116円台到達後の調整安を消化して深夜から反騰
〇ドル円、米ADP民間雇用増加とFOMC議事録での金融引き締め姿勢強調で116円台回復
〇5日夜に調整入るがV字反騰、押し目形成から一段高を伺う展開に入りつつある印象
〇NYダウは前日比392.54ドル安と反落、高値からは500ドルを超える下落規模に
〇6日早朝のFOMC議事要旨、想定より速いペースでの利上げが妥当との認識で概ね一致
〇7日米労働省雇用統計発表、市場予想を大幅に上回れば連銀の引き締め姿勢一段と強まるか
〇116円台維持か割り込んでも回復する内は116.34超えから116円台後半へ向かう流れとみる
〇5日夜安値115.60割れからは新たな下落期入りで115円台序盤を試す流れとみる
【概況】
ドル円は1月4日夜高値で116.34円へ急伸して11月30日安値112.52円以降の高値を更新、2017年1月以来の116円台到達となったところから5日夜にかけては調整安に入り115.60円までいったん下げていた。しかし米ADP民間雇用が予想以上の増加となったことに加えて6日未明に公開されたFOMC議事録が早いペースでの金融引き締め姿勢を示したことで116円台を回復している。
12月16日早朝の前回FOMC声明発表直後に114.26円へ上昇してから材料消化として12月17日夜安値113.12円まで修正安が入ったが、その後は一本調子の上昇で12月22日には12月16日早朝高値を超え、12月29日には115円台到達、さらに米長期債利回り上昇による日米金利差を見て116円台に達した。1月5日夜にかけて0.74円の下落幅での調整だったが、V字反騰で1月4日夜高値に迫っており、押し目形成から一段高を伺う展開に入りつつある印象だ。
【NYダウ急反落するも米10年債利回り連騰】
1月5日のNYダウは前日比392.54ドル安と反落した。1月3日に246.76ドル高、4日も214.59ドル高と年明けから2連騰で終値ベースの史上最高値を更新、5日は取引時間中の史上最高値も36952.65ドルまで伸ばしていた。世界規模の新型コロナウイルス感染拡大が進む中でもリセッション入りはないとみて先高期待が優勢となっての連騰だったが、FOMC議事録が市場予想よりも引き締めを急ぐ姿勢を示していたことで急落となり、高値からは500ドルを超える下落規模となった。ナスダック総合指数は1月4日に210.08ポイント安と下げていたが米10年債利回りの連騰を嫌って5日は522.55ポイント安と下げが加速した。
米長期債利回りは総じて上昇、指標の10年債利回りは前日比0.06%上昇の1.71%となり11月24日の1.69%を超えて12月3日につけた1.33%以降の高値更新となった。株安なら債券買いで利回り低下圧力もかかるところだが、それよりもFOMCのタカ派姿勢により債券も売られた格好だ。30年債利回りは0.03%上昇の2.10%で12月3日以降の高値を更新、2年債利回りは0.07%上昇の0.83%で昨年来高値を更新した。
【FOMC議事録は市場認識よりもタカ派姿勢】
米連銀(FRB)は6日早朝に12月14-15日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公開した。インフレの進行と雇用改善が進んでいるとしてFOMCメンバーは従来の想定よりも速いペースでの利上げが妥当との認識で概ね一致していることが示された。
FOMCは12月に量的金融緩和策を2022年3月に終了するとし、2022年には3回の利上げを予想した。このため市場では3月の量的緩和策終了と同時に利上げを開始する可能性が高まったと受け止めていたが、議事要旨では量的緩和により拡大した資産について利上げ開始から「比較的直ぐに縮小し始めるのが適切」との主張がみられたため、引き締め姿勢が一段と強まった印象を示した。
変異株オミクロン株に関しては、「経済活動に下振れリスク、インフレには上振れリスクをもたらし続ける」との認識を示し、感染拡大の長期化がインフレ進行の背景であるサプライチェーンの混乱や人手不足問題を長引かせる状況が2022年も続くとした。また労働市場は非常に逼迫しているとし、「既に概ね雇用最大化の目標を満たしている」との主張もあった。
米連銀のパウエル議長は昨年11月22日にバイデン大統領から再任を伝えられた際にインフレ対策姿勢を鮮明とし、その後の議会証言では「インフレ進行については一時的との見解を撤回する」とした。徐々にタカ派へシフトしてきたが、感染拡大でもインフレが進行してその対策としての引き締め姿勢を一段と強めるとのシグナルを市場に発している印象だ。
1月5日夜に発表された米雇用サービス会社ADPによる12月の非農業部門民間就業者数は80万7000人増となり市場予想の40万人増及び11月の50.5万人増を上回った。1月7日夜には米労働省の雇用統計発表があるが、現時点での市場予想の40万人増を大幅に上回るようだと米連銀による引き締め姿勢が一段と強まる事も警戒される。
金融引き締め感が強まったことで米長期債利回りの上昇が一段と加速して株式市場が大幅反落したことはリスク回避的な円高要因になっても不思議ないところだが、5日夜の反応を見る限りは米長期債利回り上昇=ドル円の上昇という印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、1月4日夜高値でサイクルトップを付けて反落したものの5日夜安値からV字反騰しているため、5日夜安値を直近のサイクルボトムとして既に強気サイクル入りしていると思われる。高値形成期は7日夜から11日夜にかけての間と想定されるので、5日夜安値割れ回避のうちは一段高余地ありとし、5日夜安値割れからは底割れによる弱気サイクル入りとして10日夜から12日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では1月5日夜への下落時に遅行スパンが悪化したが、先行スパンからの転落を回避して反騰入りし、遅行スパンも再び好転しつつある。このため遅行スパン好転中の高値試し優先とし、弱気転換は先行スパンから転落するところからとし、その際は遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は1月5日夜に30ポイント台へ低下したところから50ポイント超えへ戻しているので50ポイント以上での推移中は上向きとして70ポイント台後半を目指すとみるが、50ポイント割れから続落の場合は弱気転換注意として40ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月5日夜安値115.60円を下値支持線、4日夜高値116.34円を上値抵抗線とする。
