トルコリラ円見通し 大暴落一服の戻りも続かず再びリラ売り攻勢始まる(21/11/29)

トルコリラ円の11月26日は9.67円から8.90円の取引レンジ、27日早朝の終値は9.11円で前日終値の9.65円から0.54円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し 大暴落一服の戻りも続かず再びリラ売り攻勢始まる(21/11/29)

トルコリラ円見通し 大暴落一服の戻りも続かず再びリラ売り攻勢始まる

〇トルコリラ円、11/26は9.67から8.90の取引レンジ、利下げ後暴落一服で戻すも続かず
〇ドル/トルコリラ、11/26は12.64から11.87の取引レンジ、買い戻し続かずリラ安再開
〇エルドアン政権の利下げ継続姿勢、コロナウイルス新変異株によるリスク回避感でトルコリラ売り対象に
〇現状リラ防衛的な動きないが、今後市場介入や取引規制の動きに警戒する必要も
〇9.0以下での推移中は下向きとし、8.47割れからは8.20から8.00を目指すとみる
〇9.67を超える場合は10円手前を試すとみるが9.80から10円手前は反落警戒圏とみる

【概況】

トルコリラ円の11月26日は9.67円から8.90円の取引レンジ、27日早朝の終値は9.11円で前日終値の9.65円から0.54円の円高リラ安となった。
11月18日のトルコ中銀による3会合連続の利下げを挟んで暴落商状に陥り11月23日には史上最安値を8.47円まで切り下げた。暴落一服で11月24日に9.95円までいったん戻したものの戻りは続かず、米国市場が感謝祭休場だった11月25日を9.60円を挟んでほぼ横ばいの推移となっていた。
11月26日は早朝から南アの新変異株発生報道をきっかけに金融市場全般がリスク回避に動いてドル円が急落、豪ドル等が売られてトルコリラも対ドルで売られたためトルコリラ円は円高とリラ安の両面から圧されて失速した。

【対ドルでもリラ安再開の動き】

ドル/トルコリラの11月26日は12.64リラから11.87リラの取引レンジ、27日早朝の終値は12.42リラで前日終値の11.90リラからは0.52リラのドル高リラ安となった。
トルコ中銀による11月18日の利下げとその後のエルドアン大統領による利下げ継続姿勢から11月23日に13.49リラへ史上最安値を更新し、暴落一服で24日夜に11.51リラへいったん戻したもののリラの買い戻しは続かずに26日は再び急落商状となったが、11月24日への戻り幅の半値押しとなる12.50リラを割り込み始めている。

【エルドアン政権による強硬な利下げ継続姿勢】

エルドアン大統領は11月26日、「金利は低下する。国民や農民を金利で踏みにじるようなことはさせない」として利下げ継続姿勢を強調した。また「生産、雇用、経常黒字を重視した新たな経済政策にコミットしている」「国際通貨基金(IMF)や世界銀行から支援を受けるという考えに反対する」と述べた。
ネバティ財務副大臣も11月26日に「2013年から低金利政策を実施しようとするたびに我々は強い反対に直面した。今回は全力で実行に取り組む」と述べて利下げ継続姿勢を強調した。また「相場操縦を図る攻撃によってリラは史上最安値に陥ったものの通貨安による長期的な打撃は残らない」「現時点ではインフレ率を下回る政策金利に関する問題は何もない」旨も述べた。
リラ暴落によりエルドアン政権への批判は高まり、強権的な国政の中では珍しい数十人から数百人規模の反政府デモも発生して多数の逮捕者も出ている。連立与党内や野党からはトルコ中銀の独立性に対する批判も相次いでいるが、どうやらエルドアン大統領と側近による利下げ強行路線はまだ続きそうだ。

