1月3日の高安レンジ内での小動きも5日を経過、安値更新へ余裕乏しい
〇トルコリラ円、1/10安値8.14まで下げる、1/3の高安レンジ内にとどまるが底割れに余裕が乏しい
〇対ドル、1/7は13.92、1/10は13.93へと安値を切り下げ、1/3安値13.91を下回る
〇トルコ政府の政策に対して、輸出業者・経済団体から不満の声あがる
〇外貨預金からリラ預金への転換はあまり進まず、預金保護制度による十分な効果みられず
〇8.45以下での推移中は下向きとし、8.13割れからは8.00前後への下落を想定する
〇8.45超えからはいったん戻しに入るとみて、8.60前後への上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の1月7日は8.45円から8.21円の取引レンジ、8日早朝の終値は8.32円で前日終値の8.33円から0.01円の円高リラ安となった。週明けの1月10日は8.45円から8.14円の取引レンジ、11日早朝の終値は8.33円で前日比0.01円の円安リラ高となった。
12月20日の史上最安値6.17円からの急反騰も12月23日高値11.14円で一巡して再び下落基調となり1月3日に8.13円まで安値を切り下げたが、その後は1月3日の高安レンジ内にとどまっているものの10日安値で8.14円まで下げて底割れに余裕が乏しい。
ドル円が1月4日夜から下落基調で推移したため、クロス円全般が円高に圧迫されてトルコリラ円も上値の重い展開となっている。ドル円が115円台を維持して反騰入りできるかどうかも注目しておきたいところ。
【対ドルでは1月3日安値13.91を下回る】
ドル/トルコリラの1月7日は13.92リラから13.42リラの取引レンジ、8日早朝の終値は13.87リラで前日終値の13.82リラからは0.05リラのドル高リラ安となった。週明けの1月10日は13.93リラから13.36リラの取引レンジ、11日早朝の終値は13.80リラで前日比0.07リラのドル安リラ高となった。
12月20日の史上最安値18.36リラからの反騰で12月23日高値10.05リラまで戻したものの、戻り一巡から下落再開で1月3日には安値で13.91リラを付け、4日から6日までは新たな安値更新を回避していたものの7日は13.92リラ、10日は13.93リラへと安値を切り下げている。
1月7日夜には米12月雇用統計の発表があり、発表後にはユーロやポンド、豪ドルなどが買われてドル安となり、10日夜にかけては揺れ返しのドル高となったものの深夜からは再びドル安の動きとなるなど全般に方向感が定まらない状況だが、ドル/トルコリラは13リラ台での推移で次のきっかけ待ちの様相。
1月10日夕刻に発表されたトルコ11月失業率は11.2%で10月と変わらず。労働参加率は52.5%で10月の52.1%からは若干の上昇となったが市場の反応は限定的だった。
【トルコの輸出業者・経済団体の不満】
トルコ政府はリラ防衛のため自国輸出業者に対してドル等のハードカレンシーによる獲得外貨収入の25%をトルコ中銀に売却することが義務付けられたようだが、この問題に関してトルコ中銀と輸出業者が開催したオンライン会合では輸出業者がこの規制を遵守することが困難との懸念を表明したようだ。
この規制はリラ防衛のために市場介入で大幅に減少した外貨を補充する目的とされ、輸出業者に対してはトルコ中銀や政府系銀行による与信供与で保護する姿勢も示したというが、輸出業者は外貨収入を得た段階でトルコ中銀に一定割合をリラに転換して預託することとなり、新たな仕入れ支払いのために再びリラから外貨へ転換する際に差損が発生するとしている。その際の為替差損が中銀によって補填されるのかどうかは定かではない。
1月5日にはトルコ産業企業家協会(TUSIAD)が「インフレ率が前年比36.1%に跳ね上がったことは政策手段を再検討する必要性を明確に示している」「これまでの政策が正しいものならなぜこれほどインフレ率が高いのか」とトルコ中銀による連続利下げとトルコ政府の金融政策を批判している。
【トルコの外貨預金からリラ預金への変更は進んでいない?】
12月20日にエルドアン大統領がリラ預金の為替差損分を補填すると表明したことからリラ預金が急増したとされるが、外貨預金からリラ預金への転換はさほど進んでいないようだ。
ネバティ財務相は12月23日時点でリラ建て預金を為替変動の影響から保護する新制度には100億リラ(8億8900万ドル)相当の外貨預金が移行したと述べたが、1月6日の報道ではトルコの銀行関係者の話として外貨からリラに交換して預けられた資金はほとんどないという。ネバティ財務相は先週の段階で預金保護制度に預け入れられた資金は915億リラに増加したと述べたが、このうちどの程度が外貨から交換されたかには言及していない。
政府与党の公正発展党(AKP)の高官も「今のところ預金保護制度は十分な効果を上げておらず政府はさらなる措置を検討している」と述べている。
預金保護制度へのリラ預金の急増は他のリラ預金からの乗り換えや外貨以外の資産を現金化したものにとどまっているとすれば、投資家の保護制度化のリラ預金への一時的な乗り換え意欲が一巡すれば継続的な外貨売りリラ買いによるリラの安定にはさほど寄与しないことも懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月3日夜高値からのジリ安が続いて8.50円を割り込んだために6日午前時点では1月3日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして6日午後から10日午後にかけての間への下落を想定した。
1月10日夕刻へいったん戻してから下落しているため、7日夜安値を直近のサイクルボトムとしてすでに新たな弱気サイクル入りしている可能性がある。このため10日夕高値を超えずに安値切り下げに入る場合は10日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして12日夜から14日夜にかけての間への下落を想定する。
10日夕高値を超える場合は10日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして11日の日中から12日にかけての間への上昇を想定するが、戻りは短命の可能性もありとみてその後に安値更新するところからは新たな弱気サイクル入りとする。
60分足の一目均衡表では1月10日夕刻への反発では先行スパンを上抜けずに再び転落しているので、先行スパンを上抜き返せないうちはもう一段安余地ありとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返す場合はいったん戻しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は1月10日夕刻への上昇時に50ポイント台へ戻したもののその後に再び割り込んでいる。60ポイント超えへ戻す場合は反騰入りとみて70ポイントに迫る上昇を想定するが、50ポイント以下での推移か一時的に超えても維持できないうちはもう一段安余地ありとして20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)8.13円を下値支持線、8.45円を上値抵抗線とする。
(2)8.45円以下での推移中は下向きとし、8.13円割れからは8.00円前後への下落を想定する。8.00円以下は反騰注意とするが8.20円以下での推移が続くなら12日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.40円台では戻り売りにつかまりやすいとみるが、8.45円超えからはいったん戻しに入るとみて8.60円前後への上昇を想定する。
【当面の主な予定】
1月11日
16:00 11月 経常収支 (10月 31.56億ドル、予想 -26.75億ドル)
1月13日
16:00 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 0.6%)
16:00 11月 鉱工業生産 前年比 (10月 8.5%)
16:00 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.9%)
16:00 11月 小売売上高 前年比 (10月 16.2%)
20:30 週次 外貨準備高(グロス) 1/7時点 (12/31時点 725.6億ドル)
20:30 週次 外貨準備高(ネット) 1/7時点 (12/31時点 83.4億ドル)
1月17日
17:00 12月 財政収支 (11月 320億リラ)
1月20日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 14.0%)
20:30 週次外貨準備高 (1/14時点)
注:ポイント要約は編集部
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