円の全面安と対ドルでのリラ買い戻しで4日続伸
〇トルコリラ円、17日早朝終値8.09で前日から0.05円の円安リラ高、11日から4連騰に
〇対ドルでのリラ買い戻し継続、トルコリラ円は円安とリラ高両面から押し上げられる
〇トルコ中銀17日20時に政策金利発表、今回も現状維持の予想
〇ウクライナ停戦協議不調なら地政学的に近いトルコリラへの売り圧力も再び増す可能性に留意
〇8.17超えからは8.20台前半への上昇を想定、8.23以上は反落警戒
〇8.10割れからは8.00台中盤への下落を想定、8.03以下は反騰注意
【概況】
トルコリラ円の3月16日は8.12円から8.01円の取引レンジ、17日早朝の終値は8.09円で前日終値の8.04円からは0.05円の円安リラ高となった。
3月17日未明の米FOMCが市場予想通りに0.25%の利上げを決定したが年内の利上げ回数を今回も含めて7回として12月時点の3回から大幅に引き上げたことなどから米長期債利回りが上昇、日米金利差拡大からドル円は119円台に到達した。またイベント通過とロシア・ウクライナ停戦協議進展期待からユーロやポンド等が買われ、対ドルでのリラ買い戻しの動きも継続したことでトルコリラ円は円安とリラ高の両面から押し上げられ、3月11日からは4連騰となった。
【ドル/トルコリラ動向 リラ買い戻し続く】
ドル/トルコリラの3月16日は14.75リラから14.62リラの取引レンジ、17日早朝の終値は14.60リラで前日終値の14.70リラからは0.10リラのドル安リラ高となった。
ウクライナ情勢と原油高騰等を背景に3月1日から3月10日まで8日続落となり3月11日には14.99リラまで安値を切り下げたが、その後はリラ売り一服で買い戻し優勢となり、ロシア・ウクライナの停戦協議進展への期待から株式市場が持ち直したことでリスク選好感が拡大し、地政学的に近い通貨としてのトルコリラもリスク回避的な売りが収まって上昇している。
米連銀は利上げを再開したが、イベント通過感と停戦協議進展期待が膨らんだことで16日の為替市場はクロス円の全面安と共にドルストレートではドル安反応となりユーロやポンドが買われたが、原油安に圧迫されていた豪ドルが反騰、地政学的に遠くロシアとの通商依存度の低いNZドルも上昇、3月10日から持ち合い推移だった南アランドも持ち合い上放れで上昇、メキシコペソも一段高となったこともリラ買いを助長した。
【金融引き締めへ進めない日銀、弱い円の印象強まる】
米連銀はFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)において政策金利を0.25%引き上げて2018年12月以来の利上げ再開に踏み切った。市場予想通りではあったが、今回を含めた2022年の利上げ回数を12月時点の3回から7回へと大幅に引き上げ、2023年も4回の利上げを想定するとした。また2023年の政策金利見通しの中央値は2.8%とし、2022年10-12月期のインフレ見通しを12月時点の2.6%から4.3%へ上方修正した。
3月17日夜には英中銀の金融政策決定会合もあり、現状の0.50%から0.75%への引き上げが予想されている。また日銀も金融政策決定会合を17日から開催して18日には結果を示すが、黒田総裁在任中の金融緩和継続姿勢は変わらないと思われる。
主要中銀が利上げに踏み切る中で日銀の出遅れ感が円安を加速させており、トランプ・ラリーによる急騰で付けた2016年12月高値118.65円を超えたことでチャート上の上値目途となる高値は2015年11月18日高値123.73円、同年6月5日高値125.84円まで見当たらなくなり120円台を目指す声も強まってきている。輸入インフレが深刻化する一方で食品エネルギーを除くコアの物価上昇率はまだ低く賃金の伸びが鈍い中では金融引き締め姿勢を示すことが景気回復を妨げるとして日銀は金融緩和から抜け出せない状況にあり、2021年1月の102.57円を起点とした円安も円の弱さを示す円安感で継続している印象だ。トルコリラ円にとっては円安による押し上げ効果も大きくなっている。
【トルコ中銀は現状維持予想】
トルコ中銀は3月17日20時に政策金利の発表を行う。9月から12月まで4回連続の利下げを強行したものの高インフレが収まらない状況となったことで中銀とエルドアン政権は利下げ政策姿勢を維持しつつも当面して1-3月期は様子を見ると繰り返し強調してきたため、今回も現状維持と予想されている。
利下げが回避されていることはトルコリラへの下支えではあるが、主要国が引き締めに走る中で中長期的な利下げ政策を維持することでスタンスの差も一層目立つことになる。インフレ進行状況によっては引き締めもあり得るとの姿勢を示さなければ利上げ催促的なリラ売りを招く可能性もあるところだ。ネバティ財務相はインフレは今後収まってゆくとの楽観的な見通しを3月16日にも語っており、エルドアン政権としてはインフレのピークアウトを見定めて利下げ再開へ進みたい姿勢を堅持している印象だ。
ウクライナ情勢についても市場は当面の最大リスクを織り込んだとして停戦協議進展への期待感からリスクオン優勢へと心理状態が改善しているようだが、停戦協議不調となれば地政学的に近いトルコリラへの売り圧力も再び増す可能性がある点にも留意したい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月10日夜安値からの下げ渋りにより11日午前時点では7.87円を超えるところからは強気サイクル入りとし、11日夜に7.87円を超えて14日に8円到達まで続伸したために3月10日夜安値を直近のサイクルボトムした強気サイクル入りとしてきた。
3月17日早朝へと一段高しているので引き続きサイクルトップ形成中とみるが、前回ボトムから4日を経過しているので16日夕刻安値を起点として既に新たな強気サイクル入りしていると思われる。このため、16日夕安値8.01円を割り込まないうちは18日夜から22日夜にかけての間への上昇継続となる可能性ありとする。8.07円割れを弱気転換注意とし、16日夕安値を割り込むところからは弱気サイクル入りとして21日夕から23日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、3月11日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパン悪化からは下落期入りとみて安値試し優先とし、その際は先行スパンの上下限を試すとみるが、トルコ中銀金融政策発表から売られる場合は先行スパンからの転落もあり得るところと注意する。
60分足の相対力指数は3月17日早朝への上昇で70ポイントを超えてきたため80ポイントを目指す流れとみる。相場が小調整を入れてから一段高する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が発生する場合及び60ポイントを割り込む反落の場合はいったん下げに入るとみて40ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.10円を下値支持線、8.17円を上値抵抗線とする。
(2)8.10円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは一段高余地ありとし、8.17円超えからは8.20円台前半(8.20円から8.25円)への上昇を想定する。8.23円以上は反落警戒とするが、8.10円以上での推移なら18日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.10円割れからは8.00円台中盤(8.07円から8.03円)への下落を想定する。8.03円以下は反騰注意とするが、下げ足が早まる場合は8.00円試しへ下値目途を引き下げる。また8.07円を割り込んでからも8.10円以下での推移が続く場合は18日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3月17日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現状 14.00%、予想 14.00%)
20:30 週次 外貨準備高 3/11時点 グロス (3/4時点 681.8億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 3/11時点 ネット (3/4時点 181.5億ドル)
3月21日
17:00 2月 観光客数 前年同月比 (1月 151.4%)
23:30 2月 中央政府債務 (1月 284.4億リラ)
3月23日
16:00 3月 消費者信頼感指数 (2月 71.2)
注:ポイント要約は編集部
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