ドル円見通し 5年ぶり高値からの調整続くも115円台を維持(22/1/11)

ドル円は1月10日深夜安値で115.03円まで下落して1月4日夜につけた5年ぶり高値116.34円以降の安値を更新した。

ドル円見通し 5年ぶり高値からの調整続くも115円台を維持(22/1/11)

ドル円見通し 5年ぶり高値からの調整続くも115円台を維持

〇ドル円、1/10深夜115.03まで下落、1/4夜の5年ぶり高値116.34以降の安値を更新
〇1/7夜の米12月雇用統計発表から売られ、1/10夜に一段安、三角持ち合いから下放れる
〇雇用統計、就業者数の伸びは失望だったが失業率改善により強弱まちまちの内容
〇1/10の米10年債利回りはわずかに低下するも、米長期債利回りは上昇基調継続、NYダウは続落
〇ドル円、株安を警戒しつつも上昇している米長期債利回りを背景に、上昇基調継続しやすい状況が続くか
〇115.50を超えないうちは、115.03割れから114円台中盤を試す可能性があるとみる
〇115.50超えからは、1/10昼高値115.84試しとする

【概況】

ドル円は1月10日深夜安値で115.03円まで下落して1月4日夜につけた5年ぶり高値116.34円以降の安値を更新した。1月7日夜の米12月雇用統計発表から売られて8日早朝には115.53円へ下落して1月5日夜安値115.60円を割り込み、その後は115.50円台では買い支えられていたが、10日夜に米長期債利回りが低下に転じ、深夜にかけて下落していたユーロやポンドが反発に転じた局面で115円を試すところまで一段安となった。
1月4日夜高値を起点として115.50円台までを下値支持帯とした三角持ち合いの様相だったところから下放れとなっており、1月4日夜からの調整安も4日を経過した。

【12月米雇用統計 米連銀長期予想の4%を下回る】

1月7日に米労働省が発表した12月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比19.9万人増にとどまり市場予想の40万人の半分だったが、失業率は11月の4.2%から3.9%へと改善して市場予想の4.1%を下回り新型コロナウイルスによるパンデミック発生直前の2020年2月以来の3%台となり、米連銀による4.0%の長期予想を下回った。
10月の就業者数は現月比64.8万人増、11月は24.9万人増へといずれも上方修正されて2か月分の上方修正幅は14.1万人増となった。2021年の通年では644.8万人増となり過去最大となった。
平均時給は前月比で0.6%増となり11月の0.4%増及び市場予想の0.4%を上回った。前年比で4.7%となり市場予想の4.2%を上回ったが11月の5.1%(4.8%から上方修正)は下回った。

就業者数の伸びは失望だったものの失業率改善により強弱まちまちの内容となったため、雇用統計発表直後はやや乱高下したものの通過後の趨勢はドル安となりユーロやポンド、豪ドルなどが総じて上昇してドル円は下落した。1月6日早朝の米FOMC議事録公開からのドル高圧力に対して米雇用統計通過で目先の材料消化としてドル安へ傾斜した印象だ。しかし米長期債利回りの上昇基調は続いており、ドル円も116円台到達による修正感で押されているものの押し目形成からの持ち直しを探るところと思われる。

【米10年債利回り上昇基調継続】

1月10日の米10年債利回りは先週末比で0.01%低下の1.76%で終了したが、一時はパンデミック前の2020年1月以来2年ぶりの1.81%をつけている。2019年11月の1.97%だったところから翌年3月に0.31%まで急低下したところを底として反騰してきたが、2021年3月水準を超えたことで二段目の上昇期に入った印象だ。パンデミック前の最高水準は2018年10月の3.26%だった。
2年債利回りは先週末比で0.03%上昇の0.90%となったが、一時は0.91%を付けて2020年3月3日以来の高水準に達した。パンデミック発生前後に0.10%まで低下してから低水準の推移が続いてきたが2021年10月から顕著な上昇基調に入っている。

1月10日のNYダウは先週末比162.79ドル安と下落、一時は590ドル安まで下げてから戻したものの4日続落となった。ナスダック総合指数は1月7日に前日比144.96ポイント安となり1月4日から4日間の続落だったが、10日は先週末比6.93ポイント高とわずかにプラス圏まで戻したが、11月22日に史上最高値を付けてからは新たな高値更新へ進めずに調整期が長引いているようだ。

