トルコリラ円見通し 7営業日続落、ドル円の急落とリラ安重なる
〇トルコリラ円、円高とリラ安の両面から押され、5/12は8.28まで一段安となる
〇ドルストレートでのドル高が加速し対ドルでリラ安継続の一方、ドル円が127.50へ急落したことが背景
〇対ドル、5/12は15.41から15.26の取引レンジ、ドルストレートでドル全面高となりリラも売られる
〇主要国中銀の量的緩和縮小が投資マネーの逆流招き、利上げできないトルコリラの弱さ目立つ状況
〇トルコの外貨準備高、グロスでは若干増加するも、ネットでは減少
〇8.28割れからは、8.20前後への下落を想定する
〇8.40を超える場合は8.45前後への上昇を想定するが、8.45以上は反落警戒とする
【概況】
トルコリラ円の5月12日は8.51円から8.28円の取引レンジ、13日早朝の終値は8.33円で前日終値の8.48円からは0.15円の円高リラ安となった。
ドル円の大上昇に押し上げられる形で4月28日高値8.88円まで高値を伸ばし、4月30日未明に8.70円までいったん下げた後も8.70円を下値支持線、8.80円前後を上値抵抗線とした持ち合いでの推移だったが、5月9日に8.70円を割り込み持ち合い下放れとなったところから下げ足が早まり、対ドルでも1ドル15リラの壁を超えてリラ安が加速したことにより5月11日まで6営業日続落となり11日には8.45円まで安値を切り下げていた。
5月12日は欧米の長期債利回りが揃って大幅低下する中でユーロドルの急落などドルストレートでのドル高が加速して対ドルでのリラ安が継続する一方でドル円が127.50円まで急落したため、円高とリラ安の両面から押されて8.28円まで一段安した。その後は8.30円台へ戻して下げ一服となっているものの、3月11日からの上昇一巡による下落期入りという印象が一段と強まった。
【対ドルでは15.46リラへ安値を更新】
ドル/トルコリラの5月12日は15.41リラから15.26リラの取引レンジ、13日早朝の終値は15.36リラで前日終値の15.30リラからは0.06リラのドル高リラ安となった。ベンダーによっては15.46リラの安値提示も見られた。
12日午後の英3月GDPがマイナスに転落したこと、フィンランドがNATO加盟を正式申請したことでロシアとNATOの緊張感が増大したこと、ウクライナ経由のロシア産天然ガス供給が一部停止していることなどによる欧州・英国への景気圧迫感が拡大したこと、米連銀による金融引き締めがパンデミック発生後の金融緩和で大上昇していた米国株の調整局面入りを招く中でNYダウが6日続落となるなど下げ足が早まったこと、アジア、欧米の株安が株売り・債券買いを招いて欧米等主要国長期債利回りが大幅低下したこと、これらを背景にドルストレートではドル全面高となりトルコリラも売られた。
主要国中銀が金融引き締めに走る中で量的緩和縮小が投資マネーの逆流を招いており、新興国通貨の中でも高インフレ下で利上げできないトルコリラの弱さが目立つ状況にあり、5月5日の4月トルコ消費者物価上昇率の上ブレからリラ売りが勢い付いている。
【トルコの外貨準備高 ネットで減少】
5月12日夜に発表されたトルコの週次外貨準備高は5月6日時点のグロスが660.2億ドルとなり4月29日時点の654.0億ドルから若干増加したものの、ネットでは149.9億ドルとなり4月29日時点の170.1億ドルから20億ドル強の大幅減少となった。
3月11日に1ドル15.00リラを付けた後は新たな安値更新がしばらく回避されて横這いの推移が続いたため、トルコ中銀が15リラを防衛ラインとしてリラ安を抑制してきた印象だったが、5月9日にこの防衛線は突破されてリラ安が加速している。トルコ中銀が市場介入する場合には公式な介入宣言をすることは少ないが非公式な介入を行っている結果としてネットの外貨準備高が減少している可能性も指摘される。通貨スワップ協定によりグロスでの外貨準備高は十分に見えるがネットでは脆弱な水準にあり、中銀が市場介入でリラ安に歯止めをかけようとするのも難しいところだ。
トルコ中銀の次回金融政策決定会合は5月26日でまだ先だ。取引への規制やリラ安阻止へ向けた新たな政策姿勢を示さないことには利上げ催促的なリラ売りもしばらく続きやすいと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月6日夜安値から9日午後高値へ戻した後の急落で底割れしたために、10日午前時点では5月9日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして11日夜から13日夜にかけての間への下落を想定した。
5月11日夜へ続落した後も安値圏にとどまっていたため12日午前時点では引き続きボトム形成中としたが、12日夜へ大幅続落した後にやや戻しているため、8.40円を超えないうちは13日夜から16日朝にかけての間への下落余地ありとみるが、8.40円超えからは強気サイクル入りとして13日午後から16日午後にかけての間への上昇を想定する。ただしいったん強気転換した後に8.35円を割り込む場合は下落再開注意とし、12日夜以降の安値を更新するところからは新たな弱気サイクル入りとする。
60分足の一目均衡表では、5月9日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落し、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので、遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、安値更新を回避して進めば遅行スパンは好転しやすくなると注意し、遅行スパン好転からは戻りを試す流れとみる。ただし先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンがその後に悪化するところから下げ再開と考える。
60分足の相対力指数は5月10日から12日夜にかけての下落に対して指数のボトムがほぼフラットとなる強気逆行気配となっているので50ポイント超えからは60ポイント台を目指す上昇を想定するが、50ポイントを超えないかわずかに超えてから35ポイントを割り込む場合は下げ再開としてもう一度20ポイント前後を試すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.28円を下値支持線、8.40円を上値抵抗線とみる。
(2)8.37円から8.40円手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。8.28円割れからは8.20円前後への下落を想定する。8.20円以下は反騰注意とするが、8.35円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.40円を超える場合は8.45円前後への上昇を想定するが、8.45円以上は反落警戒とし、その後に8.35円を割り込むところからは下げ再開注意とする。
【当面の主な予定】
5月13日
16:00 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 4.4%)
16:00 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 13.3%、予想 6.5%)
16:00 3月 小売売上高 前月比 (2月 0.5%)
16:00 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 6.2%)
5月16日
16:00 3月 経常収支 (2月 -51.54億ドル、予想 -53.7億ドル)
17:00 4月 財政収支 (3月 -690億リラ)
注:ポイント要約は編集部
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