単なる調整でなくドル高基調終了の可能性も
〇先週のドル円、4年8か月ぶり高値115.52まで続伸後週末にかけ急反落
〇「オミクロン株」で為替市場は流れ一変、週末NYも113.40前後と週間安値圏で越週
〇2円を超えるドル安・円高の進行、ドル高基調そのものに変調をきたした可能性も
〇今週は11月ISM製造業景況指数や雇用統計などの米経済指標が発表見込み
〇今週のドル/円予想レンジは、112.20-114.70
〇ドル安円高方向は先週安値113.05が最初のサポート、割り込めば112円台突入不可避
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は結局安値引け。ザラ場ベースでは115円半ばと、4年8ヵ月ぶり高値を一時示現したものの、週末にかけては急反落へと転じている。
前週末は、米国に続き英国も中国で来年2月に行われる「北京オリンピックの外交ボイコット検討」などと報じられ話題に。また、高騰する原油価格への対応として、米国からの要請もあり日本などが戦略備蓄を取り崩す考えを示したことも思惑を呼んでいたようだ。
そうした状況下、ドル/円は113.95-00円で寄り付いたのち、当初はドル買い優勢。週明け早々に米FRB議長人事がパウエル氏続投で決着し、「政策継続」との見方が好感されていた。年初来高値114.97円を超えられずに一旦上げ渋るも、上抜けると逆にストップロスを巻き込み115.52円まで大きく続伸。2017年3月以来のドル高値圏を記録したものの、週末にかけて感染力が強いなどとされる「新型コロナ変異株」の話が急浮上すると、為替市場は流れが一変。ドルは上げ幅のすべてを吐き出す格好で113円前半まで急落し、週末NYも113.40円前後と週間安値圏で取引を終え越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「新型コロナ」と「トルコリラ安」について。
前者は、感染者再拡大が目に付くイタリアやフランス、オランダ、ポルトガル、スロバキアといった欧州諸国がそれぞれ「ワクチン未接種者への規制を厳格化」や「ロックダウン」などの制限措置を発表。また、アジアでは韓国の新規感染者が過去最高を再び更新するなか、「南アフリカで新たな変異株が検出された」との報道がなされ、リスク回避志向にポジション調整の動きが重なり、為替市場は円全面高の原動力となっていた。なお、前述した変異株についてWHOは「オミクロン型」と命名するとともに、最高警戒レベルに分類したことを明らかにしている。週明け以降も、その動きには要注意。
対して後者は、週明け22日にトルコ大統領が「競争力のある為替レートは雇用や投資を拡大する」などと発言したことで、当局の通貨安容認観測に繋がると対円やドルで売りが殺到。対ドルでは、その日一日だけで15%もリラ安が進行している。その後、同国中銀が「足もとの為替相場はファンダメンタルズと掛け離れている」とし、口先介入に動くも効果は限定的。対円では10円を割り込み1ケタ台に突入しただけでなく、週末にかけさらに続落すると8.5円前後へと大きく値を崩す局面も。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円相場は、週の半ば24日に115.52円の高値を示現。さらなる上値トライを期待する向きも少なくないなか、「コロナ変異種確認」というイレギュラーな材料を受け、週末に掛けては流れが一変した。過去数ヵ月の動きをみると、目先高値から1円ないし1.5円程度の下げで目先底入れを達成し再び上方向をトライしているが、今回は早くも2円を超えるドル安・円高の進行だ。つまり、単なる調整の動きにとどまらず、ドル高基調そのものに変調をきたした可能性も否定できない。今週ドルのさらなる下値追いにも一応要注意。
一方、日米欧英などの金融政策が引き続き注目されるなか、今週は11月のISM製造業景況指数や同雇用統計といった重要な米経済指標が発表される見込みで、まずはその内容が注視されている。しかし、日米などの戦略石油備蓄放出後も高値推移の続く「原油供給問題」が依然として気になるうえ、先週末に掛けて市場の波乱要因となっていた「新型コロナ変異株」の問題により注意か。とくに後者は、まだわからないことだらけのなか「感染力が従来型より強い」や「ワクチンが効きにくい」といった一部報道も観測されるなど、続報の内容如何では今週も相場の波乱要因となりかねないかもしれない。
テクニカルに見た場合、ドル/円は順調に底堅めをしながらの上昇で、「リスクはドル高」と目されていた見通しに冷や水が浴びせられた。前述したように、単なる調整局面ではなくドル高基調転換の可能性にも、気を付ける必要がありそうだ。
ちなみに、9日安値112.73円を起点とした上昇幅のフィボナッチで考えた場合には、61.8%や76.4%戻しもすでにザラ場ベースで下回っており、次なるターゲットは100%戻し。つまり、およそ3週間ぶりとなる113円割れも否定できない。
材料的に見た場合、中長期的には、米議員団の訪台などもあり再び台湾をめぐる警戒感も高まっていた「中国情勢」、今週のOPEC閣僚級会合にも大いに注意を払いたい「原油供給問題」「新型コロナ問題」、「日米欧英などの金融政策」−−が注視されている。
そうしたなか今週は、まず11月のISM製造業景況指数や同雇用統計といった重要な米経済指標が発表される見込み。それら指標内容が市場予想を上回った場合、2022年米利上げ確率の上昇に繋がりドル買い材料になるとの見方も取り沙汰されていた。また、米財務長官とFRB議長の議会証言をはじめ、要人の発言機会も多く、こちらも注意しておきたい。
そんな今週のドル/円予想レンジは、112.20-114.70円。ドル高・円安については、目先的には114円前後が再び抵抗として意識されそうで、上抜けても114円後半までの上昇があれば精々か。115円はやや遠くなったイメージだ。
対するドル安・円高方向は、先週安値である113.05円が最初のサポート。ただ割り込めば当然112円台突入は不可避となりそうで、その場合のターゲットは9日安値の112.73円となる。それも下回ると、さらなるドル安進行も。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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