ドル下値追い継続か、レンジ形成の可能性も
〇先週のドル円、上値重くドル続落で10/11以来安値112.54まで下落
〇ドル/円以外もおおむね円高傾向、ポンド/円や豪ドル/円はおよそ2ヵ月ぶり安値に
〇オミクロン株の感染拡大でWTO閣僚会議やEU大統領来日などが延期に
〇バイデン米大統領「この冬に米国の経済封鎖、都市封鎖は必要ない」と強気のコメント
〇今週は11月消費者物価指数や12月ミシガン大消費者信頼感指数などの米経済指標が発表見込み
〇今週のドル/円予想レンジは、111.80-114.10
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルが続落。ザラ場ベースでは一時112円半ばと、10月11日以来の安値を示現している。
前週末は、新たに「オミクロン」と命名された南アフリカで発見されたコロナ変異種が、世界に拡散していることが明らかに。少なくとも、欧州の英独伊そして豪州でも検出されたとメディアなどを通じて発表されている。
そうした状況下、ドル/円は113.40円レベルで寄り付いたものの、上値は重く、結局週間を通し一度も114円にはとどかず。一方で下値も堅く、大きく崩れることはなかったが、それでも11月30日には112.54円まで下落する局面が観測されていた。その後、週末に掛けては113円を中心としたレンジ取引をたどるなか、発表された米雇用統計が予想外に悪化したことを嫌気し、週間安値にほぼ面合わせ。週末NYもそのまま112.80円前後と週間のドル安値圏で取引を終え越週している。
なお、先週はドル/円以外、いわゆるクロス円もおおむね円高傾向。ポンド/円や豪ドル/円はおよそ2ヵ月ぶり安値を一時示現する局面も。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「オミクロン株」と「米金融政策」について。
前者は、南アフリカで発見された「オミクロン」がそののち英独伊など欧州各地へ拡大。さらに豪州やカナダ、日本、米国などでも感染者が発見されている。そうしたなか、英国が時計の針を巻き戻すような規制再強化、「マスク着用の義務化」を発表したことに続き、日本も岸田首相が「全世界からの外国人の入国停止措置、ビジネス目的や留学生も対象」と発表し、物議を醸していたようだ。なお、そんなオミクロン株の感染拡大を受け、「WTOが週内に実施予定の閣僚会議を延期」したほか、11月29日に予定されていた「EU大統領の来日」が延期されるなど、国際情勢にも大きな影響がでている。
対して後者は、11月30日と翌12月1日にパウエルFRB議長とイエレン米財務長官による議会証言が行われ、そのなかでパウエル氏は「数ヵ月早いテーパリング終了も検討」などと発言したほか「インフレに関する『一過性』の表現をやめるときが来た」とも述べ、タカ派に転換した可能性が取り沙汰されていた。一方、イエレン米財務長官は、新型コロナの感染拡大に警戒を示しつつも、「米国の回復は引き続き堅調だと確信している」とし、強気の姿勢を示していたようだ。また、それとは別に3日に期限を迎えた暫定予算案は、今回も何とかギリギリのタイミングで米上下院において可決・成立している。
<< 今週の見通し >>
ドル/円相場は、11月24日に115.52円の高値を示現したのち、右肩下がりの展開。先週は一時112.54円をつけるなど、わずか1週間程度で3円もの下落をたどっていた。単なる調整にとどまらず、ドル高・円安という大きな流れそのものが変化したのかもしれない。ちなみに、起点をどこから取るのかによるが、フィボナッチの観点9月安値109.11円を起点とした上げ幅の半値戻しは112.30-35円、61.8%戻しは111.55円となる。いま一段のドル下押しにも一応要注意。
一方、日米欧英などの金融政策が引き続き注目されている。米国については、前述したようにパウエルFRB議長の「タカ派発言」が支援要因ながら、週末発表された米雇用統計が期待外れの内容で、強気ムードが再び後退した感も否めないようだ。いずれにしても、今週も11月の消費者物価など発表される米経済指標には注意を払いたい。また、依然として不明の点が多い新型コロナ・オミクロン株に関するニュースなどにも要注意。バイデン米大統領は先週、「この冬に米国の経済封鎖、都市封鎖は必要ない」と強気のコメントを発していたが、その姿勢が貫けるのかにも注目だ。
テクニカルに見た場合、ドル/円は単なる調整局面ではなく、少なく見積もってもドルの高値トライは仕切り直し。場合によっては、ドル高基調転換の公算もありそうだ。
ただ、ドルの下値も直近だけで最低2度は112円半ばで下げ止まっており、なかなか強いサポートになっている感も。割り込めば、時間をかけつつ111円台突入なども予想されるが、下値トライが失敗に終われば113円を中心としたレンジ取引をしばらく続ける可能性もある。
材料的に見た場合、中長期的には、北京オリンピック開催への懸念の声も取り沙汰されはじめている「中国情勢」、オミクロン株についての詳細情報もそろそろ明らかになるとみられる「新型コロナ問題」、「日米欧英などの金融政策」、「原油供給問題」−−が注視されている。
そうしたなか今週は、まず11月の消費者物価指数や12月のミシガン大消費者信頼感指数速報といった米経済指標が発表される見込み。先で指摘したように先週末の米雇用統計が奮わなかっただけに、同様に悪化した内容ならドル売り要因となりかねないだろう。また米財務省による10年債の入札状況などにも注意しておきたい。
そんな今週のドル/円予想レンジは、111.80-114.10円。ドル高・円安については、先週末高値の113.61円が最初の抵抗。上抜けた場合には移動平均の21日線も近い114円前後などがターゲットとなりそうだ。
対するドル安・円高方向は、先週安値である112.56円の攻防に注目。底堅いイメージながら、割り込めば時間をかけつつ112円割れも考える必要ありか。フィボナッチでは112.30-35円や111.55円が下値メドに。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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