トルコリラ円見通し 市場介入、財務相辞任に荒れる、史上最安値更新(21/12/2)

トルコリラ円の12月1日は9.13円から8.15円の取引レンジ、2日早朝の終値は8.49円で前日終値の8.39円からは0.10円の円安リラ高となった。

トルコリラ円見通し 市場介入、財務相辞任に荒れる、史上最安値更新(21/12/2)

市場介入、財務相辞任に荒れる、史上最安値更新

〇トルコリラ円、夕刻安値8.15をつけ前日に続きさらに史上最安値更新
〇その後トルコ中銀の市場介入で急伸するも一時的、9円台維持できず反落に転じる
〇対ドルでは大統領利下げ正当性強調、財務相辞任で当日高安1.50リラ幅の乱調な展開
〇トルコ中銀は通貨防衛のため為替介入したと発表、直接介入の公表は2014年1月以来
〇大統領の政策に批判的とされるエルバン財務相が1日に辞任、後任は大統領支持のネバティ副大臣
〇8.60以下での推移中は下向き、8.15割れからは8.00、7.80等を順次試す流れ
〇8.60から8.90にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる

【概況】

トルコリラ円の12月1日は9.13円から8.15円の取引レンジ、2日早朝の終値は8.49円で前日終値の8.39円からは0.10円の円安リラ高となった。
夕刻安値で8.15円を付けて前日に8.21円まで更新していた史上最安値をさらに更新したが、その直後にトルコ中銀の市場介入がありこの日の高値9.13円へ急伸した。しかし介入効果は一時的なものにとどまり9円台を維持できずに反落に転じた。さらにエルバン財務相辞任報道も重なって2日早朝へ下落している。

【対ドルでも最安値を更新】

ドル/トルコリラの12月1日は13.87リラから12.37リラの取引レンジ、2日早朝の終値は13.26リラで前日終値の13.47リラからは0.21リラのドル安リラ高となった。
12月1日はトルコ中銀がリラ防衛によるリラ買い介入を実施したと報じられたもののその後にエルドアン大統領が利下げの正当性を改めて強調、さらにエルバン財務相辞任が報じられたことで乱高下に見舞われた。当日の高安で1.50リラの幅で乱調な展開となり、夕刻に13.87リラを付けて史上最安値を更新してから12.37リラへ1.50リラのドル安リラ高となり、その後の反落で13.46リラまで1.09リラのドル高リラ安で反騰幅の3分の2を解消した。
市場としてはトルコ中銀によるリラ買い介入への警戒感も持ちつつも、先安感と無理筋な利下げ継続姿勢への批判的なリラ売り攻勢を継続しやすい環境と思われる。

【トルコ中銀が市場介入、財務相辞任と混乱続く】

トルコ中銀は1日に通貨防衛のための為替介入をしたと発表。市場介入からリラはいったん急伸、対ドルでは8%高の上昇となったが長続きせずに失速している。
トルコ中銀は「不健全な為替相場が形成されているため外貨売却によって市場に直接介入した」と声明で発表した。介入規模は10億ドル前後とみられている。中銀が市場介入を公言するのは珍しく、2018年から2019年にかけて国営銀行を使って大規模な(1280億ドル規模と言われる)間接的な市場介入を行ったことがあるが、直接介入の公表は2014年1月以来という。
エルドアン大統領は中銀による市場介入公表の後、「新たな政策方針に後戻りはない」「選挙前には金利が大幅に下がり為替レートも大幅に改善されるだろう」と国営通信社TRTに述べており、今後も利下げ政策を継続する強固な意志があることを示した。2023年に大統領選挙があるため、そこへ向けた利下げの継続姿勢と受け止められる。

利下げによるリラ安によって輸出にはプラスとなる可能性があるものの、トルコリラは1997年から大暴落を繰り返しており、リラ安だけでは輸出強国になれるはずもなく、貿易収支は構造的な赤字で観光収入が埋め合わせする状況が続いてきた。高インフレ下でリラ安、かつ新型コロナウイルスの感染拡大状況という閉塞感の中で大統領選挙での再選を勝ち取るような劇的な景気浮揚は難しいと思われる。エルドアン大統領自身が政策失敗で自身の首を絞めてゆく流れになるのではないかと懸念される。
12月1日にはエルバン財務相が辞任した。同氏は今年3月に解任されたアーバル中銀前総裁と同時に財務相に就任しており、大統領の政策には批判的とされる。後任にはネバティ副大臣が就任したが、ネバティ氏は「現在の市場環境で政策金利をインフレ率より高く維持する必要はない」などと述べておりエルドアン大統領の政策を支持している。暫くは混乱が続きそうだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月18日のトルコ中銀による利下げ決定からの下落が続いていたため、11月26日午前時点からは11月24日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして26日夜から30日夜にかけての間への下落を想定してきた。12月1日午前時点では11月23日夜安値から3日目となる11月26日深夜安値を前回のサイクルボトムとして既に底割れから新たな弱気サイクル入りしているとしたが、市場介入報道から急伸して再び反落しているため12月1日夕安値を直近のサイクルボトム、1日夜の急騰時高値を同サイクルトップとして新たな弱気サイクル入りしていると考える。ボトム形成期は6日午後から8日夕にかけての間と想定する。

60分足の一目均衡表では12月1日夕からの急伸で先行スパンの上限に達したところから反落して先行スパンから転落している。このため先行スパンを下回るうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンを上抜くところからは上昇再開の可能性ありとして1日夜高値試しとするが、高値更新へ進めないうちは再び先行スパンから転落しやすい状況とみる。

60分足の相対力指数は1日夜の反騰時に50ポイントを超えたがその後は割り込んでいるため、50ポイント以下での推移中は30ポイント割れを目指す流れとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.15円を下値支持線、8.50円を上値抵抗線とする。
(2)8.60円以下での推移中は下向きとし、8.15円割れからは8.00円、7.80円等を順次試す流れとみる。8.60円以下での推移なら12月3日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.60円から8.90円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

12月02日
 20:30 週次 外貨準備高・グロス 11/26時点 (11/19時点 879.2億ドル)
12月03日
 16:00 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 2.39%、予想 3.0%)
 16:00 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 19.89%、予想 20.70%)
 16:00 11月 消費者物価コア指数 前月比 (10月 1.8%)
 16:00 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 16.8%)
 16:00 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 5.24%)
 16:00 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 46.31%)

12月16日
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)

注:ポイント要約は編集部

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