【南アで発生した新型の変異株「オミクロン」の影響】

世界保健機関(WHO)は11月26日、南ア等で確認された新型コロナウイルスの新たな変異株を「オミクロン株」と命名、WHOが「注目すべき変異株(VOI)」とするカテゴリーのうち感染力が高い等の条件を満たして特に警戒を要するものとする「懸念される変異株(VOC)」に指定した。11月11日にボツワナで発見されて南アに拡大し、既に香港やイスラエル、ベルギーで感染者が確認され、ドイツ、イタリア等へも広がってきているが、このうちベルギーの感染者はエジプトからトルコ経由の帰国者だった。経由地のトルコではまだこの変異株による感染者は確認されていないが、トルコは11月26日夜からボツワナ、南アフリカ、モザンビーク、ナミビア、ジンバブエからの入国を禁止した。

11月26日はこの変異株に対する市場の不安が一挙に膨らみ株式市場はアジア、欧米で大幅下落、リスク回避が強まる中で豪ドル、南アランド、メキシコペソ等が売られ、円やユーロ、ポンドは買われた。原油相場は急落、ビットコインも暴落している。高インフレ環境における利下げ強行で新たな通貨危機的な暴落に見舞われたトルコリラもリスク回避的な売りの対象となっている。
新たな変異株オミクロンの影響がどの程度になるのかまだ不透明であり、トルコにとっては国内感染者が急増する場合は自国経済への直接的な打撃となり、欧州を中心に経済活動規制が強まれば観光や輸出への打撃となる。一方で原油暴落が続けば資源エネルギー価格高騰による高インフレが落ち着く可能性もあるが市中価格が下がるまでには時間もかかる。また、物流停滞が世界的な物価上昇の背景だったことを踏まえれば渡航制限や活動規制が物資不足を招くことで高インフレから抜け出せない可能性もあるところだ。

【11月26日の日足陰線は11月23日に次ぐ大きさ】

【11月26日の日足陰線は11月23日に次ぐ大きさ】

11月26日は前日比0.54円の円高リラ安だったが、11月からのリラ暴落における最大の陰線は11月23日で前日比は1.10円の円高リラ安だったが、26日はそれに次ぐ大きさとなっている。11月23日の大陰線の後、24日、25日は23日の大陰線のレンジ内にはらまれた陽線にとどまっていたところから再び大陰線で失速し始めているため、史上最安値更新への動きが再開している印象だ。
新変異株による金融市場全般のリスク回避感、投機通貨への売り圧力、トルコ自身の利下げ継続姿勢による内外投資家のリラ放れというようにトルコリラを取り巻く状況は悪いままだ。今のところは大規模なリラ防衛的な市場介入は見られないようだが、今後は市場介入や取引規制の動き等も警戒しておく必要もあると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.47円を下値支持線、9.67円を上値抵抗線とする。
(2)9.40円から9.67円手前のゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。9.0円以下での推移中は下向きとし、8.47円割れからは8円台序盤(8.20円から8.00円)を目指すとみる。8.00円前後は買い戻しが入る可能性もあるが、下げ足が速まる場合は1日で0.50円、あるは1.0円規模での下落となる可能性もあるため、8円割れをスルーで通過する場合は7円台前半へ下値目途を引き下げる。
(3)9.67円を超える場合は10円手前を試すとみるが9.80円から10円手前は反落警戒圏とみる。

【当面の主な予定】

11月29日
 16:00 10月 貿易収支 (9月 -25.5億ドル)
 16:00 11月 経済信頼感指数 (10月 101.4)
11月30日
 16:00 7-9月期 GDP前期比 (4-6月 0.9%)
 16:00 7-9月期 GDP前年同期比 (4-6月 21.7%、予想 7.5%)
12月01日
 16:00 11月 イスタンブール製造業PMI (10月 51.2)
12月02日
 20:00 週次 外貨準備高・グロス 11/26時点 (11/19時点 879.2億ドル)
12月03日
 16:00 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 2.39%、予想 3.0%)
 16:00 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 19.89%、予想 20.70%)
 16:00 11月 消費者物価コア指数 前月比 (10月 1.8%)
 16:00 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 16.8%)
 16:00 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 5.24%)
 16:00 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 46.31%)

12月16日
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)


注:ポイント要約は編集部

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