引き続きリスクオフに警戒、11月安値を視野に
〇先週のドル円、水曜に115.52レベルと2017年3月高値と並ぶ水準までドル高・円安進む
〇木曜米国休場の中、南アでのオミクロン株発見で金融市場は金曜早朝からリスクオフの嵐に
〇週明けの戻りが一時的で今後改めてリスクオフの動きになる可能性高い
〇12月FOMCでテーパリング加速決定思惑後退との見方で米10年債先週ピークから0.2%以上下げる
〇今週は11月安値112.70レベルをサポートに、上値は114.00レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通し
先週のドル円は、週前半は115円台に乗せ水曜には115.52レベルと2017年3月高値(115.51レベル)と並ぶ水準にまでドル高・円安が進みましたが、木曜に米国が休場、金曜も短縮取引と参加者が減少している市場で飛び出したのが、南アでの新変異株が発見されたニュースでした。後にオミクロン株と命名された新変異株は感染力が強い上にワクチンが効かない可能性が高いと言われたことで、金曜の金融市場は早朝からリスクオフの嵐となりました。
先週の為替市場の印象はこの金曜の2円以上もの円高の動きで全て上書きされるほどのインパクトの強さでしたが、週末を挟んで多少落ち着きは取り戻したものの、現在のワクチンが効かない恐れが高く、ジョンソン英首相も週末に急速な感染拡大とブレイクスルー(ワクチン2回接種後の感染)の可能性を指摘していることから、おそらくは懸念されていることは事実に近いと考えられます。欧州を中心に渡航制限や規制再開の動きが出て来ているため、せっかく世界的に行動制限が解除されつつある中で、完全に水を差した格好となってしまいました。
どちらかというと週明けの戻りが一時的で今後改めてリスクオフの動きになる可能性の方が高いように思えますし、12月FOMCでのテーパリング加速決定思惑も後退するのではないかとの見方から米金利(10年債利回り)も先週のピークから0.2%以上も下げることとなりました。
今週は月初で米国雇用統計を中心に経済指標も多いですし、イエレン財務長官、パウエルFRB議長の議会証言などFRB関係者の発言も多いのですが、オミクロン株の登場で不透明な状況となっていますので、週初の段階ではテクニカルを主にして考えた方が良さそうです。ベースはドル円が2017年3月高値と並んだことで達成感も出て、現状はどこまで押すのかという流れです。
金曜に臨時でテクニカルのコラムを上げましたが、その後想定以上の円高の動きとなりましたので改めて考えてみます。日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
11月安値と高値とのフィボナッチ・リトレースメントでは既に78.6%(61.8%の平方根)押しまで下げましたので、より長い範囲で考えることとなりますが、9月安値と11月高値とのフィボナッチ・リトレースメントを見ると金曜の安値は38.2%押しの113.06(赤のターゲット)と重なっていたことが確認できます。いったん良いところであると同時に、オミクロン株の感染拡大と各国の対応次第では急速に景気減速懸念も広がり、11月安値112.72レベルは考えておく必要があるでしょう。
今週は上下ともに荒っぽい動きとなることも考え、11月安値と重なる112.70レベルをサポートに、上値は114.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
11月29日(月)
16:00 トルコ10月貿易収支
17:30 黒田日銀総裁講演
19:00 ユーロ圏11月消費者信頼感 ☆
22:00 ドイツ11月CPI速報値 ☆
24:00 米国10月住宅販売保留件数
29:00 NY連銀総裁講演 ☆
29:05 パウエルFRB議長講演 ☆
11月30日(火)
08:30 本邦10月失業率・有効求人倍率
09:30 豪州10月住宅建設許可件数
10:00 中国11月製造業PMI ☆
16:00 トルコ7〜9月期GDP
16:45 フランス10月PPI
16:45 フランス11月CPI速報値 ☆
16:45 フランス7〜9月期GDP改定値
17:55 ドイツ11月失業率
18:00 フランス中銀総裁講演 ☆
19:00 ユーロ圏11月CPI速報値 ☆
21:00 南ア10月貿易収支
23:00 米国9月住宅価格
23:00 米国9月ケースシラー住宅価格 ☆
23:45 米国11月シカゴ購買部協会景況指数
