米国で新変異株感染確認、リスク回避の株安債券高でドル円は下落基調
〇ドル円、米国初のオミクロン株感染者確認報道で2日早朝に112.64まで失速
〇リスク資産の株を売り安全資産の債券を買う動きで米10年債利回り前日比0.04%低下
〇NYダウ2日間で千ドル超える下げ幅、11/8史上最高値からは2500ドルを超える下落規模
〇米長期債利回り低下による日米金利差面からの円高圧力によりドル円には大きな圧迫感
〇米ADP発表の11月非農業部門民間就業者数は53万4000人増、市場予想52.5万人増を上回る
〇11/30夜安値112.52割れからは112.00前後への下落を想定
〇113.30から113.60にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる
【概況】
ドル円は11月25日未明高値115.51円を付けて年初来高値を更新していたが、11月26日午前から感染力の高い新変異種オミクロン株発生で金融市場全般がリスク回避に動く中で26日夜に113.03円へ急落した。29日午後安値で112.97円を付けたところから29日深夜に113.95円まで戻したものの、30日午後はモデルナ社CEOが従来ワクチンの有効性が低いと発言したことをきっかけに一段安となり30日深夜には112.52円まで安値を切り下げた。
12月1日未明と1日午後の反発ではそれぞれ113.69円と113.62円までで戻り高値は切り下がりにとどまり、1日夜は米国での初のオミクロン株感染者確認報道からNYダウが大幅続落、株売り債券買いで米長期債利回りが低下したためにドル円は2日早朝に112.64円まで失速して30日深夜安値112.52円割れへの余裕が乏しくなっている。
【米国でオミクロン感染者確認、世界26か国地域に拡大】
米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は12月1日に西部カリフォルニア州で新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染者を確認したと発表した。米国内で初めて。感染者はワクチン2回接種済だがブースター接種はしておらず、11月22日に南アから帰国、29日に陽性確認、自主隔離中で今のところ軽症という。米国は11月29日から南ア等8か国からの入国を禁止、渡航時に提出を求める陰性証明の期間を3日以内から1日以内に短縮した。
12月2日早朝時点、日本を含め世界の26の国と地域で感染が確認されているが、欧州では独仏英、イタリア、スペイン、ポルトガルやスエーデン等13か国と1地域、アジアは香港、韓国、日本、南米ではブラジル、北米ではカナダ、中東ではイスラエルとサウジ等へ広がっている。イスラエルでは3回目のブースター接種者が感染しておりワクチンが効かない印象を強めている。今後は重症化や死亡率が問題になってくると思われる。
【リスク回避型でダウは2日間で千ドル強の下落、米長期債利回りは低下】
新変異種感染拡大に対する先行き不透明感からリスク資産の株を売り安全資産の債券を買う動きとなり、米10年債利回りは前日比0.04%低下の1.41%へ下げたが、11月24日に1.69%へ上昇して10月21日の1.70%に迫ったところでダブルトップ型となり11月9日の1.41%を割り込んで一時は1.40%まで低下している。2年債利回りは前日の米連銀パウエル議長による上院議会証言で「インフレは一時的との見方を撤回、テーパリング終了を速める」との姿勢表明で0.44%から0.57%へ上昇し、1日も0.61%まで続伸していたもののリスク回避感が強まる中で0.56%まで低下した。
パウエル米連銀議長は前日の上院議会証言に続いて下院の議会証言を行ったが、前日同様にテーパリングの早期終了姿勢を強調してインフレも持続的としたが、市場としては米連銀による利上げ時期の前倒し感よりも当面のオミクロン・ショックによる債券買い・利回り低下の動きが勝った印象だ。
NYダウは前日比461.68ドル安と下落、前日の652.22ドル安からの続落で2日間で千ドルを超える下げ幅となったが、11月8日に史上最高値で3万6565.73ドルを付けたところから12月1日安値3万4006.98ドルまで2500ドルを超える下落規模となっており、昨年3月のコロナショック暴落以降の上昇過程では最大級の下落規模となっている。ナスダック総合指数も前日の245.14ポイント安から283.64ドル安の続落となった。
株安によるリスク回避感、米長期債利回り低下による日米金利差面からの円高圧力によりドル円には大きな圧迫感となっている。
【12月1日の米経済指標は良好】
米民間雇用サービス会社ADPが発表した11月の全米雇用報告における非農業部門民間就業者数は53万4000人増で市場予想の52.5万人増を上回った。10月分は速報の57.1万人増から57.0万人増へ若干下方修正、9月分は52.3万人増から52.6万人増に上方修正されたが、3か月連続で50万人増を上回った。雇用は着実に回復しているがADPによればまだコロナショック前の水準に対しては500万人少ない雇用状況という。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した11月の米製造業景況指数は61.1で10月から0.3ポイント上昇して市場予想と一致した。
米商務省による10月建設支出は前月比0.2%増で市場予想の0.4%増を下回ったが、9月の0.5%減から改善した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月25日早朝高値を直近のサイクルトップとして急落し、26日深夜と29日午後の両安値をダブルボトムとしていったん戻したものの30日夜に一段安したため、12月1日午前時点では11月29日夜高値を起点とした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は12月1日夜から3日深夜、長引く場合は週明けの12月6日にかけての間と想定した。
12月1日の反発時では戻り高値が切り下がり2日早朝へ失速しているため引き続きボトム形成中とし、強気転換は1日未明高値113.69円超えからとする。
60分足の一目均衡表では12月1日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパン突破に失敗して転落している。このため遅行スパンの悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。先行スパンを上抜くところからはいったん戻しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイント台へ戻したところから失速しているためまだ一段安警戒とみる。強気転換には60ポイントを超えてその後も50ポイント以上での推移を続ける必要があると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月30日夜安値112.52円を下値支持線、30日深夜高値113.69円を上値抵抗線とする。
(2)113.25円を下回るうちは一段安警戒とし、112.52円割れからは112.00円前後への下落を想定する。112円以下は反発注意とするが下げ足が速まる場合は111円台中盤(111.70円から111.30円)へ下値目途を引き下げる。113円以下での推移なら3日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)113.30円から113.60円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。113.69円超えからは反騰入りとみて114円台序盤(114.00円から114.25円)への上昇を想定し、113.69円を超えた後も113.50円以上での推移なら3日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
12/2(木)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 39.2、予想 40.3)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 2.7%、予想 3.5%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 16.0%、予想 19.0%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 7.4%、予想 7.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.9万件、予想 24.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 204.9万人、予想 200.0万人)
22:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会司会
25:00 (米) クオールズ米連銀理事、講演
25:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、インタビュー
25:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
12/3(金)
06:30 (豪) 11月 AiG建設業景況指数 (10月 57.6)
07:00 (豪) 11月 サービス業PMI (10月 55.0)
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 53.8、予想 51.0)
17:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、講演
17:55 (独) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 53.4)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 56.6)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 58.6)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.3%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 2.5%、予想 1.4%)
22:30 (米) 11月 非農業部門就業者数 前月比 (10月 53.1万人、予想 53.0万人)
22:30 (米) 11月 失業率 (10月 4.6%、予想 4.5%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前月比 (10月 0.4%、予想 0.4%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前年同月比 (10月 4.9%、予想 5.0%)
23:15 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 57.0)
24:00 (米) 11月 ISM非製造業景況指数 (10月 66.7、予想 65.0)
24:00 (米) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 0.2%、予想 0.5%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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