景気減速懸念でリスクオフ気味に推移
〇先週のドル円、オミクロン、パウエル議長証言、金曜米国雇用統計が市場動かす要因に
〇株式市場は新たなワクチンや治療薬のニュースが出るまでは上値が重い展開となりやすい
〇来年3月にテーパリング終了、早ければ6月、本命は9月から利上げに動く見方がコンセンサス
〇最初の変異株発表から10日経過、余程の新たな好材料・悪材料が出なければ市場の反応は鈍い
〇今週は112.30レベルをサポートに、113.60レベルをレジスタンスとする流れと見る
今週の週間見通し
先週のドル円は、前週末に飛び出した変異株オミクロン株に対する懸念、パウエルFRB議長のタカ派議会証言、そして金曜米国雇用統計という3つが市場を動かす要因となっていました。
まずオミクロン株ですが、感染力が強そうであることは震源地南アフリカの感染者数、また各国に飛び火していることを警戒して主要国が素早く渡航制限等の対応をしたことでもたしかなところでしょう。問題は重症化リスクとワクチンの効果ですが、感染者数が多い南アフリカでは人口ピラミッド的に圧倒的に若い世代が多く、65歳以上の高齢者が5%強しかいないためあまり参考になりません。またワクチンについてはモデルナCEOが効果が低下する可能性に言及しているため、これまで以上に変異しているオミクロン株はワクチンを接種していてもブレークスルーの可能性は高まっていると予想されます。
まだ発表されてから10日しか経過していないため、わからないことも多く警戒を高めるしか対応策が無く、そのことが回復しつつあった各国の景気を再び減速させるリスクにつながっているということがベースにあり、株式市場は新たなワクチンや治療薬のニュースが出てくるまでは上値が重たい展開となりやすいでしょう。
そしてパウエル議長の議会証言ですが、これまで一時的としてきたインフレを一時的という形容詞を外し、12月のFOMCにおいてテーパリングの加速について議論することに言及しました。オミクロン株後の証言ですから、オミクロン株が米国金融政策に与える影響が少ないと見ていると言えます。おそらく12月15日FOMCでテーパリングの規模を1月から倍増させ国債200億ドル、MBS100億ドルとすることで、2022年3月にはテーパリングが終了という流れを考えていると見られます。そして注目の利上げについてはすぐということは無さそうですから、早ければ6月(可能性は低め)、本命は9月から利上げに動くという見方がコンセンサスとなってきています。
利上げに動くまでにインフレが継続し実質的収入が減少、そこに利上げの動きということで2022年後半の米国景気に対してどうなるのかという感じもしますが、それまでにオミクロン株に対する対応策も出ているであろうということも前提になっているように思えます。
金曜の雇用統計はNFPは予想よりも少なかったものの最近はブレやすい傾向がありますし、失業率自体は大幅に改善を続けていますので、これについては好材料と見てよいかと思います。
今週もオミクロン株の感染拡大の程度とそれに対して投資家マインドがどう動くのか次第という気がしますが、最初の変異株発表から10日が経過したことで余程の新たな好材料・悪材料が出て来ないと市場の反応は鈍くなってきていること、ただ各国の人の移動制限は景気回復に水を差すことから全体的にややリスクオフ気味の推移をしやすいというところだと思います。
テクニカルにはいつもの日足チャートを見てみましょう。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
チャートの形状としては変形ダブルトップ状の反転パターンとなっていて、9月安値と11月高値とのフィボナッチ・リトレースメントでは38.2%押しの113.06を達成し、半値押しの112.31(それぞれ赤のターゲット)をターゲットとしやすい状態です。週末終値112.84レベルから50銭程度の値幅ですから、今週の下値の目途としては同水準は妥当です。
いっぽうで上値については雇用統計後の高値が113.61レベルであり、同水準は上値を抑えられやすい水準となってきました。今週は112.30レベルをサポートに、113.60レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
12月6日(月)
16:00 ドイツ10月製造業新規受注
18:30 英国11月建設業PMI
**:** ユーロ圏財務相会合 ☆
12月7日(火)
09:01 英国11月小売売上高
09:30 豪州7〜9月期住宅価格
**:** 中国11月貿易収支
12:30 豪中銀政策金利発表 ☆
16:00 ドイツ10月鉱工業生産
16:45 フランス10月貿易収支
18:30 南ア7〜9月期GDP
19:00 ドイツ12月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏12月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP確報値 ☆
22:30 米国10月貿易収支
22:30 米国7〜9月期非農業部門労働生産性改定値
**:** 米ロ首脳会談 ☆
12月8日(水)
08:50 本邦7〜9月期GDP改定値 ☆
20:00 南ア10月小売売上高
24:00 カナダ中銀政策金利発表 ☆
24:30 週間原油在庫統計
30:45 NZ7〜9月期製造業売上高
12月9日(木)
07:00 豪中銀総裁講演
09:01 英国11月住宅価格
10:30 中国11月CPI・PPI ☆
16:00 ドイツ10月貿易収支
18:00 南ア7〜9月期経常収支
22:30 米国新規失業保険申請件数
24:00 米国10月卸売売上高
12月10日(金)
16:00 トルコ10月失業率
16:00 ドイツ11月CPI ☆
16:00 英国10月鉱工業生産、貿易収支
22:30 米国11月CPI ☆
24:00 米国12月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
**:** G7外相サミット ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月29日(月)
週末を挟んだことでオミクロン株に対して新たな展開は無いものの、金曜のように不安のみが先行するリスクオフはいったん収まってきました。東京市場では株価の動きとともに前場はリスクオフの巻き戻し、後場は改めてリスクオフといった動きとなり一時112.99レベルの安値をつけましたが、そこまで。その後は株価とともに底堅い推移を続け、NY市場昼前には113.96レベルの高値をつけた後にやや押して引けました。
11月30日(火)
東京昼過ぎまで落ち着いていたドル円は、モデルナのCEOがオミクロン株へのワクチン効果低下に言及したことで再び株安、円高の動きが強まりました。東京後場には112円台へと水準を下げ、NY前場には112.53レベルの安値をつけました。NY市場ではパウエル議長が議会証言でタカ派的な発言を行ったこと、また月末のロンドンフィキシングで対ユーロでのドル買いもあり、113.70レベルの戻り高値をつけましたが、引けにかけては113円近くへと水準を下げていました。
12月1日(水)
ドル円はNY市場まで若干買い戻しが出てはいたものの目立った動きとはなりませんでした。NY市場に入りパウエルFRB議長は改めてインフレへの対処、テーパリングの加速に言及したものの動きは鈍く、米国でもオミクロン株感染者が見つかったことに反応した株安に引っ張られて引けにかけて前日安値に近づく動きとなりました。
12月2日(木)
株価が比較的底堅いスタートを切ったことでドル円もリスクオフの巻き返しから円安が先行しました。しかし戻り売りも根強く113.33レベルまでで折り返し、NY朝方には112.71レベルまで下押し後に複数の地区連銀総裁によるタカ派発言で113円台に戻して引けたものの方向感ははっきりしないままでした。
12月3日(金)
金曜のドル円は東京市場では株価に歩調を揃えて早朝に若干押したもののそれ以降は株高とともにじり高の展開を辿り、113円割れの水準から113円台半ばへと上昇して米国の雇用統計待ちとなりました。NFPが21万人と予想を大きく下回ったことで売りが先行しましたが、失業率は4.2%と大幅改善したこともあり、一時113.61レベルの高値をつけました。しかし、オミクロン株への警戒感も強く週末を前に株式市場に売りが入るとドル円も112.56レベルまで下押しし、引けにかけては若干戻す動きとなりました。
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