ドル円見通し 年初来最大の日足大陰線、化け線か勢力線かの見極め(週報11月第5週)

ドル円は11月26日早朝高値115.37円から27日未明安値113.03円まで当日の高安として2.34円の円高ドル安となる急落商状となり、安値圏に留まったまま113.38円で取引を終了

ドル円見通し 年初来最大の日足大陰線、化け線か勢力線かの見極め(週報11月第5週)

ドル円見通し 年初来最大の日足大陰線、化け線か勢力線かの見極め

〇先週末のドル円、11/26早朝115.37から11/27未明安値113.03まで2.34円の急落
〇南アの新型変異株への脅威と欧州の感染再拡大を悲観してのリスク回避の動きが要因
〇ユーロ、円はドルの売り戻しで買われるも、他の通貨は対ドルでの下落目立つ
〇米長期金利大幅低下、株、原油は大幅安
〇新種のオミクロン株、既存ワクチンの有効性確認は2週間以内、結果次第で市場の不安心理増す場合も
〇11/26の急落による日足第陰線が下落開始の兆候(勢力線)か、一時的狼狽(化け線)かの見定め必要
〇113.03割れから112.70試し、割り込むと112円前後、111円台後半を試す
〇113.85からは反騰入りの可能性、114円台前半を目指す、114.20から高値を切り上げる場合上昇再開か

【概況】

ドル円は11月26日早朝高値115.37円から27日未明安値113.03円まで当日の高安として2.34円の円高ドル安となる急落商状となり、安値圏に留まったまま113.38円で取引を終了、日足の前日比では1.93円の円高ドル安となった。11月22日にパウエル米連銀議長の再任が決定したことにより米連銀がインフレ抑制への姿勢を強めるとの見方から米長期債利回りが上昇してドル全面高となる中、ドル円は11月24日(25日未明)高値で115.51円を付けて1月6日安値102.57円以降の高値を更新、2016年12月15日に118.65円の戻り天井を付けた直後の2017年1月19日以来の高値水準に達し、25日の米感謝祭による米国市場休場中もややジリ安ながらも高値圏を維持して一段高を伺う位置取りだった。ところが26日は南アの新型変異株への脅威と欧州の感染再拡大による相次ぐ規制強化を悲観して早朝から金融市場全般がリスク回避へと動いてドル円は急落した。

【リスク回避全開、ドルの強弱はまちまち】

主要国でワクチン普及率が高まりウィズ・コロナ政策による経済活動の再開が進んできた矢先に新たな脅威となる変異株が発生し、欧州で感染再拡大が深刻化し始めたことも重なり、市場は昨年のパンデミック発生時の悲観心理を再現するようにリスク回避に走った。
日本市場は日経平均の暴落的な下げとドル円の急落、クロス円の大幅下落で開始、アジア株も全面安、さらに欧米株式市場も全面安となった。株安とドル円の下落は27日早朝まで続いた。

豪ドルやNZドル、南アランドやメキシコペソが急落する中、ユーロドルは26日午前の当初から下げ渋り、午後からは急伸して深夜にかけても大幅に続伸した。独DAX指数や仏CAC指数が4%を超える暴落だったものの、ユーロ圏投資家によるユーロクロスの換金売り=ユーロの買い戻しと米長期債利回り急低下によるドル売りユーロ買いがユーロ高をもたらしたのは、日経平均の暴落と円高が並走したのと同様の現象と思われる。
ポンドドルは夕刻まで大幅下落していたがその後はユーロ高に引っ張られて日中の下落分を解消する反騰となった。一方で豪ドル、NZドルは大幅下落のまま終了している。主要通貨の強弱は明暗を分けたが、リスク回避感がもう一段階上がればユーロ等も売られやすくなると懸念される。

米10年債利回りは前日比で0.16%の大幅低下で1.48%、30年債利回りも0.14%低下の1.83%、2年債利回りも0.13%低下の0.51%といずれも大幅な低下となった。
NYダウは一時1000ドルを超える下げ幅となり前日比905.04ドル安で終了、今年最大の下げとなった。ナスダック総合指数も353.57ポイント安と大幅下落した。
商品市場ではユーロ高と共にゴールドが上昇したが、株安と同調してNY原油期近は前日比10.24ドル安(13%安)の68.15ドルで終了、パンデミック当初以来の大暴落となった。

