ユーロ安継続もブレにも注意(週報2月第4週)

先週のユーロドルは、一時年初来安値を割り込み1.1106レベルと2020年6月以来の安値をつけました。

ユーロ安継続もブレにも注意(週報2月第4週)

ユーロ安継続もブレにも注意

〇先週のユーロドル、キエフへのロシア軍攻撃で一時年初来安値を割り込み1.1106レベルに
〇有事のドル買いで地政学リスクの高いユーロドルの売りが最もワークしやすく順当な値動き
〇ロシアへの経済制裁は欧州にもそれなりにダメージ、エネルギー代替調達先などの懸念も
〇今週は2日にエコノミストのレーンECB理事の講演、材料的には最大の注目材料に
〇今週は引き続きユーロ安リスクが高い、1.1050レベルをサポートに1.1200レベルをレジスタンスとする

今週の週間見通しと予想レンジ

金融市場全体がウクライナ情勢を見守る一週間となりましたが、欧州はウクライナに近いこと、またNATO軍の前線(旧東欧)に派兵していることなど、地政学リスクの影響を最も受けやすいということもあって、ウクライナの首都キエフにまでロシア軍が攻撃をしたことを受け、一時年初来安値を割り込み1.1106レベルと2020年6月以来の安値をつけました。

ウクライナ情勢に対する考え方についてはドル円週報に書きましたので、あえて繰り返しませんが、今回のロシアによるウクライナ侵攻は最悪の事態となる大規模な侵攻と攻撃となったことで、リスクオフではあるものの冷戦時代の有事のドル買いへと戻った流れとなりました。ロシア・ウクライナ間の協議が進んでも今までのウクライナに戻るとは思えず、そうなると世界最大の軍事力を持った米国が避難資産の向かい先となります。

その場合でも米国株式ではなく米国債、為替市場ではドル買いとなり、地政学リスクの高いユーロとの対比ではユーロドルの売りが最もワークしやすいという順当な値動きであったと考えられます。

さらにロシアの金融機関と中銀をSWIFTから締め出したことで、ロシアだけでなく欧州諸国への影響が大きいことは報道されている通りですが、対ロシアの与信額を見ても上位からフランス、イタリア、オーストリアと欧州勢が並びますし、貿易相手国も中国と米国を除くと欧州が上位です。ロシアへの経済制裁によって欧州もそれなりにダメージを受けることとなります。

またロシアは資源国ですが、欧州の天然ガス依存度は全体で35%がロシアからの調達です。特にドイツはパイプライン経由で55%をロシアからの輸入に頼っているため、今回の経済制裁においても代替調達先でカバーできるのかという懸念も出ています。そして、そうした動きがエネルギー価格の一段高につながり3月のECB理事会ではPEPPの中止に留まらずAPPの増額も再検討することになる可能性もあります。

今週は2日にエコノミストのレーンECB理事の講演がありますので、材料的には最大の注目材料となるかもしれません。またドイツとユーロ圏のCPI速報値の発表もあり、今後のインフレ悪化を見極めることとなります。ただ、インフレ懸念でECBが早期に動く可能性があっても、現状は制裁が欧州に与える悪影響や地政学リスクを考えると、ユーロ売りの流れが簡単に変わるとは思えません。

テクニカルには日足チャートを見てみましょう。

ユーロ安継続もブレにも注意

年初来安値を更新してきたことで、テクニカルにも難しい拡散型のもみあいが続いています。材料的には更なる下押しが入る可能性が高いため、今後の状況次第では1.10の大台を視野に入れる動きも考えられます。ある程度売り込まれた後に事態が好転し、さらにECBの早期緩和縮小思惑も重なって上昇となると更に難しいチャートになりますが、そうしたことを考えるには時期尚早です。いまはユーロが下げやすいという前提でシナリオを考えるべきでしょう。

今週は引き続きユーロ安リスクが高いと見て、1.1050レベルをサポートに1.1200レベルをレジスタンスとする一週間を見ておこうと思います。

今週のコラム

今週はNEXT FUNDSロシア株式指数・RTS連動型ETFを見てみましょう。このETFは野村アセットが設定しているロシア株に連動するETFです。急落しているかと思ったところ、思いのほか安定した動きです。日足チャートをご覧ください。

ユーロ安継続もブレにも注意 2枚目の画像

本日は123.20と年初来安値を更新していますが、1月高値167.00からの下げ幅は43.8、率にして26.2%の下げに留まっています。もっと下げているかと思いましたが、今回は事態の割には株式市場が妙に落ち着いているのが不思議な感じです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