(2)116円台を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は116.34円超えから116円台後半(116.50円から117.00円)へ向かう流れとみる。116.75円以上は反落注意とするが、116円台を維持しての推移なら7日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)115.80円割れからは弱気転換注意とするが、5日夜安値割れ回避で116円台を回復する場合は上昇再開とし、5日夜安値割れからは新たな下落期に入るとみて115円台序盤(115.25円から115.00円)を試す流れとみる。また5日夜安値を割り込んだ後も115.80円以下での推移なら7日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
1/6(木)
10:45 (中) 12月 財新サービス業PMI (11月 52.1、予想 51.7)
16:00 (独) 11月 製造業新規受注 前月比 (10月 -6.9%、予想 2.3%)
16:00 (独) 11月 製造業新規受注 前年同月比 (10月 -1.0%、予想 -1.1%)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI改定値 (11月 53.2、予想 53.2)
19:00 (欧) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 5.4%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 21.9%、予想 22.9%)
22:00 (独) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.4%)
22:00 (独) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 5.2%、予想 5.1%)
22:30 (米) 11月 貿易収支 (10月 -671億ドル、予想 -771億ドル)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.8万件、予想 19.7万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 171.6万人、予想 168.8万人)
24:00 (米) 11月 製造業新規受注 前月比 (10月 1.0%、予想 1.5%)
24:00 (米) 12月 ISM非製造業景況指数 (前週 69.1、予想 66.9)
27:15 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
1/7(金)
08:30 (日) 12月 東京区部消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (11月 0.3%、予想 0.5%)
08:30 (日) 11月 全世帯消費支出 前年同月比 (10月 -0.6%、予想 1.5%)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 2.8%、予想 1.0%)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -0.6%、予想 -0.8%)
16:00 (独) 11月 貿易収支 (10月 128億ユーロ、予想 128億ユーロ)
16:00 (独) 11月 経常収支 (10月 154億ユーロ、予想 170億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 消費者信頼感確定値 (速報 -8.3)
19:00 (欧) 12月 経済信頼感 (11月 117.5、予想 116.2)
19:00 (欧) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.2%、予想 -0.5%)
19:00 (欧) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 1.4%、予想 5.6%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 4.9%、予想 4.7%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 2.6%、予想 2.5%)
22:30 (米) 12月 非農業部門就業者数 前月比 (11月 21.0万人、予想 40.0万人)
22:30 (米) 12月 失業率 (11月 4.2%、予想 4.1%)
22:30 (米) 12月 平均時給 前月比 (11月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 平均時給 前年同月比 (11月 4.8%、予想 4.2%)
24:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、パネル討論会
26:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、、パネル討論会
26:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、米経済学会年次会合参加
29:00 (米) 11月 消費者信用残高 前月比 (10月 169.0億ドル、予想 225.0億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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