ドル円見通し 原油急落、株高・長期債利回り上昇で116円手前を抵抗とした持ち合い放れを試す(22/3/10)

ドル円は3月9日夜に115.94円へ上昇、2月15日高値115.87円を超えて2月24日安値114.39円以降の高値を更新した。

ドル円見通し 原油急落、株高・長期債利回り上昇で116円手前を抵抗とした持ち合い放れを試す(22/3/10)

原油急落、株高・長期債利回り上昇で116円手前を抵抗とした持ち合い放れを試す

〇ドル円、9日夜に115.94へ上昇し2/15高値超え、2/24安値以降の高値更新
〇ウクライナ情勢を背景に上昇した原油相場が当面のリスク織り込み急落に転じる
〇欧米株反騰、ユーロ戻し、米長期債利回り上昇でドル円もリスク選好の買い優勢
〇NYダウは前日比653.61ドル高、ナスダックは460.00ポイント高と大幅反騰
〇115.54以上での推移中は上向き、116円超えから続伸なら116円台中盤を目指すとみる
〇115.15以下は反発注意、115.54を割り込んでの推移なら11日も安値試しへ向かいやすい

【概況】

ドル円は3月9日夜に115.94円へ上昇、2月15日高値115.87円を超えて2月24日安値114.39円以降の高値を更新した。2月15日以降は116円手前を上値抵抗線として114円台中盤を下値支持線としたボックス型持ち合いを形成してきたが、3月9日深夜に115.54円まで反落したところから持ち直しており、116円台乗せ及び持ち合い上放れを試す位置取りとなっている。
3月9日はウクライナ情勢及びロシア制裁を背景として大上昇してきた原油相場が当面のリスクを織り込んだとして急落に転じたことをきっかけに国際商品市場が全面安となり、欧米株が反騰入り、為替市場では地政学的リスクから下落基調が続いてきたユーロが戻し、株高債券安による米長期債利回りの上昇も重なったことでドル円もリスク選好的な買い優勢で3月4日深夜安値114.63円からの切り返しを継続した。

【原油相場急落、国際商品全面安、欧米株反騰、米長期債利回り上昇】

NY原油はロシア軍のウクライナ侵攻と欧米等のロシア制裁による資源エネルギー需給ひっ迫懸念を背景に3月1日に100ドルを超え、欧米のロシア産原油禁輸検討報道から3月7日には130.50ドルへ急伸したが、8日夜にロシア産原油への依存度の低い米国が禁輸を決定したものの英国がロシア産原油輸入停止を今年末までとし、ロシア産原油への依存度が高いEUは輸入停止目標を2030年までとしたことで、欧州の即時禁輸によるパニックはひとまず回避されるとみて下落に転じ、9日はUAEやイラクが増産姿勢を表明したことで3月7日への暴騰型の上昇が過剰だったとして急落した。下落率は一時16%安となり安値では103.63ドルを付けたが、終値は前日比15ドル安の108.70ドルへやや持ち直した。有事の安全資産買いとインフレヘッジが重なって急騰してきたNY金も9日は前日比55.1ドル安と急落、ロシア制裁により供給不安が高まっていたパラジウムや小麦等も急落した。

一方でNYダウは前日比653.61ドル高(2%高)、ナスダックは460.00ポイント高(3.6%高)と大幅反騰した。ダウは一時800ドル高を超える反騰ぶりとなったが、地政学的リスクで売り込まれてきた欧州主要株価指数も大幅高となり、独仏の株価指数は前日比で7%高を超えた。
株買い債券売りの影響も出て米長期債利回りは総じて上昇、10年債利回りは3連騰で前日比0.11%上昇の1.96%、30年債利回りも0.11%上昇の2.34%となった。2年債利回りは0.08%上昇の1.69%となり2月23日の1.64%を超えてパンデミック以降の最高水準を更新した。原油等の国際商品が全面安となったものの、依然として水準は高く、先行きのインフレ深刻化は続くとすれば米連銀等の利上げペースの加速も想定されるため、株高による債券売り圧力に加えて長期金利上昇継続感を背景に3連騰したと思われる。

ウクライナ情勢は軍事的には膠着状態にあるが停戦協議は進まず、9日もチェルノブイリ原発の冷却用電源供給停止が報じられるなど好転の兆しは見られない。原油関連のロシアへの制裁についてはひとまず材料として織り込まれたものの、今後の産油国による増産レベルがどの程度になるのかにより第三次オイルショック懸念が和らぐのかどうか見定める必要がある。戦争と制裁の長期化なら穀物・飼料や非鉄金属の供給不安も継続する。またロシアが報復的に欧州向けの天然ガス供給を停止する場合にはエネルギー供給に対するパニックも発生しかねないという緊張した状況も継続する。ひとまず下げていたものが買い戻され、急騰していたものが反落してやや冷静さを取り戻している印象もあるが問題解決には至っていないと思われ、金融市場全般の不安定な状況が続くと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、3月4日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りしたとして高値形成期を8日夜から10日夜にかけての間と想定した。9日夜へ高値を切り上げてから深夜にいったん反落したものの切り返しているためまだ上昇余地ありとみる。また9日深夜反落時の安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りする可能性も検討される。弱気転換は9日深夜安値(115.54)割れからとし、その場合は10日午後から11日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では3月8日早朝時点で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパン悪化からは下落期入り警戒とするが、先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とする。先行スパンへ潜り込むところからは弱気転換注意とし、先行スパン転落からは下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は3月8日夜から9日夜への高値切り上げに際しては指数のピークが切り下がっているが、9日深夜の反落時も50ポイント台を維持して持ち直しているのでまだ上昇余地が残る。65ポイント超えからは70ポイント台後半を目指す上昇を想定するが、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント割れを目指すとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、115.54円を下値支持線、116.00円を上値抵抗線とする。
(2)115.54円以上での推移中は上向きとし、116円超えから続伸に入る場合は116円台中盤(116.30円から116.70円)を目指すとみる。116.50円以上は反落注意とするが、115.70円以上での推移が続くなら11日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)115.54円割れからはいったん下落期に入るとみて115円台序盤(115.25円から115.00円)を試すとみる。115.15円以下は反発注意とするが、115.54円を割り込んでの推移なら11日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3/10(木)
EU非公式首脳会議[11日まで
21:45 (欧) 欧州中銀政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、定例記者会見
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.6%、予想 0.8%)
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 7.5%、予想 7.9%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.6%、予想 0.5%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 6.0%、予想 6.4%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.6万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 147.6万人、予想 145.0万人)
27:00 (米) 財務省30年債入札
28:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 1187億ドル、予想 2120億ドル)

3/11(金)
07:15 (豪) ロウ豪中銀総裁、パネル討論会
08:30 (日) 1月 全世帯消費支出 前年同月比 (12月 -0.2%、予想 3.7%)
08:50 (日) 1-3月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (10-12月 9.6)
08:50 (日) 1-3月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (10-12月 7.9)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (1月 5.1%、予想 5.1%)
16:00 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 -0.2%、予想 0.2%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 0.4%、予想 1.9%)
16:00 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 0.2%、予想 0.2%)
16:00 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 -123.54億ポンド、予想 -126.00億ポンド)
16:00 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 -23.37億ポンド、予想 -24.00億ポンド)
24:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (2月 62.8、予想 61.5)

3/13(日) 北米夏時間開始

注:ポイント要約は編集部

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