ドル円見通し ウクライナ情勢の緊張感解消せず、116円台回復へ進めずに上値重い(22/2/17)

ドル円は15日深夜に115.87円を付けたもののその後は伸びず、16日夜はウクライナ情勢の緊張感はなお継続との見方が繰り返されたことで115.30円台へ失速した。

ドル円見通し ウクライナ情勢の緊張感解消せず、116円台回復へ進めずに上値重い(22/2/17)

ウクライナ情勢の緊張感解消せず、116円台回復へ進めずに上値重い

〇ドル円、ウクライナ情勢の緊張感継続との見方で16日夜に115.30台へ失速
〇米長期債利回りは高止まりからやや低下、NYダウは15日の4日ぶり反騰から16日は失速
〇17日早朝のFOMC議事録ではやや過剰な利下げペース予想が若干後退
〇強弱まちまちの材料に116円台回復へ向かうリスクオンには至らずやや調整気味の展開
〇115.65以下での推移中は115円前後試し、115円前後では買い戻しも入りやすいとみる
〇115.65超えからは15日深夜高値115.87試し、高値更新からは116円台回復目指す上昇期入り

【概況】

ドル円は2月15日夕刻にウクライナ国境付近で展開していたロシア軍の一部が演習終了として帰還し始めたとの報道をきっかけに緊張緩和感から買われて15日深夜に115.87円を付けたもののその後は伸びず、16日夜はウクライナ情勢の緊張感はなお継続との見方が繰り返されたことで115.30円台へ失速した。
バイデン大統領は15日に「ロシア軍によるウクライナ侵攻は依然あり得る」とし、16日にも米国務長官が撤退の証拠はないとした。NATO(北大西洋条約機構)のストルテンベルグ事務総長は16日に「現場に緊張緩和の兆候は見られない。部隊や装備の撤収はない」と述べたことで、15日夕刻の一部撤収報道による楽観が後退した。
16日の米経済指標は総じて強かったものの、米長期債利回りは高止まりからやや低下、NYダウは15日の4日ぶり反騰から16日は失速、17日早朝のFOMC議事録では会合毎の政策決定をしてゆく姿勢が示されたことでやや過剰な利下げペース予想が若干後退した。これら材料としては強弱まちまちだったが、ドル円としては116円台回復へ向かうほどのリスクオンには至らず、やや調整気味の展開で方向感を探る状況と思われる。

【米長期債利回りは高止まり、ダウの反騰は続かず】

2月16日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の2.04%となり、高値では2月11日に付けたパンデミック以降の最高値2.06%に迫るなど高止まりしている。2年債利回りは0.06%低下の1.52%となり2月10日に1.34%から1.64%へ急伸した後はやや低下傾向にあるものの高値圏を維持した状況にある。
2月16日のNYダウは前日比54.57ドル安と下落した。2月10日から14日まで3日間の続落となり1000ドルを超える下落規模となったところから15日は422.67ドル高と反発したが勢いが鈍っている。ウクライナ情勢の緊張感継続が戻りを抑えた印象だ。ナスダック総合指数も前日比15.67ポイント安と下落した。
米長期債市場、株式市場ともにウクライナ情勢については楽観的な先行きをまだ決めつけられず方向感を探る展開であり、ドル円としても米長期債利回りの高止まりが下支えではあるもののリスク回避感がぬぐえずに116円超えへ向かうには推進力不足でやや押され気味というところだ。

【米経済指標は好調】

米商務省による1月の小売売上高は前月比3.8%増となり2か月振りのプラスで市場予想の2.0%を大幅に上回った。伸び率は2021年3月(11.3%増)以来となった。自動車・同部品ディーラーを除くと3.3%増で市場予想の0.8%増を大幅に上回り、ガソリンを除いて4.2%増、自動車・同部品・ガソリンを除いて3.8%増だった。
米労働省による1月の輸入物価は前月比2.0%上昇となり市場予想の1.3%を大幅に上回り、輸出物価は前月比2.9%上昇で市場予想の1.3%上昇を上回った。
消費者物価、生産者物価、輸出入物価もそろって上昇基調が継続していることは米連銀による金融引き締めを急ぐ姿勢を正当化するものだ。
米連銀による1月の鉱工業生産指数は前月比1.4%上昇で2か月ぶりにプラスとなり前月の0.1%低下から改善して市場予想の0.4%上昇を大幅に上回った。設備稼働率も前月の76.6%から77.6%へ改善した。
NAHB住宅市場指数の2月は82となり前月の83及び市場予想の83を若干下回ったが高水準を維持している。

