (中) 5月 貿易収支・米ドル建て (4月 511.2億ドル、予想 580.0億ドル)
未 定 (中) 5月 貿易収支・人民元建て (4月 3250.8億元、予想 4000.0億元)
20:45 (欧) 欧州中銀 政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、定例会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.0万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 130.9万人、予想 130.5万人)
26:00 (米) 財務省30年債入札

6/10(金)
アジア安全保障会議(6/12まで)
07:45 (NZ) 1-3月期 製造業売上高 前期比 (10-12月 12.0%)
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前月比 (4月 1.2%、予想 0.5%)
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前年同月比 (4月 10.0%、予想 9.9%)
10:30 (中) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 2.1%、予想 2.2%)
10:30 (中) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 8.0%、予想 6.5%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.3%、予想 0.7%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 8.3%、予想 8.3%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 0.6%、予想 0.5%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 6.2%、予想 5.9%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大消費者信頼感指数速報値 (5月 58.4、予想 58.3)
27:00 (米) 5月 月次財政収支 (4月 3082億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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