2月28日(月)
20:30 パネッタECB理事講演 ☆

3月1日(火)
17:50 フランス2月製造業PMI
17:55 ドイツ2月製造業PMI
18:00 ユーロ圏2月製造業PMI
18:30 英国2月製造業PMI
22:00 ドイツ2月CPI速報値 ☆

3月2日(水)
17:55 ドイツ2月失業率
19:00 ユーロ圏2月CPI速報値 ☆
24:00 パウエルFRB議長議会証言(下院)☆
25:00 レーンECB理事講演 ☆
28:00 ベージュブック ☆

3月3日(木)
17:50 フランス2月サービス業PMI
17:55 ドイツ2月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏2月サービス業PMI
18:30 英国2月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏1月PPI、失業率
21:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
24:00 パウエルFRB議長議会証言(上院)☆

3月4日(金)
16:00 ドイツ1月貿易収支
16:45 フランス1月鉱工業生産
18:30 英国2月建設業PMI
19:00 ユーロ圏1月小売売上高
22:30 米国2月雇用統計 ☆

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

2月21日(月)
週明けの為替相場は週末にウクライナ問題が緊迫化していたところに米露首脳会談開催で基本的に合意したとのニュースでリスクオフの巻き返しでスタートしました。しかしドル円はユーロドルのユーロ買いが強かったことからドル売りに押される形となり金曜からのじり安を続け、114.72レベルまで下押しして安値引けとなりました。

ユーロドルは首脳会談のヘッドラインでリスクオフの巻き返しから欧州市場序盤には1.1390レベルまで大きく買い戻されていましたが、欧州市場に移りロシア側が首脳会談の具体的な計画が無いとのニュースから反落、NY市場の後場にはロシアが一方的にウクライナ東部の親ロシア派の自治共和国の独立を承認したことで続落、完全に行って来いの動きとなって1.1307レベルまで下押しして安値引けとなりました。

2月22日(火)
火曜はロシアがウクライナ東部2州の独立を承認し派兵するとのニュースを受けてリスクオフによる円買いが先行しましたが、経済制裁の内容が大したことがなかったとの反応から欧州市場では買い戻しが目立ちました。しかし今後まだ情勢が悪化する可能性も高くNY市場では調整の売りが入りました。
ユーロドルは火曜は売りが先行したものの1.1288レベルまでで、欧州市場の買い戻しとNY市場の下げはドル円と歩調を揃え、株式市場におけるリスクオフとその巻き返しの動きとなりました。

2月23日(水)
東京が休場となった水曜のドル円は終日ほとんど動きが見られず、115円の大台を挟んだ小動きに終始しました。
ユーロドルはアジア時間は動かず、欧州市場ではロシアと西側諸国との協議に期待する楽観的な見方から買い戻しも見られましたが、NY市場では売りに転じて、更なる経済制裁を警戒して株式市場とともにユーロは対ドル、対円で下げる動きとなりました。

2月24日(木)
ロシアが東部2州のみ侵攻という当初の説明に反し、ウクライナ全土を攻撃するという暴挙に出たことで金融市場は大荒れとなりました。これまで武力で他国に侵攻という出来事は誰も想定していませんでしたが、2月に入ってから米国が逐一公開してきた機密情報通りの最悪の事態になりました。
NY市場まで株式市場は急落、リスクオフに反応して為替市場は3主要通貨ペアともに下げるという流れで、周辺市場では資源国ロシアからの輸入がストップするという懸念でNY原油が100ドルの大台乗せと想定される動きを見せていました。

しかし欧米を中心とした追加制裁が思ったほどの内容とならなかったことから株式市場は反発し、ほぼ前日終値水準まで行って来い。為替市場は地政学リスクからユーロドルはNY前場までは下げ続け1.1106レベルの安値をつけましたが、引けにかけては株価の買い戻しとともに1.12近くに戻しています。
ドル円はやや複雑で欧州市場序盤までは株安によるリスクオフで114.41レベルまで下げていましたが、ユーロドルの下げによるドル買いの影響が強まり底固めをした後は115.70レベルまで上伸後やや押して引けました。このドル円の動きはユーロドルの影響が強いとともに、実際に戦争状態になってきたことで以前の有事のドル買いといった側面もあったかと思います。

2月25日(金)
ドル円は欧州市場前場まではウクライナ情勢を懸念したダウ先の下げを見ながら円買いの動きが見られました。しかし欧州市場に入り、ロシアとウクライナによる停戦交渉期待から株式市場の上昇とともにドル円にも買いが入り、115.76レベルと前日高値を上抜けた後にやや押しての引けとなりました。

ユーロドルは東京市場ではドル円同様にドル売りの動きとなっていましたが、欧州市場序盤に株安が進んだ際には一時的に売りが目立ちました。その後は株高によりユーロは対ドル、対円で買い戻しが入り一日の高値圏で引けています。

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