ドル円見通し 米長期債利回り反騰、有事のドル買いで115円台中盤へ戻す(22/3/3)

ドル円は3月2日未明に114.68円まで下落したものの2月24日午後安値114.39円割れを回避して持ち直し、深夜には115.68円まで切り返した。

ドル円見通し 米長期債利回り反騰、有事のドル買いで115円台中盤へ戻す(22/3/3)

米長期債利回り反騰、有事のドル買いで115円台中盤へ戻す

〇ドル円、米長期債利回り反騰やユーロドル最安値更新等で買われ、深夜に115.68まで切り返す
〇ADP発表の2月民間就業者数は前月比、市場予想ともに上回り2か月で100万人近い増加に
〇パウエル議長の議会報告、3月からの利上げ開始説明と利上げ幅を0.25%とする見通し示す
〇2日は株高債券安、利上げ開始再認識で米長期債利回りは前日比0.15%上昇の1.88%に
〇有事リスクでユーロドルは2日1.1056を付け昨年1/6高値1.2349ドル以降の最安値更新
〇3日未明高値115.68超えからは2/15高値115.87近辺、次に116円を目指す上昇を想定
〇115.15割れからは下落期入り、3/2未明安値114.68、2/24安値114.39などを試す流れとみる

【概況】

ドル円は3月2日未明に114.68円まで下落したものの2月24日午後安値114.39円割れを回避して持ち直し、3月2日夜はADP民間雇用報告での就業者数増やパウエル米連銀議長の議会証言における3月FOMCでの0.25%利上げ姿勢等から米長期債利回りが反騰、ウクライナ情勢による有事のドル買いでユーロドルが昨年1月以降の最安値を更新したことなどを背景に買われて深夜には115.68円まで切り返した。2月28日午前高値115.77円には届かずにその後はやや下げているものの、2月10日高値で116.33円を付けてからの下落基調が一服している印象だ。

米民間雇用サービス会社ADPが3月2日に発表した2月の非農業部門民間就業者数は前月比47万5000人増となり市場予想の38万8000人増を上回った。1月分も速報の30万1000人減から50万9000人増へと大幅に上方修正された。2か月で100万人近い増加となったことは米連銀による利上げ姿勢を支持する内容と思われる。3月4日の2月米労働省雇用統計における非農業部門就業者数については1月の46万7000人増に続いて2月は40万人増と予想されている。

【米長期債利回り反騰】

米下院ではパウエル米連銀議長による半期の議会報告があり、議長は3月FOMCからの利上げ開始姿勢を説明し、当初の利上げ幅を0.25%とする見通しを示した。利上げ開始が確認されたこと、0.50%への大幅な引き上げで開始する可能性が後退したことでNYダウは前日比596.40ドル高と反騰して3月1日の597.65ドル安を解消、ナスダック総合指数も3月1日の218.94ポイント安を解消する219.56ポイント高と上昇した。ウクライナ情勢とロシア制裁による先行き不安は継続しているものの、目先は突っ込み警戒感で両株価指数はやや買い戻されているところだ。

一方で米長期債利回りは上昇した。米10年債利回りは2月16日に2.06%まで上昇したところから株売り債券買いで利回り低下となり3月1日には1.68%まで低下していたが、3月2日は株高債券安となり、米連銀による利上げ開始が再認識されたことで前日比0.15%上昇の1.88%となった。1日の上昇幅としては2020年3月以来の反騰規模のようだ。30年債利回りも0.14%上昇の2.25%、2年債利回りも0.17%上昇の1.52%となり、いずれも大きな反騰となった。
ドル円としてはNYダウの反騰でリスク回避的な円の買い戻しがやや落ち着き、米長期債利回りの反騰に押し上げられる展開となった。

【有事のドル高ユーロ安】

ユーロドルは3月2日安値で1.1056ドルを付けて昨年1月6日高値1.2349ドル以降の最安値を更新した。ウクライナ情勢及びロシアへの経済制裁の強化による有事リスクの中、地政学的に距離感のある豪ドルは1月末からの上昇を継続しているものの、当事者ともいえるEUへの悪影響を意識してユーロドルの下落が目立っている。
有事によるリスク回避では、初期的な反応としてはクロス円全般の手仕舞い=円の買い戻しにより円高感が強まり、安全資産買いで米国長期債が買われて利回りが低下すればドル円においても円高ドル安反応となる。しかし、原油相場の高騰が続く中でインフレ進行への懸念も深まり、またかつてのような日本経済の強さが認識されない状況においては、ドルストレートにおける有事のドル買い戻しがクロス円における円の買い戻しに勝ることとなり、有事リスクが一段と煽られる材料が出る場面では円高に反応しても極端な円高へと進む程でもないようだ。