【1月11日に米連銀議長の指名公聴会】

今週は1月11日にパウエル米連銀議長の再任に関する米議会公聴会、13日にはブレイナード理事の副議長昇格に対する公聴会が予定されている。1月12日は米12月消費者物価、13日に生産者物価、14日に小売売上高と主要指標の発表も続く。
1月6日早朝に公開された12月14-15日開催のFOMC議事録では想定よりも早いペースでの利上げ姿勢に加えて米連銀の膨張した総資産の圧縮についても議論されていたことが示され、12月16日早朝のFOMC声明に対する市場認識よりもタカ派色が濃くなったとの印象を与えた。元来はハト派的だったパウエル米連銀議長は11月22日にバイデン大統領から再任指名された段階からインフレファイターとしてタカ派へシフトし始めたようだ。

1月10日には11日の上院公聴会での冒頭発言が公開されたが、「需給の不均衡と供給障害が続いてインフレが高まった」とし「インフレ高進の定着を阻止するため我々の政策手段を使う」との内容だった。
世界的な感染急拡大は深刻ではあるがパンデミック初期のような市場のパニックやリセッション入りは回避されるとして株高基調が続いてきたものの年明け以降は株高基調にも変化がみられる。金融引き締めを意識した動きと思われるが、米連銀の利上げペースについては3月、6月、9月の4回利上げから12月も追加利上げされて年4回となるのではないかとの見方も浮上している。米連銀による引き締め感が強まればドル円としても株安を警戒しつつも米長期債利回り上昇基調を背景に調整安を消化しながら昨年1月以降の上昇基調を継続しやすい状況が続くのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、1月4日夜高値を直近のサイクルトップとした下落が続いているが、1月3日夜安値から3日目の1月6日深夜安値で直近のサイクルボトムを付け、底割れから新たな弱気サイクル入りしていると思われる。安値形成期は11日夜から13日深夜にかけての間と想定されるので115.60円以下での推移中は一段安余地ありとみるが、115.60円超えからは強気転換注意として10日昼高値115.84円試しとし、10日昼高値超えからは強気サイクル入りとして11日の日中から13日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では1月7日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からは戻しに入るとみるが、先行スパンを上抜き返せないうちはその後に悪化するところから下げ再開とみる。強気回復には先行スパンを上抜き返す必要がありそうだ。

60分足の相対力指数は1月10日夜に30ポイント割れへ下落した後はやや戻している。50ポイント以下での推移か一時的に50ポイントを超えても維持できないうちは一段安余地ありとみるが、11日未明安値を割り込む際に指数のボトムが切り上がるようだと強気逆行から戻しに入りやすいとみて55ポイント超えからは反騰入りとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月11日未明安値115.03円を下値支持線、115.50円を上値抵抗線とする。
(2)115.50円を超えないうちは115.03円割れから114円台中盤(114.70円から114.30円)を試す可能性があるとみる。114.50円以下は反発注意とみるが115.25円以下での推移なら12日も安値試しへ進みやすいとみる。
(3)115.50円超えからは10日昼高値115.84円試しとする。10日昼高値を超えずに115.35円を割り込むところからは下げ再開と一段安注意とするが、115.50円以上での推移が続くなら12日は高値試しへ向かいやすくなるとみる。

【当面の主な予定】

1/11(火)
09:30 (豪) 11月 貿易収支 (10月 112.20億豪ドル、予想 107.00億豪ドル)
09:30 (豪) 11月 小売売上高 前月比 (10月 4.9%、予想 3.8%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数CI速報値 (10月 101.5、予想 102.8)
14:00 (日) 11月 景気一致指数CI速報値 (10月 89.8、予想 93.5)
23:12 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、インタビュー対応
23:30 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演
24:00 (米) 上院銀行委員会、パウエル米連銀議長の再任指名承認公聴会
27:00 (米) 財務省3年債入札
30:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

1/12(水)
未 定 (日) 黒田東彦日銀総裁、発言
08:50 (日) 11月 経常収支・季調前 (10月 1兆1801億円、予想 5863億円)
08:50 (日) 11月 経常収支・季調済 (10月 1兆259億円、予想 1兆531億円)
08:50 (日) 11月 貿易収支・国際収支ベース (10月 1667億円、予想 -6500億円)
10:30 (中) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 2.3%、予想 1.8%)
10:30 (中) 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 12.9%、予想 11.3%)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー現状判断 (11月 56.3、予想 56.3)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー先行き判断 (11月 53.4、予想 52.0)

19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 1.1%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 3.3%、予想 1.5%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 0.8%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 6.8%、予想 7.0%)
22:30 (米) 12月 消費者物価コア指数 前月比 (11月 0.5%、予想 0.5%)
22:30 (米) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 4.9%、予想 5.4%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札
28:00 (米) 12月 月次財政収支 (11月 -1913億ドル)
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)



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