ドル円見通し 年初来最大の日足大陰線、前夜高値から3円を超える下落(22/5/13)

ドル円は5月12日夜に127.50円まで急落した。

ドル円見通し 年初来最大の日足大陰線、前夜高値から3円を超える下落(22/5/13)

ドル円見通し 年初来最大の日足大陰線、前夜高値から3円を超える下落

〇ドル円、5/12夜127.50まで急落、5/11夜高値130.81からは3.31円の大幅下落
〇ユーロ・ポンドが下落しドルストレートでのドル高加速、クロス円が全面安となりドル円も円高が加速
〇昨日発表の米PPIは前月から低下、前日発表のCPIもPPIもピークが近い印象を与えつつも高水準にある
〇米長期債利回りは大幅続落、10年債利回りは4日続落、NYダウは6日続落、株売り債券買いの動き反映
〇129円以下での推移中は一段安余地ありとし、4/17安値127.50割れからは126.93を試しとみる
〇129円超えからは、129.50前後へ向かう可能性が出てくるとみる

【概況】

ドル円は5月12日夜に127.50円まで急落した。5月11日夜の米CPI発表後に130.81円まで戻したところから失速して12日未明に129.43円をつけて5月9日午後高値131.34円以降の安値を更新した後は129円台後半を中心とした揉み合いとなっていたが、15時過ぎに安値更新から急落に転じて129円を割り込み、さらに夜には127.50円をつけて11日夜高値からの下げ幅は3.31円、5月9日高値からは3.84円の大幅下落となった。
12日深夜以降は売られ過ぎの反動で128円台へ戻しているが、日足における前日比の下げ幅は1.84円で11月26日の2.21円以来であり、当日の高安幅では11月26日の2.34円を超える2.55円となる大陰線となった。

12日15時発表の英3月GDPがマイナスに転落し、フィンランドがNATO加盟申請を表明、米長期債利回りが11日夜の米CPI発表後の低下を継続、株安による債券買いで欧米長期債利回りが揃って大幅低下となり、ユーロやポンドが下落する中でドルストレートでのドル高が加速、クロス円が全面安となりドル円においても円高が加速する展開となったが、NYダウが大幅続落で開始してから下げ幅を削ったことで為替市場もやや落ち着いた印象だ。

【米PPIは前月から低下】

米労働省が5月12日に発表した4月のPPI上昇率は全体の前月比が0.5%で市場予想と一致、3月の1.6%から大幅に鈍化した。前年同月比は11.0%で予想の10.7%を上回ったが3月の11.5%からは低下した。コア指数の前月比は0.4%で予想の0.6%を下回り3月の1.2%から大幅に鈍化、前年同月比は8.8%で予想の8.9%を下回り3月の9.2%から鈍化した。
11日夜に発表された4月CPIも前年同月比8.3%上昇となり市場予想の8.1%を超えたものの3月の8.5%からは伸びが鈍化、前月比も0.3%上昇で予想の0.2%を超えたものの3月の1.2%から鈍化した。依然としてCPIもPPIもピークが近い印象を与えつつも高水準にあり、米連銀による金融引き締めが続く流れは変わらず、今後のサプライチェーン混乱やロシア制裁の影響等による国際商品上昇再開次第では利上げペースが加速する可能性もあるところだ。

米連銀のパウエル議長は5月5日未明の前回FOMC後の会見で述べたように6月と7月に0.50%ずつの利上げを想定しており、0.75%の利上げは検討していないとしつつも12日のインタビューへの応答では「(インフレ等の状況次第で)より少なく、あるいはより多くの利上げ」を行う用意があるとしている。

【米10年債利回りは4日続落、NYダウは6日続落】

インフレ指標が高止まりしているものの米長期債利回りは12日に大幅続落した。10年債利回りは前日比0.07%低下の2.86%となり5月9日に付けた昨年来最高値の3.20%から低下を続けており、日足では4日間の続落で一時は2.81%まで低下した。30年債利回りも0.03%低下の3.02%、2年債利回りは0.07%低下の2.57%となった。
米長期債利回りの低下は米連銀による0.75%利上げへの引き締め加速はなさそうだとの市場の受け止めと利回り益確定狙いの買いに加え、NYダウが6日続落するなど米国株の調整安が続いていることで株売り債券買いの裁定が働いている側面もある。また12日は英国やドイツの10年債利回りが大幅低下したが、ロシア制裁による欧州景気への悪影響がフィンランドのNATO加盟申請により緊張と悪影響が増すとの懸念で安全資産として株売り債券買いへ向かったことも反映している。

5月12日のNYダウは前日比103.81ドル安と下落して6営業日続落となった。一時は600ドル安を超える下落だったところから下げ幅を大きく削り、ナスダック総合指数は大幅続落後の買い戻しで前日比6.72ポイント高とわずかにプラス圏へ戻したが、NYダウは1月5日の史上最高値からの下落基調が継続して昨年3月序盤の水準まで失速しており、ナスダック総合指数も11月22日の史上最高値からの下落が続いて既に一昨年11月の水準まで低下して昨年の上昇分を解消している。
中国の感染抑制への規制強化が新たなサプライチェーン停滞を招き中国景気減速をもたらしていること、ロシア制裁の欧州経済への悪影響がウクライナ経由でのロシア産天然ガス供給の一部停止やフィンランドのNATO加盟申請とロシアの反発等により状況がさらに悪化しかねないこと、米国も雇用改善と需要拡大によるインフレ抑制へ向けた金融引き締めが本格化したことで過剰流動性の低下=投機マネーが逆流することにより大きな調整局面に入っている。

ドル円は日銀の金融緩和維持と米連銀による金融引き締めへの転換による日米長期金利差の拡大を背景に大上昇してきたが、欧米の長期債利回りが揃って低下し始めたことと株安が進行していることで3月からの大上昇一巡でいったん仕切り直しの調整に入っている印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月11日夜にいったん戻したところから一段安しているため、11日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして16日夕から18日夜にかけての間への下落を想定する。強気転換には129円台回復からさらに高値切り上げを続ける反騰が必要と思われるので、129円以下での推移中は一段安警戒とみる。

60分足の一目均衡表では5月11日夜高値からの反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いている。遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、遅行スパンが一時的に好転しても先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は5月12日夜に20ポイント台序盤へ低下してから40ポイント台へ戻したが50ポイントには届かずにいる。50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとし、再び20ポイント前後を試すとみる。強気転換には50ポイント超えから続伸するような上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月12日夜安値127.50円を下値支持線、129.00円を上値抵抗線とする。
(2)129円以下での推移中は一段安余地ありとし、127.50円割れからは4月27日安値126.93円を試し、さらに126円台中盤(126.70円から126.30円)へ向かう可能性もあるとみる。127円以下は反騰注意圏だが、129円以下での推移か、直前安値から1.50円を超えるような反騰が見られないうちは一段安警戒とする。
(3)129円超えからは129.50円前後へ向かう可能性が出てくるとみるが、129円台前半では戻り売りにつかまりやすいと注意し、その後に128.50円を割り込むところからは弱気転換注意とみる。

【当面の主な予定】

5/13(金)
11:00 (豪) ブロック豪中銀総裁補、パネル討論会
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.7%、予想 -2.0%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 2.0%、予想 -1.1%)
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 2.6%、予想 0.6%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 4.5%、予想 0.7%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (4月 65.2、予想 64.0)
24:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
25:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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