ウクライナにおけるロシア軍の侵攻は2月28日の停戦協議が不調に終わってから苛烈さがエスカレートし、欧米のロシア制裁も拡大しているが、ユーロ圏にとってはロシア制裁による返り血も大きい。今のところはSWIFTにおいてもロシア産天然ガスの欧州向け供給にかかわる金融機関の締め出しには至らずにいるようだが、戦局が一段と深刻化してロシアからの天然ガス、原油、穀物飼料の供給が遮断されればユーロ圏のダメージも深刻になると懸念される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、2月26日早朝と28日午前序盤の乱高下で付けた高値を起点として弱気サイクル入りしたとして3月1日午後から3日夕にかけての間への下落を想定してきた。
3月2日午前時点では3月1日午前高値115.28円超えからは強気サイクル入りとしていたが、3月2日夜に115.28円を超えてからさらに続伸したため、現状は3月2日未明安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたところと思われる。高値形成期は3月2日未明から7日朝にかけての間と想定されるのですでに反落注意期に入っているが、115.25円以上での推移中は116円台回復を目指す可能性があるとみる。115.25円割れからは弱気転換注意とし、115.15円割れからは弱気サイクル入りと仮定して5日未明から9日朝にかけての間への下落と2月24日午後安値114.39円試しを想定する。

60分足の一目均衡表では3月2日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いた。その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパン悪化からは弱気転換注意とするが、先行スパンからの転落を回避するうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とし、先行スパンから転落する場合は下落期入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は3月1日早朝安値からの一段安に際しては指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せてから50ポイントを超えて3日未明には80ポイントに迫った。60ポイント前後までを支持線としてまだ上昇余地ありとするが、相場が小反落から高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は弱気転換注意とし、50ポイント割れからは下落期入りとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、115.25円を下値支持線、3月3日未明高値115.68円を上値抵抗線とする。
(2)115.25円以上での推移中は上昇余地ありとし、115.68円超えからは2月15日高値115.87円近辺、次に116円を目指す上昇を想定する。116円到達では売られやすいとみるが、115.25円以上での推移が続く場合は4日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)115.25円割れからは弱気転換注意とし、115.15円割れからは戻り一巡による下落期入りと見て3月2日未明安値114.68円、さらに2月24日午後安値114.39円などを試す流れとみる。

【当面の主な予定】

3/3(木)
10:45 (中) 2月 財新サービス業PMI (1月 51.4、予想 50.7)
14:00 (日) 2月 消費者態度指数・一般世帯 (1月 36.7、予想 35.0)
17:55 (独) 2月 サービス業PMI改定値 (1月 56.6、予想 56.6)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI改定値 (1月 55.8、予想 55.8)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI改定値 (1月 60.8、予想 60.8)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 2.9%、予想 2.3%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 26.2%、予想 27.0%)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 7.0%、予想 6.9%)

21:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (7-9月 6.6%、予想 6.7%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.2万件、予想 22.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 147.6万人、予想 147.5万人)
23:45 (米) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 56.7、予想 56.7)
24:00 (米) 2月 ISM非製造業景況指数 (1月 59.9、予想 61.0)
24:00 (米) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.7%)
24:00 (米) パウエル米連銀(FRB)議長、上院銀行委員会で半期議会証言

3/4(金)
冬季パラリンピック北京大会(3/13まで)
08:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
08:30 (日) 1月 失業率 (12月 2.7%、予想 2.7%)
08:30 (日) 1月 有効求人倍率 (12月 1.16、予想 1.15)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 70億ユーロ、予想 55億ユーロ)
16:00 (独) 1月 経常収支 (12月 239億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -3.0%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 2.0%、予想 9.1%)
22:30 (米) 2月 非農業部門就業者数 前月比 (1月 46.7万人、予想 40.0万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 4.0%、予想 3.9%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.7%、予想 0.5%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 5.7%、予想 5.8%)

3/5(土)
中国全国人民代表大会開幕(北京)

注:ポイント要約は編集部

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