【FOMC議事録公開への反応は鈍い】

米連銀は前月のFOMC議事録を公開した。1月のFOMCでは早期の利上げ開始後に総資産の縮小に着手する方針を示していたが、議事録ではすべての参加者が「総資産の大規模な縮小が適切」との見方で一致していた。また資産縮小に際しては不動産ローン担保証券(MBS)を売却するか、MBS償還分の一部を国債への再投資に振り向けることが適切とし、国債保有を減らす前にMBSを減らす方針とした。利上げについては会合毎に決定するとしたが、市場が想定している3月の大幅利上げとその後の連続利上げへ向けた強い姿勢というほどではなかったため、過剰な金融引き締め姿勢との受け止め方がやや後退した印象だが、逆に言えばインフレ進行が続くうちは会合毎の連続利上げへ進む可能性も高そうだということになるだろう。

1月27日早朝の前回FOMC声明発表直後は利上げペースの加速が意識され、その後の高官発言からやや過剰反応だったと修正的な動きになり、先週からは再び利上げペースは加速的になるとの見方が強まるなど、市場も利上げペースに対する想定の強弱感が揺れている。
米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は16日に「あまりに積極的な利上げは景気を落ち込ませ景気後退を招く恐れがある」と慎重な姿勢を示し、「『やり過ぎるな』と注意喚起したい」と述べているが、かじ取りの難しいところだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、2月12日早朝と2月14日夜の115円試しとなった両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしたとして高値形成期を15日夜から17日深夜にかけての間と想定したが、15日深夜高値からはジリ安の推移となっているため、15日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は17日夕から21日夜にかけての間とし、強気転換は15日深夜高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では2月17日早朝への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパン突破からは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月17日早朝への下落で50ポイントを割り込み30ポイント台まで低下した。その後も50ポイント台を回復できずにいるのでもう一段安余地ありとみる。115円割れへ進む場合は20ポイント台を試す可能性もあると注意する。強気転換には55ポイントを超えてその後も50ポイント以上を維持する反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、115.00円を下値支持線、115.87円を上値抵抗線とする。
(2)115.65円以下での推移中は下向きとして115円前後試しを想定する。115円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、115円割れから続落に入る場合は114.75円から114.50円にかけてのゾーンを試すとみる。114.65円以下は反発注意とするが、115円以下での推移が続く場合は週末も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)115.65円超えからは15日深夜高値115.87円試しとみる。高値更新からは116円台回復を目指す上昇期入りと考えるが、115.87円超えへ進めずに115.50円を割り込む場合は週末から週明けへ安値試しを続けやすくなるとみる。

【当面の主な予定】

2/17(木)
G20財務相・中央銀行総裁会議(2/18日まで)
EU首脳会談
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 14.00%、予想 14.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.3万件、予想 21.9万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 162.1万人、予想 160.5万件)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数・年率換算 (12月 170.2万件、予想 170.0万件)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数 前月比 (12月 1.4%、予想 -0.4%)
22:30 (米) 1月 建設許可件数・年率換算 (12月 187.3万件、予想 175.0万件)
22:30 (米) 1月 建設許可件数 前月比 (12月 9.1%、予想 -7.2%)
22:30 (米) 2月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (1月 23.2、予想 20.0)
23:00 (欧) レーンECB理事、講演
25:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省インフレ指数連動30年債入札

2/18(金)
ミュンヘン安全保障会議(民間主催、ダボス会議の安保版、米副大統領ら出席、2/20日まで)
06:45 (NZ) 10-12月期 生産者物価指数 前期比 (7-9月 1.8%)
07:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
08:30 (日) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 0.8%、予想 0.6%)
08:30 (日) 1月 消費者物価コア指数・生鮮食品除く 前年同月比 (12月 0.5%、予想 0.3%)
08:30 (日) 1月 消費者物価コア指数・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (12月 -0.7%、予想 -1.0%)

16:00 (英) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -3.7%、予想 1.2%)
16:00 (英) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -0.9%、予想 9.3%)
16:00 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -3.6%、予想 0.7%)
16:00 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (12月 -3.0%、予想 7.6%)
18:00 (欧) 12月 経常収支・季調済 (11月 236億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 建設支出 前月比 (11月 -0.2%)
19:00 (欧) 12月 建設支出 前年同月比 (11月 0.5%)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数・年率換算 (12月 618万件、予想 610万件)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数 前月比 (12月 -4.6%、予想 -1.3%)
24:00 (米) 1月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (12月 0.8%、予想 0.2%)
24:00 (欧) 2月 消費者信頼感速報値 (1月 -8.5、予想 -8.0)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る