24:00 パウエルFRB議長、イエレン財務長官上院議会証言 ☆
24:00 米国11月消費者信頼感 ☆
30:45 NZ10月住宅建設許可件数
12月1日(水)
09:30 豪州7〜9月期GDP ☆
10:45 中国11月MarkIt製造業PMI ☆
16:00 ドイツ10月小売売上高
16:00 トルコ11月製造業PMI
17:50 フランス11月製造業PMI
17:55 ドイツ11月製造業PMI
18:00 ユーロ圏11月製造業PMI
18:30 英国11月製造業PMI
22:15 米国11月ADP全国雇用者数 ☆
23:00 英中銀総裁講演 ☆
23:45 米国11月製造業PMI
24:00 米国11月ISM製造業景況指数
24:00 パウエルFRB議長、イエレン財務長官下院議会証言 ☆
24:00 米国10月建設支出
24:30 週間原油在庫統計
28:00 ベージュブック ☆
**:** OPEC閣僚級会合
12月2日(木)
09:30 豪州10月貿易収支
19:00 ユーロ圏10月PPI ☆
19:00 ユーロ圏10月失業率
21:30 米国11月チャレンジャー人員削減予定数
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 アトランタ連銀総裁講演 ☆
05:30 サンフランシスコ連銀総裁、リッチモンド連銀総裁講演 ☆
**:** OPECプラス閣僚級会合 ☆
12月3日(金)
10:45 中国11月MarkItサービス業PMI ☆
16:00 トルコ11月CPI ☆
16:45 フランス10月鉱工業生産
17:50 フランス11月サービス業PMI
17:55 ドイツ11月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏11月サービス業PMI
18:30 英国11月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏10月小売売上高
22:30 米国11月雇用統計 ☆
23:15 (セントルイス連銀総裁講演)
23:45 米国11月サービス業PMI
24:00 米国11月ISM非製造業景況指数 ☆
24:00 米国10月製造業新規受注
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月22日(月)
ドル円はNY市場までは114.10前後の狭い値幅でもみあいを続けていましたが、NY市場に入りパウエルFRB議長再指名のヘッドラインを好感して株式市場は買いで反応し、為替市場は米金利が上昇していたことも重なってドル買いの動きとなりました。その後もNYの引けまでドル円はじり高の展開となりました。
11月23日(火)
東京市場が休場となった23日もドル買いが継続し、アジア時間に115円の大台乗せとなりました。欧州市場序盤に115.15レベルの高値をつけていたところに中国が米国駆逐艦の台湾海峡通過に対して警告を行ったことで急落、114.49レベルの安値をつけました。その後は米金利が上昇している動きにも支えられ改めてドル買いの動きとなり、115.19レベルまで買われて高値引けとなりました。
11月24日(水)
ドル円は東京市場では115円台で実需のドル売りも出て、じり安の流れを辿りましたが海外市場に入り改めてドル買いの流れとなりました。NY市場では東京高値を上抜け、NY後場に発表されたFOMC議事録ではテーパリングの加速と早期利上げを複数のメンバーが主張していたことが示され、一時115.52レベルと2017年3月高値と並びました。
11月25日(木)
NY市場が休場、翌日も取引所は短縮取引と米国勢が連休モードとなっていたこともあって、ドル円は高値圏で鈍い動きのままで値幅も限定的でした。
11月26日(金)
金曜の金融市場は大荒れの1日となりました。前日木曜のNY引け直後に南アフリカで新型コロナ変異株(後にオミクロン株と命名)が感染拡大していること、詳細はわからないもののワクチンが効かない可能性があることなどのニュースが広がり、株式市場は急落、為替市場はドル安、原油市場も大幅安の1日となりました。NYダウは一時1000ドルを超える今年最大の下げ幅となり、ドル円は早朝の115.36レベルから113.05レベルへと2円以上もの下げとなり、リスクオフによる円買いの動きはクロス円でも円高の動きとなりました。
ディスクレーマー
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