【オミクロンの脅威】

世界保健機関(WHO)は11月26日に南アなどで確認された新型コロナウイルスの新たな変異株「B.1.1.529」を「オミクロン株」と命名、WHOが「注目すべき変異株(VOI)」とするカテゴリーのうち感染力が高い等の条件を満たして特に警戒を要するものとする「懸念される変異株(VOC)」に指定した。
新変異株は11月11日にボツワナで発見され南アに拡大し、26日時点で既に香港やイスラエル、ベルギーでも感染者が確認されているとされたが27日時点では英国、ドイツ、イタリア、チェコでも確認された。世界主要国は南ア及びその周辺からの渡航制限を開始している。
このオミクロン株は従来のワクチン開発の基になってきたウイルスとは大幅に異なるスパイク蛋白質を持ち「デルタ株の2倍」程度の変異を起こしているという。

独ビオンテック社は11月26日にオミクロン株について米ファイザーと共同開発したワクチンが有効であるか判断するためのデータが2週間以内に得られるとの見通しを示し、新たな変異株がワクチンの再設計を必要とする「エスケープ変異株」であるかどうかについて検証するとしている。また「エスケープ変異株」である場合には6週間以内にワクチンを再設計するとした。
既に主要国が在庫や供給の目途のついている従来型のワクチンが効かないとなれば、ブースター接種も再設計ワクチンの到着を待たないとならなくなるが、エスケープ変異株ではない、従来のワクチンは有効となればブースター接種を急ぐ混乱は発生するとしても市場も過度の悲観を控える動きへと流れを変える可能性がある。しかしその結論が出るには数週を要するということになれば、オミクロン株の世界各国への感染拡大報道が相次いで市場の不安心理も一段と増すことにもなりかねない。

VIX恐怖指数は26日に一時28.99まで上昇して前日比54%高の28.62で終了した。まだ9月上昇時の水準でありパンデミック初期に85.47まで暴騰した時と比較すれば低位にある。当面は市場が落ち着くか不安がさらに増すのかを見定めつつ、乱高下に注意する展開期と言えそうだ。

【日足の大陰線から続落か、踏み止まるか、当面のポイント】

【日足の大陰線から続落か、踏み止まるか、当面のポイント】

上昇基調の中で高値更新を続けた直後の急落として前日比で凡そ2円規模の下落となったのはパンデミック発生からの暴落初期における2020年2月28日に1.98円の円高ドル安以来だがその時の下げ幅を超えており、暴落末期の底打ちとなった2020年3月9日の前日比3.13円の円高ドル安以来の規模となった。
1年近い上昇で4年ぶり高値を更新した後に突然急落した日足大陰線であり、オミクロン株がさらに深刻さを増して市場全般がリスク回避感を強めてゆくなら昨年2月末からのパンデミック初期に見られた暴落規模へと発展しかねない不安感を抱かせる動きだった。しかし、大上昇途中に市場が一時的に狼狽して売りの連鎖反応から急落しても早々に気持ちを切り替えて急反騰するケースもあり、11月26日の日足大陰線が下落開始を示す「勢力線」なのか、一時的な狼狽を反映した「化け線」なのかを見定める必要がある。

「化け線」なら一両日中に切り返し、大陰線の半値を解消してくるが、「勢力線」なら大陰線の下半分以下に留まって下げ渋りからひと呼吸おいて一段安へ向かうか、ないしは続落陰線で下落感を強める展開へ進むケースが多い。上昇途中の「化け線」としては、日銀大規模金融緩和による円安誘導時代の2013年2月25日に当日高値から安値まで4円近い暴落の大陰線が発生したところから一段高した前例がある。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、112.70円を下値支持線、11月25日早朝高値からの下げ幅に対する3分の1戻しの113.85円を上値抵抗線とする。
(2)113.50円から113.85円手前にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。11月26日深夜安値113.03円割れからは11月9日安値112.70円試しとし、112.70円割れからは112円前後試し、さらに先行きで111円台後半試しへ向かう流れとみる。また直近の安値から0.75円以上の上昇がみられないうちは戻り売りからさらに一段安へ進みやすい流れとみる。
(3)113.85円超えからは短期的な狼狽売り一巡による反騰入りの可能性ありとみて114円台前半(114.00円から114.50円)を目指すとみる。11月26日の大陰線中心値となる114.20円前後では戻り売りも出やすいとみるが、114.20円以上で高値切り上げに入る場合は上昇再開感が強まるとみる。(了)<28日13:30執筆>

【当面の主な予定】

11/29(月)
イラン核合意再建に向けた協議再開の予定
08:50 (日) 10月 小売業販売額 前年同月比 (9月 -0.6%、予想 1.1%)
09:30 (豪) 7-9月期 企業総利益 前期比 (4-6月 7.1%、予想 3.0%)
17:30 (日) 黒田日銀総裁、ユーロプラス主催会合で講演
18:30 (英) 10月 消費者信用残高 (9月 2.0億ポンド、予想 4.0億ポンド)
18:30 (英) 10月 マネーサプライM4 前月比 (9月 0.6%)
18:30 (英) 10月 マネーサプライM4 前年同月比 (9月 7.0%)
19:00 (欧) 11月 消費者信頼感・確定値 (速報 -6.8、予想 -6.8)
19:00 (欧) 11月 経済信頼感 (10月 118.6、予想 117.5)
22:00 (独) 11月 消費者物価指数・速報値 前月比 (10月 0.5%、予想 -0.4%)
22:00 (独) 11月 消費者物価指数・速報値 前年同月比 (9月 4.5%、予想 5.0%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 -2.3%、予想 1.0%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 -7.2%)
29:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
29:05 (米) パウエル米連銀議長、イベントで開会挨拶

11/30(火)
07:05 (米) ボウマン米連銀理事、講演
08:30 (日) 10月 失業率 (9月 2.8%、予想 2.8%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前月比 (9月 -5.4%、予想 1.9%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (9月 -2.3%、予想 -4.4%)
09:30 (豪) 7-9月期 経常収支 (4-6月 205億豪ドル、予想 293億豪ドル)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -4.3%、予想 -2.0%)
09:30 (豪) 10月 民間部門信用残  前月比 (9月 5.3%)
09:30 (豪) 10月 民間部門信用残  前年同月比 (9月 0.6%)
10:00 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 49.2、予想 49.6、予想 49.8)
11:00 (豪) デベル豪中銀副総裁、パネル討論会参加
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 4.3%、予想 5.8%)
17:55 (独) 11月 失業者数 前月比 (10月 -3.90万人、予想 -2.50万人)
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.4%、予想 5.4%)

19:00 (欧) 11月 消費者物価指数・速報値 (10月 4.1%、予想 4.5%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数・速報値 (10月 2.0%、予想 2.3%)
22:00 (英) マン英中銀委員、講演
23:00 (米) 9月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (8月 1.0%、予想 1.2%)
23:00 (米) 9月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (8月 19.7%、予想 19.4%)
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景景況指数 (10月 68.4、予想 67.0)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (10月 113.8、予想 110.4)
24:00 (米) パウエル米連銀議長とイエレン財務長官、上院銀行委員会で証言
24:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、イベント挨拶
27:00 (米) クラリダ米連銀副議長、メスター・クリーブランド連銀総裁、討論参加

12/1(水)
06:30 (豪) 11月 AiG製造業景況指数 (10月 50.4)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -1.9%)
07:00 (豪) 11月 製造業PMI (10月 58.5)
08:50 (日) 7-9月期 ソフトウェア含む全産業設備投資額 前年同期比 (4-6月 5.3%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 0.7%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 9.6%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 50.6、予想 50.5)
17:55 (独) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 57.6)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 58.6)
18:30 (英) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 58.2)

22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間就業者 前月比 (10月 57.1万人、予想 51.5万人)
23:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 59.1)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 60.8、予想 61.0)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 -0.5%、予想 0.5%)
24:00 (米) パウエル米連銀議長とイエレン財務長官、下院金融委員会で証言
24:30 (米) 米エネルギー省週間石油在庫統計
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

12/2(木)
08:50 (日) 11月 マネタリーベース 前年同月比 (10月 9.9%)
09:30 (豪) 10月 持家住宅ローン件数 (9月 1.4%)
09:30 (豪) 10月 貿易収支 (9月 122.43億豪ドル)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 39.2)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 2.7%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 16.0%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 7.4%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.9万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 204.9万人)
22:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会の司会
25:00 (米) クオールズ米連銀理事、講演
25:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、インタビュー応答
25:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演

12/3(金)
06:30 (豪) 11月 AiG建設業景況指数 (10月 57.6)
07:00 (豪) 11月 サービス業PMI (10月 55.0)
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 53.8、予想 51.0)
17:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、講演
17:55 (独) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 53.4)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 56.6)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 58.6)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.3%)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 2.5%)

22:30 (米) 11月 非農業部門就業者数 前月比 (10月 53.1万人、予想 50.0万人)
22:30 (米) 11月 失業率 (10月 4.6%、予想 4.5%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前月比 (10月 0.4%、予想 0.4%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前年同月比 (10月 4.9%、予想 5.0%)
23:15 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 57.0)
24:00 (米) 11月 ISM非製造業景況指数 (10月 66.7、予想 65.0)
24:00 (米) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 0.2%、予想 0.5%)


注:ポイント要約は編集部

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